Pixies - Doolittle (1989)
Pixies 1989

Pixies - Doolittle (1989)

Rock Indie Rock

Pixies『Doolittle』――オルタナティヴ・ロックの輪郭を決定づけた1989年作

Pixiesの『Doolittle』は、1989年にUS盤として登場した2作目のスタジオ・アルバムである。バンドは1986年にボストンで結成され、Black Francisのギターとボーカル、Kim Dealのベースとコーラス、Joey Santiagoのギター、Dave Loveringのドラムという編成で、のちのオルタナティヴ・ロック/インディ・ロックに大きな影響を残した。前作『Surfer Rosa』で示した荒さを保ちながら、本作では曲構成がより整理され、メロディの輪郭もはっきりしている。Pixiesの代表作として扱われるのは、このアルバムの位置づけが非常に大きいからだろう。

USオリジナル盤は4ADからのリリースで、カタログ番号は60856-1。4ADらしい丁寧なアートワークと、レーベルの美意識がしっかり反映された1枚でもある。内袋には歌詞と写真を掲載したカスタム印刷のインナーが付属し、シュリンクには「Monkey Gone To Heaven」「Debaser」「Here Comes Your Man」を告知するピンクのステッカーが貼られていたという。さらにこの盤はDirect Metal Mastering、いわゆるDMM仕様で、マトリクスにもその表記が見られる。B面ラベルにエンボスの“A”が入るプレス差異もあり、同じ1989年盤でも細部に違いがあるのが面白い。

作品の立ち位置と時代背景

『Doolittle』は、Pixiesが“ただ荒いだけのバンド”ではないことを決定づけた作品として語られることが多い。静かなパートと急激に音圧が上がるパートの切り替え、短い曲の中に詰め込まれた展開、奇妙なイメージとポップなフックの同居。そうした要素が、のちのNirvanaやRadiohead、Weezer以降のギターバンドに繋がる文脈の中で参照されていく。1980年代末という時期に、英国インディ勢の文脈と米国オルタナの文脈をまたぐ形で評価されたのも、このアルバムらしいところだ。

実際、英国ではかなり高く受け止められ、Official Chartsでは最高8位を記録している。一方で米国ではBillboard 200で171位と、当時の商業的な広がりはそこまで大きくなかった。批評とセールスの時間差があるタイプの作品で、後年になるほど評価が積み上がっていったアルバムとも言える。

「Debaser」――冒頭からアルバムの性格を決める曲

収録曲の中でまず触れたいのは「Debaser」だ。オープニングを飾るこの曲は、アルバム全体のテンポと気配を一気に決める役割を持っている。歌詞は映画やアートの参照を含みつつ、意味がすぐに回収されない断片で進むが、演奏の推進力が強いため、言葉の飛躍がそのまま勢いに変わっている。ギターは鋭く、リズムは軽快で、Black Francisの声も切迫感を保ったまま前に出てくる。

この曲が面白いのは、激しいのに整理されて聞こえるところだ。前作より録音が整ったことで、各パートの役割が見えやすくなっている。荒さが減ったというより、荒さの置き場所が明確になった印象に近い。『Doolittle』の入口として、Pixiesの持つ不穏さとポップさを短時間で提示する曲だ。

「Here Comes Your Man」――ポップな側面が前面に出た代表曲

代表曲として外せないのが「Here Comes Your Man」である。アルバムの中では比較的ストレートに聴こえるメロディを持ち、Pixiesの作品群の中でも特に広く知られている。リリース当時のプロモーションでもこの曲の存在が大きく、シュリンクのステッカーにも曲名が記されていた。バンドの中では、こうした親しみやすい旋律が、決して“丸くなる”ことと同義ではないところが重要だ。

演奏を追うと、表面は軽やかでも、リズムの進み方や歌の運びには独特の引っかかりが残る。単純に聴きやすいだけでは終わらず、Pixiesらしい違和感がきちんと残る構造だ。『Doolittle』が評価された理由のひとつは、こうした曲をアルバムの中で無理なく成立させている点にあると思う。

「Monkey Gone to Heaven」――アルバムの象徴的な1曲

「Monkey Gone to Heaven」も本作を語るうえで重要な曲だ。タイトルの印象からして強く、歌詞には神話的、終末的なイメージが入り込む。けれど音楽自体は過度に重くならず、むしろメロディの推進力が前に出る。そのため、内容の奇妙さと聴きやすさが同時に立ち上がる。

この曲は、Pixiesが持っていた“変な話を、きちんとバンド・サウンドとして鳴らす”力をよく示している。プロデューサーのGil Nortonとの作業によって、曲の輪郭がより明瞭になったことも効いているはずだ。ライヴ感を残しながら、音像は前作より整っている。そのバランスが、この曲の説得力を支えている。

まとめ

『Doolittle』は、Pixiesの2作目という位置づけ以上に、オルタナティヴ・ロックの設計図のように扱われてきたアルバムだ。荒さ、メロディ、奇妙なイメージ、短い曲に詰まった展開、そして4ADらしい美意識。USオリジナル盤のDMMプレスや内袋、ステッカーといった物理的な要素も含めて、1989年という時代の空気がよく残っている。作品としての完成度と、その後の影響力の両方で、長く参照され続ける1枚である。

トラックリスト

  1. A1 Debaser 2:53
  2. A2 Tame 1:55
  3. A3 Wave Of Mutilation 2:42
  4. A4 I Bleed 2:34
  5. A5 Here Comes Your Man 3:21
  6. A6 Dead 2:21
  7. A7 Monkey Gone To Heaven 2:56
  8. B1 Mr. Grieves 2:52
  9. B2 Crackity Jones 1:24
  10. B3 La La Love You 2:43
  11. B4 Number 13 Baby 3:51
  12. B5 There Goes My Gun 1:49
  13. B6 Hey 3:31
  14. B7 Silver 2:25
  15. B8 Gouge Away 2:46

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