Cypress Hill - Black Sunday (1993)
Cypress Hill 1993

Cypress Hill - Black Sunday (1993)

Hip Hop Boom Bap Gangsta

Cypress Hill『Black Sunday』レビュー

Cypress Hillの『Black Sunday』は、1993年にRuffhouse Recordsから登場した2作目のアルバムである。South Gate, California出身のラップ・グループが、デビュー作で築いた独特の低音感覚とラテン系の空気を、より大きなスケールでまとめ上げた作品として知られている。Gangsta rapの硬さと、Boom Bapの骨太なビートが前面に出た一枚で、90年代前半のアメリカ西海岸ヒップホップの中でも存在感が強い。

制作の背景と録音環境

本作は1992年2月から1993年4月にかけて制作され、ハリウッドの38 Fresh、Image Recording、ニューヨークのChung King、Greene Street、Soundtrack、さらにフィラデルフィアのStudio 4など、複数のスタジオをまたいで録音された。ミックスもStudio 4で行われている。西海岸のグループでありながら、ロサンゼルスだけに閉じず、ニューヨークやフィラデルフィアの現場も使っている点が面白い。DJ Muggsのプロデュースが全体の軸にあり、ほぼ全曲を彼が担当している。

メンバーはB-Real、Sen Dog、DJ Muggs、そしてこの時期からEric Boboが加わる編成。Cypress Hillの初期の特徴である、粘り気のあるサンプル使いと、B-Realの甲高く細い声、Sen Dogの低く押し出すラップの対比が、このアルバムでもはっきりしている。

ヒット曲とアルバムの核

収録曲の中でも最も知られているのは「Insane in the Brain」である。攻撃的なタイトルに反して、フックの覚えやすさが際立つ曲で、Cypress Hillの代表曲として広く定着した。もう一つの重要曲が「I Ain’t Goin’ Out Like That」。この曲だけはT-Rayがプロデュースを担当しており、Black Sabbathの「The Wizard」をサンプリングしている点でも知られる。ヒップホップの中にロックの断片を持ち込む手つきが、当時のミクスチャー感覚ともつながっている。

『Black Sunday』は1993年7月20日にRuffhouse/Columbiaからリリースされると、Billboard 200で初登場1位を記録し、初週26万1千枚を売り上げた。前作『Cypress Hill』もチャートに残っていたため、ヒップホップ・グループとして初めて2作同時にトップ10入りしたことでも話題になった。商業的な成功がかなり大きい作品である。

サウンドの印象

実際に聴くと、音数を詰め込むよりも、低く重いループを長く引っ張る作りが目立つ。ドラムは前に出るが、派手に鳴らし切るというより、煙のように空間を満たす感じがある。B-Realの声は相変わらず細く鋭く、そこにSen Dogのラフな声が重なることで、曲ごとの輪郭がはっきりする。耳に残るのは、メロディよりも反復の力、そしてサンプルの切り方そのもの。90年代前半のヒップホップに多かった、硬質でサンプル主導の作りを、Cypress Hill流にまとめた内容になっている。

また、ラテン系ルーツを持つグループとしての個性も、押し出しすぎずに自然に入っている。西海岸のギャングスタ・ラップの空気を持ちながら、N.W.A.のような鋭い政治性や、Dr. Dreの洗練されたGファンクとは別の位置にある。むしろ、サイケデリックな感触や、アンダーグラウンド寄りのサンプル感覚が強い。

評価と位置づけ

批評面でも反応は良く、Rolling StoneやThe Sourceが4つ星、NMEが8/10と高い評価を与えた。「I Ain’t Goin’ Out Like That」はグラミー賞のBest Rap Performance部門にノミネートされている。結果として『Black Sunday』は、商業的なヒット作であると同時に、Cypress Hillの名前を90年代ヒップホップの主要な文脈へ押し上げたアルバムとして見られている。

同時代の作品と比べると、West Coastの中でもかなり独自性が強い。G-funkのような明るいファンク処理より、暗めの反復とサンプルの圧で引っ張る構成が中心で、Public Enemy以降のサンプル文化や、ブームバップの硬さに近い感触もある。そこにラテン系グループとしての個性が重なり、後のクロスオーバー型ヒップホップにも通じる流れを作った作品として残っている。

この盤について

今回の1993年US盤は、ゲートフォールド仕様で白黒印刷のインナー付き。レーベルは青地に黒いストライプのデザインで、当時のオリジナル期の空気をそのまま伝える見た目になっている。マスターノートには「Insane In The Brain」のサンプルが差し替えられた再発・再版盤であることが記されており、初出時の音源とは一部内容が異なる。オリジナルの『Black Sunday』を追う上では、まず1993年盤の存在が基準になる。

Cypress Hillにとって『Black Sunday』は、デビュー作で示した個性を、ヒット曲とアルバム全体の強度の両方で広げた作品である。代表曲「Insane in the Brain」を中心に、90年代ヒップホップの中で長く参照される理由が、曲単位でもアルバム単位でもはっきり残っている。

トラックリスト

  1. A1 I Wanna Get High 2:54
  2. A2 I Ain't Goin' Out Like That 4:27
  3. A3 Insane In The Brain 3:29
  4. B1 When The Sh-- Goes Down 3:08
  5. B2 Lick A Shot 3:23
  6. B3 Cock The Hammer 4:25
  7. B4 Interlude 1:16
  8. C1 Lil' Putos 3:40
  9. C2 Legalize It 0:46
  10. C3 Hits From The Bong 2:40
  11. D1 What Go Around Come Around, Kid 3:42
  12. D2 A To The K 3:27
  13. D3 Hand On The Glock 3:32
  14. D4 Break 'Em Off Some 2:44

動画プレイリスト

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