Elliott Smith - Either / Or (1997)
Elliott Smith 1997

Elliott Smith - Either / Or (1997)

Rock Indie Rock Acoustic Lo-Fi

Elliott Smith『Either / Or』――静かな旋律と録音現場の移動感

Elliott Smithの『Either / Or』は、1997年にKill Rock Starsから出た3作目のアルバムで、彼の名前を広く知らしめる前段階の重要作として扱われる一枚だ。ソロ名義ではあるが、制作はかなり多地点にまたがって進められていて、ポートランド周辺を中心に、Joanna’s house、自宅、The Shop、Undercover Inc.、Heatmiser house、Laundry Rulesなどで録音されている。低予算の環境がそのまま音の輪郭に残っている作品で、アコースティックな弾き語りの親密さと、バンド録音由来の手触りが同じ盤の中に並ぶ。

作品の位置づけ

Smithは1969年生まれのアメリカ人シンガーソングライターで、もともとはHeatmiserのメンバーとして知られた人物だ。『Either / Or』は、そのバンド活動と並行しながら、ソロ作としての輪郭を固めていった時期の作品にあたる。前作までの流れを受けつつ、ここでは曲の長さや編成を絞ったものと、演奏が少し広がるものが同居していて、作曲家としての整理された感覚が前に出ている。録音クレジットに複数の場所が並ぶのも、その制作過程をよく示している。

音の印象

このアルバムを聴くと、まず歌とギターの距離が近い。声は大きく張り上げられず、メロディの流れに沿って淡々と置かれていく。録音の質感は派手ではないが、音が痩せているわけでもない。アコースティック主体の曲では、指の動きや弦の擦れがそのまま残り、ローファイの枠に収まりながらも、ただ荒いだけには終わらない。バンド寄りの曲になると、ドラムやベースが入っても音圧で押し切る感じはなく、各楽器がきちんと居場所を持っている。

一聴して目立つのは、短い曲の中に和声の変化や言葉の運びが詰め込まれている点だ。展開を大きくしなくても曲が進む。そこにSmithらしい書き方が出ている。歌詞は内面の記述が中心だが、感情を過剰に説明する方向ではなく、短いフレーズの積み重ねで輪郭を作るタイプ。耳に残るのは、派手なサビよりも、旋律がふっと引っかかる瞬間のほうだ。

代表曲と収録曲の広がり

本作からは「Say Yes」「Between the Bars」「Angeles」などがよく知られている。「Say Yes」は比較的まっすぐな進行の上に置かれた楽曲で、後年まで彼の代表曲として扱われることが多い。「Between the Bars」は、繰り返しの中で感情の重さが増していく曲で、静かな編成のまま印象を深く残す。「Angeles」は、メロディの跳躍がやや大きく、アルバムの中でも輪郭がはっきりしている。いずれも、音数を増やさずに曲の中心を保つ書き方が前面に出ている。

同時代とのつながり

1990年代後半のアメリカン・インディーの中でも、『Either / Or』は、パンクやオルタナティヴの大きな音とは別の方向を向いた作品として見られている。Kill Rock Starsというレーベル自体が、Olympia発のインディー/パンク文脈で重要な存在で、Bikini Kill、Sleater-Kinney、Unwound、The Gossipなどを抱えてきたことでも知られる。その中でSmithの作品は、同じDIY圏にありながら、より室内的なソングライティングに寄っている。

後年の評価も強く、公開後はGus Van Sant監督の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』で「Between the Bars」「Angeles」「Say Yes」が使われ、さらに新曲「Miss Misery」がアカデミー賞歌曲賞にノミネートされたことで、アルバム全体の知名度が上がった。とはいえ、作品の核は映画との結びつき以前から揺れていない。低温の声、簡潔な編成、記憶に残る旋律、録音場所の分散がそのまま内容に反映されたアルバム。

1997年盤について

今回の1997年オリジナル盤は、軽めの重量のヴィニール、淡い黄色のラベル、歌詞とクレジットを収めた光沢のあるインサートが特徴とされる。初期プレスの資料としては、KRS 1996または1997の通販用インサートが同封されている場合もある。こうした物理的な仕様も含めて、当時のインディー盤らしい作りが見える。作品としては静かな出発だったが、のちにSmithの代表作として扱われる流れにつながった一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Speed Trials
  2. A2 Alameda
  3. A3 Ballad Of Big Nothing
  4. A4 Between The Bars
  5. A5 Pictures Of Me
  6. A6 No Name No. 5
  7. B1 Rose Parade
  8. B2 Punch And Judy
  9. B3 Angeles
  10. B4 Cupid's Trick
  11. B5 2:45 AM
  12. B6 Say Yes

動画プレイリスト

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