Massive Attack - Protection (1994)
Massive Attack 1994

Massive Attack - Protection (1994)

Electronic Downtempo Dub Trip Hop

Massive Attack『Protection』——Bristol発の感触をさらに研ぎ澄ませた2作目

Massive Attackの『Protection』は、1994年に発表されたセカンド・アルバムである。Bristol出身のコラボレイティヴな制作集団として知られる彼らが、デビュー作『Blue Lines』で示したダブ、ソウル、ヒップホップの要素を、より整理された形で前へ進めた作品として位置づけられる。ここでは音数を増やして押し切るのではなく、間合いと低音、歌の置き方で曲を成立させていく作りが目立つ。

制作面ではNellee Hooperの関与が大きく、ゲストにTracey Thorn、Horace Andy、Nicoletteらを迎えている。Massive Attackの中でも、ラップやクラブの文法だけではない、歌ものとしての輪郭がよりはっきりした一枚で、タイトル曲の存在感は特に大きい。翌年にはMad Professorによる全曲ダブ・リミックス盤『No Protection』も登場しており、この時期のグループがダブの感覚を強く意識していたことがうかがえる。

作品の立ち位置

『Protection』は、前作の成功を受けて作られた2作目として、Massive Attackの評価を固めた作品と見られている。Bristol周辺の音楽文脈では、同時期のPortishead『Dummy』と並べて語られることが多く、どちらもトリップホップという呼び名でまとめられがちだが、こちらはよりリズムの重心が低く、曲の骨格がはっきりしている印象がある。1994年の英国音楽シーンの中でも高く評価され、チャートでも英国アルバム・チャート最高4位を記録した。

また、当時の批評では、前作の延長線上にありながら、より洗練された成功作として受け止められていた。実際に聴くと、派手な展開で引っ張るタイプではなく、同じテンポ感のまま空気の密度を変えていく作りが多い。耳に残るのはメロディーというより、低音の残響、声の距離感、音が引いたあとの余白である。

タイトル曲「Protection」

アルバムの中核を担うのがタイトル曲「Protection」で、Tracey Thornの歌唱が大きな役割を持つ。彼女の声は前に出すぎず、しかし輪郭は明確で、Massive Attackの演奏とぶつからずに曲全体を支えている。ここではビートが主張しすぎないぶん、歌の旋律とバックの間の取り方がそのまま曲の印象になる。華やかさよりも、一定の距離を保ったまま感情を積み上げる構成で、アルバムの方向性を端的に示す一曲だ。

シングルとしても重要で、Massive Attackの代表曲群の中でも、比較的ストレートに曲の良さが伝わる部類に入る。特に、ダブ的な処理やサウンドの空白が、単なる装飾ではなく曲の骨組みとして機能している点がわかりやすい。聴き進めるほど、歌が前景で泣くのではなく、音の隙間に置かれていることが効いてくる。

「Karmacoma」

「Karmacoma」は、この時期のMassive Attackを語るうえで外せない代表曲である。Trickyを含む初期メンバーの感覚が濃く出たトラックで、ヒップホップ由来のリズム感と、ダブの空間処理が強く結びついている。言葉の切れ方やフレーズの反復が印象に残り、曲全体が前進するというより、同じ地点をぐるりと回りながら熱を帯びていくように聴こえる。

この曲の重要性は、アルバムの中での異物感ではなく、むしろ作品全体の芯になっていることにある。『Protection』は静かな曲が多いが、その静けさは停滞ではない。「Karmacoma」があることで、アルバムは単なる夜向きのソウル作品にとどまらず、クラブ以後の感覚を持った制作物として輪郭を保っている。

「Weather Storm」「Better Things」などの聴きどころ

「Weather Storm」は、サンプルの使い方がよくわかる一曲で、流れを壊さずに音の層を増やしていく作りが目立つ。メロディーを強く押し出すというより、和音の進み方と質感で引っ張るタイプで、アルバム中でも特に落ち着いた時間を作る。こうした曲が入ることで、『Protection』はシングル中心の作品ではなく、全体の流れで聴く意味があるアルバムになっている。

「Better Things」も、派手な展開を避けながら印象を残す曲だ。ビートは控えめだが、細かな音の重なりがあり、聴き進めるうちに輪郭が見えてくる。Massive Attackは、強いフックで押すより、じわじわと聴き手の感覚を変えていく構成に長けていて、この曲でもその作法がよく出ている。

音作りとクレジット

録音はロンドンとブリストルの複数スタジオで行われ、ミックスも主にOlympic Studiosで実施されている。アルバムは印刷されたインナー・スリーヴ付きで、コピーによってはプロモーションカードが封入されていた。レコードとしての体裁も含めて、当時のリリース物らしい手触りがある。さらに、いくつかの曲には既存楽曲のサンプルが用いられており、引用の置き方がサウンドの流れに自然に組み込まれている。

『Protection』は、Massive Attackが「重く遅い音楽」をただ続けたのではなく、歌、空間、低音、ダブ処理を整理して、より完成度の高い形にまとめた作品として聴こえる。Bristol発の感触を保ちながら、当時の英国の同系統作品の中でも、かなりはっきりした輪郭を持つアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Protection
  2. A2 Karmacoma
  3. A3 Three
  4. A4 Weather Storm
  5. A5 Spying Glass
  6. B1 Better Things
  7. B2 Euro Child
  8. B3 Sly
  9. B4 Heat Miser
  10. B5 Light My Fire (Live)

動画

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