A Bolha - Um Passo A Frente (1973)
A Bolha 1973

A Bolha - Um Passo A Frente (1973)

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A Bolha『Um Passo À Frente』解説

ブラジルのロック・バンド、A Bolhaが1973年に発表した1stアルバム『Um Passo À Frente』は、同国の70年代ロックを語るうえで外せない作品のひとつだ。バンドは1960年代にThe Bubbles名義で活動を始め、70年代にA Bolhaへ改名。そこからシングル「Sem Nada」を経て、このアルバムへつながっていく。ハードロックの骨格を持ちながら、曲によってはプログレッシブ・ロック的な展開も見せる内容で、当時のブラジル産ロックの中でも少し違う場所に立っている作品として扱われることが多い。

この盤は2010年にポルトガルのGroovie Recordsから再発されたものだ。Groovie Recordsは、レア盤の再発や編集盤で知られるリスボン拠点のレーベルで、こうした再発の仕事を通じて埋もれた作品を掘り起こしてきた。オリジナルの1973年盤と比べると、2010年盤は作品の再評価を前提にした流通形態で、当時のブラジル・ロックを今の耳で聴き直す入口として機能している。

バンドの位置づけ

A Bolhaは、単なるローカルなロック・バンドというより、ブラジルのロック史の流れの中で徐々に存在感を強めていったグループだ。1971年にはシングル「Sem Nada」を出し、同年のFestival Internacional da Cançãoで最優秀バンドに選ばれたことも、その後の活動を後押ししたとされる。『Um Passo À Frente』は、そうした流れの中で録音・発表された初のLPであり、バンドにとってひとつの到達点になっている。

参加メンバーには Renato Ladeira、Pedro Lima、Arnaldo Brandão、Gustavo Schroeter らが名を連ね、さらに Luiz Eça がピアノ・ソロで加わっている。外部ミュージシャンの起用が作品の要所に入っている点も、このアルバムの特徴として見ておきたいところだ。制作面では Fabian Ross がレーベルへの働きかけに関わったとされ、リリース実現の背景にも人の動きがある。

サウンドの中身

実際に耳を傾けると、まず前面にあるのはギターを軸にしたロックの推進力だ。リフで押す場面が多く、演奏はかなり直線的に進む。いっぽうで、すべてを勢いだけで通すわけではなく、曲の途中で展開を変えたり、鍵盤を使って空気を切り替えたりする場面もある。ハードロックの手触りを持ちながら、構成の組み方にプログレ寄りの意識が見える、という受け取り方がしやすい内容だ。

ブラジルの同時代ロックという文脈では、Rita LeeやOs Mutantesのようなサイケデリック路線、あるいはCasa das MáquinasやMade in Brazilのような硬質なロックと並べて語られることがある。ただしA Bolhaは、そのどちらにも完全には寄り切らない。ロックンロールの感覚を残しつつ、演奏の組み立てで少し先へ進もうとする姿勢があり、そこがタイトル通り「一歩前へ」という印象につながっている。

注目曲「Sem Nada」

このアルバムを語るなら、まず「Sem Nada」に触れたい。1971年のシングルとして先に世に出た曲で、A Bolhaの代表曲として扱われることが多い。シングル時点でバンドの評価を押し上げた曲でもあり、アルバム全体の入口としても重要だ。演奏は引き締まっていて、余計な装飾よりもバンドの輪郭を見せることに力がある。歌とリフの結びつきがはっきりしていて、後年の再発盤でこの曲から入ると、A Bolhaの方向性がつかみやすい。

この曲には、当時のブラジル・ロックの中で「英米のロックをそのままなぞるのではなく、自分たちのバンドとして鳴らす」感覚が見える。派手なヒット曲というより、バンドの芯を示す曲として残っている印象だ。アルバム内でも、A Bolhaの持つ推進力と、少しだけ屈折した構成感の両方を確認できる一曲になっている。

注目曲「Um Passo À Frente」

タイトル曲「Um Passo À Frente」は、この作品の性格をそのまま示すような存在だ。曲名の通り、バンドが次の段階へ進もうとする意識が見える。ハードな演奏を土台にしながら、単純な反復に終わらず、途中で景色を変える作りがあるため、アルバム全体の中でも少し長く耳に残る。

この曲では、ロックの押し出しだけでなく、展開の組み方に耳が向く。リズム隊の踏み込み、ギターのフレーズ、キーボードの入り方が、それぞれ役割を持って進んでいく感じだ。A Bolhaが単なるハードロック・バンドではなく、70年代前半のブラジルでプログレッシブな要素を取り入れたグループとして見られる理由も、このあたりにある。

再発盤としての意味

2010年のGroovie Records盤は、オリジナル盤をリアルタイムで追えなかった世代にとって、A Bolhaを聴くための入り口になった。レーベルの性格上、単なる復刻ではなく、埋もれた作品を今の文脈へ接続する役割が強い。『Um Passo À Frente』も、その流れの中で改めて評価されている一枚だ。商業的な大ヒットとして残った作品ではないが、ブラジルのロック史を細かく見ていくと、初期の重要作として名前が挙がる理由はわかりやすい。

A Bolhaはこの後も活動を続け、メンバーの入れ替わりもあったが、『Um Passo À Frente』はその出発点に近い位置にあるアルバムとして、今も参照されることがある。70年代ブラジル・ロックの厚みを知るうえで、ひとつの基準になる作品だといえる。

トラックリスト

  1. A1 Um Passo A Frente
  2. A2 Razão De Existir
  3. A3 Bye My Friend
  4. A4 Epitafio
  5. A5 Sem Nada (Bonus Track, Single Top Tape 1971)
  6. B1 Tempos Constantes
  7. B2 A Esfera
  8. B3 Nesse Rock Forever
  9. B4 18:30 -Parte 1/Os Memadecons Cantavam Em Coro Chôôôô (Bonus Track, Single 1971)

動画

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