Deep Purple - The Book Of Taliesyn (1968)
Deep Purple『The Book Of Taliesyn』について
Deep Purpleの『The Book Of Taliesyn』は、1968年に発表された2作目のスタジオ・アルバムである。Deep Purpleは1968年にイングランドで結成されたロック・バンドで、のちにハードロックやヘヴィメタルの重要な流れを作った存在として語られているが、この時期の音楽はまだその完成形よりも、サイケデリック・ロックやプログレッシブ・ロックの要素が前に出ている。『The Book Of Taliesyn』は、その過渡期をはっきり示す一枚で、バンドの初期像を知るうえで外せない作品だ。
オリジナルはアメリカとカナダで1968年10月にリリースされ、イギリス盤は翌1969年まで待つことになる。つまり、同じアルバムでも地域によって登場時期がずれている。今回の日本盤は1979年リリースで、Warner Bros. RecordsのP-6502Wという品番が付いている。オリジナルから10年以上あとに出た再登場盤であり、70年代末の日本市場で改めて流通したものと見てよい。
時代背景とバンドの位置づけ
この時期のDeep Purpleは、いわゆる「Mark I」編成で活動していた。Rod Evansのヴォーカル、Ritchie Blackmoreのギター、Jon Lordのオルガン、Nick Simperのベース、Ian Paiceのドラムスという布陣である。後年のIan Gillan時代に比べると、音の質感はかなり違う。ギターとオルガンのせめぎ合いはすでに見え始めているが、まだハードロック一辺倒ではなく、当時の英国ロックらしい実験性や長尺構成が前面にある。
同時代の文脈でいうと、同じく英国のアートロック、サイケデリック・ロックの流れと近い場所にある。Deep Purpleという名前から連想される分厚いリフ中心のサウンドよりも、演奏の展開や曲間のつながりを重視した作りが目立つ。のちの『In Rock』以降と並べると、バンドの変化がかなりわかりやすい作品でもある。
アルバムの聴きどころ
1曲目の「Listen, Learn, Read On」は、アルバムの入口として機能している。オルガンの存在感が強く、ロック・バンドというよりも、鍵盤を軸にしたグループとしての個性がまず立ち上がる。Ritchie Blackmoreのギターは、のちの鋭いリフワークほど前に出ないが、音の隙間を埋めるように入り、曲の輪郭を少しずつ固めていく。Deep Purpleの初期を聴くとき、この「ギターが支配しきらない」感じが重要だとわかる。
タイトル曲「The Book Of Taliesyn」も、この時代の特徴がよく出ている。流れを区切りながら進む構成で、演奏の切り替わりが多い。派手な一撃で押すというより、パートごとの雰囲気を積み上げるタイプの曲で、Jon Lordの鍵盤が曲全体の軸になっている。後年のDeep Purpleが持つ直線的な迫力とは別物だが、バンドの出発点としては非常にわかりやすい。
注目曲「Kentucky Woman」
注目曲として外せないのが「Kentucky Woman」だ。Neil Diamondの楽曲を取り上げたカヴァーで、Deep Purpleの初期レパートリーを語るうえで代表的な一曲である。原曲の持つポップな骨格を残しつつ、バンド側のアレンジで厚みを増しているのがポイントで、単なるコピーではなく、当時のDeep Purpleらしい色を加えた仕上がりになっている。
この曲はシングルでも知られ、アルバムの中でも比較的入り口になりやすい。ロック・バンドとしての演奏力を見せながら、まだ初期の柔らかさも残しているため、Mark I期の空気をつかむにはちょうどいい。のちのハードな方向へ進む前段階として聴くと、バンドの振れ幅が見えやすい。
注目曲「Shield」ほか長尺パート
終盤の展開では、組曲的な流れやインストゥルメンタル感覚が強く出る。Deep Purple初期のアルバムは、1曲ごとの独立性よりも、作品全体でひとつの流れを作る印象があるが、『The Book Of Taliesyn』もその傾向がはっきりしている。歌ものとしての分かりやすさと、演奏を聴かせる部分が同居している点が面白い。
このあたりの作りは、後のハードロック期のDeep Purpleしか知らないと意外に感じるかもしれない。だが、Jon Lordを中心とした鍵盤の使い方や、楽曲の組み立て方を見ると、すでにバンドの核は見えている。ギターとオルガンのぶつかり合いが、後年の名演へつながっていく前史として聴ける一枚である。
1979年日本盤としての見え方
1979年の日本盤は、オリジナル期の空気をそのまま閉じ込めた一次発売ではなく、後年に改めて流通した盤である。そのため、発売当時の英国ロックの最新作というより、Deep Purpleの初期を振り返るための再聴用アイテムという性格が強い。Warner Bros.系の国内盤として出ている点も含め、70年代末のリスナーに向けて再提示された作品と考えられる。
『The Book Of Taliesyn』は、Deep Purpleがまだ完成前の段階にあったことをよく示すアルバムだ。のちの代表作のような強烈なリフ中心ではないが、鍵盤を含むアンサンブル、長めの構成、カヴァー曲の扱いなど、初期ならではの要素がまとまっている。バンドの歴史をたどるうえで、そしてMark I期の音像を押さえるうえで、重要な位置にある作品である。
トラックリスト
- A1 Listen, Learn, Read On
- A2 Wring That Neck
- A3 Kentucky Woman
- A4 Exposition - We Can Work It Out
- B1 Shield
- B2 Anthem
- B3 River Deep, Mountain High