Vinyl Record Reviews
Prefab Sproutは、イングランド・カウンティ・ダラム州ウィットン・ギルバート出身のポップ・バンドだ。1980年代に注目を集め、アルバム7作が全英アルバムチャートの30位以内に入っている。ジャンルはRock、Popにまたがり、スタイルとしてはPop Rock、Indie Rockに分類されることが多い。
バンドの中心にいるのはPaddy McAloonだ。ほかにNeil Conti、Wendy Smith、Martin McAloon、Stephen Dolderがメンバーとして知られている。Prefab Sproutの作品を語るうえでは、McAloonの作曲とバンド全体のアンサンブルを分けて考えにくい。
1980年代にブレイクしたバンドとして知られていて、その時期に代表作を重ねていく。なかでも1985年の2作目『Steve McQueen』は重要なアルバムとしてよく挙げられる。この作品ではThomas Dolbyが初めて本格的なプロデュースを担当し、McAloonが送った40〜50曲ものデモから楽曲を選び、細かい編集を重ねて完成させたという。
制作では、コード進行を分解して別の音色を重ねたり、ピアノの運指を一音ずつ確認して組み直したりと、かなり細かい作業が行われた。限られた予算の中でありながら、結果としては厚みのある響きに仕上がっている。McAloonのソングライティングと、Dolbyのテクノロジーに通じた感覚がうまく噛み合った作品として扱われることが多い。
Prefab Sproutの核にあるのは、Paddy McAloonの作曲だ。メロディの組み立て方や言葉の置き方に独特の感覚があり、ポップ・ソングの枠に収まりながらも、細部の作り込みが目立つ。派手な演出よりも、曲そのものの構造やフレーズの配置で聴かせるタイプのバンドだ。
『Steve McQueen』では、そうした作曲の精度に加えて、音の重ね方や編曲の整理が細かく行われている。ポップ・ロックの曲でありながら、楽器の鳴り方や音色の選び方にかなり意識が向けられているのがわかる。
Prefab Sproutの最大のヒット曲として知られるのが、1988年の「The King of Rock 'n' Roll」だ。全英7位を記録し、11週チャートインした。この曲には少し変わった背景がある。
McAloonはもともと「rock 'n' roll」という言葉をタイトルに使う曲が好きではなく、その反骨心から半ば茶化すような気持ちでこの曲を書いたという。サビの意味を持たない歌詞については、後年「音節の規則を持たない俳句のようなもの」と語っている。最初から代表曲を狙ったというより、バンドらしくない軽い曲として出した面があったようだ。
ただ、その結果としてこの曲が最大のヒットになったことについては、McAloon自身も複雑な思いを抱いていたらしい。後にはこの曲を「ノベルティ・ソング」と表現している。
Prefab Sproutを初めて聴くなら、『Steve McQueen』と「The King of Rock 'n' Roll」あたりから入ると、バンドの作曲の精度とポップ・ソングとしてのわかりやすさの両方を追いやすい。アルバム単位で聴くと、楽曲の並びや音の作り込みも見えやすい。