Warm Dust - Warm Dust (1972)
Warm Dust『Warm Dust』(1972)
Warm Dustの『Warm Dust』は、1972年に西ドイツのBASFから出たアルバムで、グループの名前をそのまま題した作品だ。シェフィールドで結成されたブリティッシュ・プログレッシブ・ロック・バンド、Warm Dustの初期を知るうえで重要な一枚であり、ジャズ、ブルース、クラシックの要素を混ぜ込んだバンドの性格が、そのまま前面に出ている。メンバーにはPaul Carrackをはじめ、Keith Bailey、Alan King、Terry “Tex” Comer、Les Walker、Alan Solomon、John Surguy、Dave Pepper、John Bedson、Dransfield Walkerらが名を連ねる。バンドは1970年に結成され、1972年までの短い活動期間に3枚のアルバムを残して解散したため、この作品はその入口にあたる位置づけになる。
レーベルはBASF、カタログ番号は20 29055-7。BASFは1971年に本格的なレコード部門を立ち上げたドイツのレーベルで、当時はMPS系やプログレッシブ・ロック系の作品も抱えていた。こうした流通背景を踏まえると、『Warm Dust』は英国バンドの作品でありながら、ドイツ盤ならではの整理されたリリース環境の中で出たタイトルとして見ることができる。1972年という年は、英米のプログレが細分化し、ジャズ寄り、クラシック寄り、ハード寄りといった分岐がはっきりしていく時期でもあり、このアルバムもその文脈の中に置ける。
作品の輪郭
Warm Dustの音楽は、単に「プログレ」と一括りにするより、演奏の組み立てにジャズ由来の流れがあり、曲の展開にブルースの硬さが残り、そこへクラシック的な構成感が差し込む、という見方のほうが近い。歌ものとしての押し出しだけでなく、アンサンブルの動きそのものを聴かせるタイプで、1970年代前半の英国グループに多かった、長尺曲と細かなパート展開の感覚がはっきりしている。Paul Carrackの後年の活動を知っていると、ここでの彼の立ち位置にも耳が向くが、この時点ではまだバンド全体の色が強い。
アルバム全体を通すと、派手な一発で押すというより、複数の楽器が役割を分担しながら少しずつ熱を上げていく作りが目立つ。管楽器やキーボードの存在感が前に出る場面では、ロックというよりブラスを含んだ小編成の組曲のように聞こえることもある。反対に、リズムが前へ出る場面では、英国のクラブ・シーンやジャズ・ロックとの接点が見えやすい。録音も含めて、当時のプログレ作品らしい手触りのある質感で、スタジオでの演奏感を残したタイプといえる。
注目曲としての聴きどころ
タイトル曲「Warm Dust」は、このバンドの輪郭を最も端的に示す曲として聴ける。曲名を冠しただけあって、アルバムの方向性を説明する役割が強い。リフやリズムの置き方にロックの骨格がありつつ、フレーズの受け渡しや展開にはジャズ・ロック的な機動力がある。歌が前に出る場面でも、単純なメロディ主導ではなく、演奏の密度で聴かせる場面が続く。英プログレの中でも、派手な装飾よりバンドの合奏感を重視するタイプの曲として印象に残る。
この曲では、各パートが順番に主張するのではなく、複数の音が同時に動きながら空間を作っていく。こうした作りは、同時代のジャズ寄りプログレやブラスを取り入れたロックに通じるもので、単独の名人芸よりもアンサンブルの連結に耳が向く。特に中盤以降は、曲の推進力が演奏の切り替えによって保たれていて、長めの構成でも間延びしにくい。タイトル曲としての役目をきちんと果たしている一曲だ。
もう一つの聴きどころは、アルバムの中でバンドの持つ幅を見せるタイプの楽曲群だ。Warm Dustは、攻める場面だけでなく、テンポを落として旋律やコード感を見せる場面でも性格が出る。ここではPaul Carrackのボーカルが、後年のソウルフルな歌唱へつながる前段として聞こえることもある。とはいえこの時点では、個人の色彩よりも、バンド全体のまとまりの中で声が機能している印象が強い。
同時代の中での位置づけ
1972年の英国プログレといえば、シンフォニックな大作路線、ハードロック寄りの展開、ジャズ・ロック寄りの技巧派路線が並立していた。Warm Dustはその中で、ジャズ・ロックやブラス・ロックに接近した感触を持つグループとして捉えやすい。The Nice、Colosseum、If、Atomic Rooster周辺の流れを思わせる部分もあり、ただし完全にどこかへ寄り切るのではなく、ロックの強さとアンサンブル志向のあいだを行き来する。そうした中間的な立ち位置が、このデビュー作の面白さになっている。
また、短命なバンドであることも、このアルバムの聴こえ方に影響する。3枚のアルバムを残して解散したという事実から、作品ごとに完成形へ向かう途中の段階を追えるグループともいえる。『Warm Dust』は、その最初の段階として、バンドの演奏語法や音の選び方を提示する役割が大きい。後続作を知る前提でも、まずここで基本の手つきを確認できる一枚だ。
まとめ
Warm Dust『Warm Dust』は、1972年の英国プログレが持っていた複数の流れを、比較的コンパクトにまとめた作品として聞ける。ジャズ、ブルース、クラシックの要素を混ぜたというバンドの説明が、実際の演奏の組み立てに結びついている点が大きい。タイトル曲を中心に、合奏の力で進む場面と、旋律や歌を前に出す場面が切り替わりながら続く。BASF盤というドイツ・リリースの形も含めて、当時の欧州プログレの一断面を示すアルバムだ。
トラックリスト
- A1 Lead Me To The Light 5:17
- A2 Long Road 4:47
- A3 Mister Media 3:07
- A4 Hole In The Future 8:37
- B1 A Night On The Bare Mountain 1:05
- The Blind Boy 18:56