Shocking Blue - Classics (1986)
Shocking Blue『Classics』について
オランダのロック・グループ、Shocking Blueの名をあらためてまとめて聴くうえで、この『Classics』は分かりやすい入口になる編集盤だ。1986年にUSの21 Recordsから出たアナログ盤で、グループの代表曲を中心に、1960年代末から1970年代前半にかけての活動を振り返る内容として位置づけられる。Shocking Blueといえば、やはり「Venus」で知られるバンドであり、その一発屋という見方だけでは収まりきらない、メロディと演奏の癖を持ったグループでもある。この盤は、その輪郭を手早くつかめる一枚という印象が強い。
Shocking Blueは1967年、元The Motionsのギタリスト、Robbie van Leeuwenを中心に結成された。初期はFred de Wildeがヴォーカルを務め、その後Mariska Veresが加入してから一気にバンドの顔つきが変わる。1969年から1970年にかけて「Venus」が世界的にヒットし、続いていくつかのシングルもチャートに入った。オランダ発のバンドとして、当時の英米のロック/ポップの流れに接続しながら、独自の歌い口とリフ感を持ち込んだ存在として見ておくと、この編集盤の意味も見えやすい。
レーベルと1986年盤の位置づけ
この盤は21 RecordsからのUSリリース。21 RecordsはPolyGramの製造・流通の傘の下にあり、国際展開を意識したレーベルとして動いていた。つまり、単なるローカル再発ではなく、過去のヒット資産をあらためて流通させるための企画盤という性格がある。Shocking Blue本体は1975年に解散しているので、1986年のこの盤は現役作ではなく、バンドの代表曲を整理して聴ける再編集の場として見るのが自然だろう。
1980年代半ばにこうした60年代末〜70年代初頭のヒットをまとめ直す動きは珍しくないが、『Classics』はその中でも、グループの核であるMariska Veresの声と、Robbie van Leeuwenの作曲感覚を前面に出すタイプの編集盤として受け取れる。派手な装丁や時代を強く感じさせる音作りよりも、曲そのものの強さで聴かせる盤という印象だ。
「Venus」――このバンドを決定づけた代表曲
Shocking Blueを語るうえで「Venus」は外せない。硬いギターリフ、はっきりしたビート、そしてMariska Veresの低めで芯のあるヴォーカルが、曲の輪郭をくっきりさせている。歌のメロディは覚えやすいが、軽く流れてしまう感じは少ない。サビに向かう流れも、単純なポップソングの枠に収まりきらず、ロックバンドとしての押しの強さが残る。
この曲は後年も何度も参照され、カバーや再演を通じて広く知られることになるが、オリジナルの持つ質感はやはり独特だ。特にヴォーカルの置き方が印象的で、同時代のガールズ・ポップやサイケデリックな流れと比べても、もっと乾いた手触りがある。『Classics』で聴くと、その一曲だけが突出しているというより、バンド全体の作り方の延長線上にあることが分かる。
「Never Marry a Railroad Man」ほか、ヒット曲の並び
この種の編集盤では、どうしても「Venus」だけが目立ちやすいが、Shocking Blueの魅力はその周辺のシングルにもある。「Never Marry a Railroad Man」は、タイトルからしてストレートな物語性を持ちながら、演奏は意外に引き締まっている。リズムの運びとコーラスの配置がきれいで、メロディを押し出すだけでなく、曲の中に少し引っかかりを作っている。
また、「Mighty Joe」のような曲では、バンドが単なるヒット・マシンではなく、ギターのリフと歌の掛け合いで曲を組み立てるロック・グループであることが見えやすい。どの曲も構成は比較的わかりやすいが、音の置き方に無駄が少なく、ヴォーカルが前に出る場面と演奏が空気を押す場面の切り替えがはっきりしている。このあたりは、同時代の欧州ポップ・ロックの中でも、ABBAのような洗練よりは、もっとバンド然とした手触りが残る。
アルバム全体の聴こえ方
『Classics』を通して聴くと、Shocking Blueは「Venus」の印象だけで片づけるには、曲の幅があるバンドだと分かる。Mariska Veresの声は、華やかさよりも輪郭の明確さが先に立つタイプで、そこにRobbie van Leeuwenのリフ中心の作りが重なることで、曲ごとの個性が立ち上がる。録音年代の違いもあるため、音の質感にはばらつきがあるものの、それがかえってバンドの活動期を横断していることを感じさせる。
オランダのロック史で見ると、Shocking Blueは国際的な成功を手にした早い例のひとつであり、同じく欧州から英米市場へ届いたポップ・ロック勢と並べて語られることが多い。だが、このバンドの中心はあくまで曲の骨格と歌の存在感にある。この『Classics』は、その要点を短くまとめた編集盤として、Shocking Blueという名前の輪郭を確認するための一枚になっている。
トラックリスト
- A1 Venus 3:02
- A2 Hot Sand 2:34
- A3 Deamon Lover 6:01
- A4 Never Release The One You Love 2:56
- A5 Blossom Lady 3:26
- A6 Shocking You 3:00
- A7 Long Lonesome Road 2:47
- B1 Never Marry A Railroad Man 3:00
- B2 Mighty Joe 3:10
- B3 Inkpot 2:38
- B4 Time Slips Away 2:20
- B5 Out Of Sight Out Of Mind 2:40
- B6 Send Me A Postcard 2:40
- B7 Hello Darkness 2:52