Kelenkye Band - Moving World (1974)
Kelenkye Band『Moving World』
ガーナのアフロ・ファンク・バンド、ケレンキエ・バンド(Kelenkye Band)が1974年に残した唯一のアルバム『Moving World』。首都アクラで活動していたトップクラスのスタジオ・ミュージシャンを結集し、プロデューサーを務めたオーガスタス・ケリー・テイラー(Augustus Kerry Taylor)のプライベート・レーベル「Emporium Records」の第一弾(EMP 001)としてリリースされた作品である。
制作背景・エピソード
本作のプロデューサー兼仕掛け人であるオーガスタス・ケリー・テイラーは、1970年代の西アフリカにおいてフェラ・クティをはじめとする数多くの歴史的レコード・スリーブを手掛けた名アート・デザイナー。彼が自身のアート会社「Designs Emporium」傘下にEmporium Recordsを立ち上げ、自ら腕利きのプレイヤーを集めて結成したのがこのKelenkye Bandだった。
メンバーは、リード・ギターのジャガー・ボッチウェイ(Jagger Botchway)、ヴォーカルのレスリー・アディ(Leslie Addy)、リズム・ギターのオコ・リンゴ(Oko Ringo)、コンガのオフィサー・トロ(Officer Toro)、ベースのジョー・ウェリントン(Joe Wellington)、クラリネットのスティーブ(Steve Adjeladje)、ドラムのソルジャー(Soldier)からなる7人編成。しかしリリース後まもなくレーベルは活動を停止し、バンドも2作目を制作することなく解散。結果としてEMP 001という型番のまま、一度きりの奇跡的な録音として歴史に刻まれることとなった。
時代の文脈とサウンド
1970年代前半の西アフリカは、ジェームス・ブラウンやスライ&ザ・ファミリー・ストーンに代表されるUSファンクの熱波と、隣国ナイジェリアのフェラ・クティが切り拓いたアフロビートの衝撃、そしてガーナ固有の伝統的なハイライフ音楽が激しく交錯していた時代だった。Kelenkye Bandはその潮流の中で、アメリカの硬質なディープ・ファンクとカリブ海から伝播した初期レゲエのグルーヴをいち早く吸収し、ガーナの土着的なポリリズムと融合させた。
タイトなベースとドラムが牽引するタイトル曲「Moving World」や「Brotherhood Of Man」、初期レゲエの裏打ちビートとアフロ・ファンクが怪しく交差する「Dracula Dance」、ソウルフルな叙情性を湛えた「Jungle Music」、ハイライフの陽光あふれる旋律を取り入れた「Wale Tobite」など、当時のアクラの音楽シーンの豊潤さと熱狂が濃密に凝縮されている。
後世への影響
オリジナル盤はガーナ国内で極少数のみプレス・流通したため、長年にわたり世界中のレコード・ディガーの間で「アフロ・ファンク究極の聖杯(ホーリー・グレイル)」と称され、数千ドルで取引されるカルト盤となっていた。
2011年、アフロ・レア・グルーヴの探求者「Voodoo Funk」のフランク・ゴスナーの協力のもと、フランスの名門Superfly Recordsが待望の正規リイシューを実現。さらに米Cultures of Soul等からも再発されたことで、幻の音源が世界中のクラブDJやアフロビート/ファンク愛好家へと広く届けられ、70年代アフリカン・グルーヴの最高峰の一つとして国際的なリスペクトを不動のものとした。
トラックリスト
- A1 Moving World
- A2 Dracula Dance
- A3 Brotherhood Of Man
- A4 No One Is Born To Suffer
- B1 Groovy Love
- B2 Jungle Music
- B3 Wale Tobite
- B4 Kelenkye