Abecedarians - Eureka (1986)
Abecedarians 1986

Abecedarians - Eureka (1986)

Rock Indie Rock Alternative Rock Post-Punk

Abecedarians『Eureka』について

Abecedariansは、1980年代半ばに活動したロサンゼルスの3人組で、Chris Manecke、Kevin Dolan、John Blakeを中心に、ギター、ベース、ドラムに加えてシンセ感のある音作りを組み合わせたバンドだ。リバーブの深い音像と、ポストパンクの硬質さ、インディー・ロック寄りの感触が同居するのがこのグループの持ち味で、US西海岸のバンドとしては少し湿度のある響きが特徴的。『Eureka』はそのAbecedariansの作品をまとめて聴く入口としてもわかりやすい1枚で、オリジナルは1986年の作品として扱われている。

今回の盤は2012年リリースのUS盤で、レーベルはPylon Records (Pylon 28)。Pylon Recordsは2005年にPeter Blackによって始められたレーベルで、こうした再発・掘り起こし系の文脈で知られる。80年代当時の空気をそのまま封じ込めた作品を、後年にあらためて聴ける形にした盤と見るとわかりやすい。オリジナル盤と比べると、2012年盤は現行の入手性を意識した再提示であり、作品そのものの年代感を確認する役割が大きい。

Abecedariansというバンドの位置づけ

Abecedariansは、ポストパンク以降の流れの中で、ギターの残響とシンセの質感を強めに押し出したタイプのバンドだ。アメリカの80年代インディー、あるいはFactory Records周辺の英国勢と比較されやすいのも納得できる。実際、彼らの関連情報としてFactory Records系のアーカイブも挙がるほどで、音の輪郭だけでなく、時代の文脈の中でも語られてきたグループといえる。

『Eureka』は、そんなAbecedariansの輪郭を端的に示す作品として見ると整理しやすい。派手な装飾よりも、楽器同士の間合い、残響の長さ、リズムの硬さが前に出る。聴感としては、曲が進むほどにメロディよりも音の層が印象に残るタイプで、一本調子ではなく、曲ごとに空気の温度が少しずつ変わっていくのが面白い。

収録曲の聴きどころ

この作品でまず目を引くのは、ギターの鳴り方だ。Chris Maneckeのギターは前に出すぎず、しかし埋もれもしない位置で響き、そこにボーカルとキーボードが重なることで、音の密度がじわじわ上がっていく。Kevin Dolanのドラムは派手なフィルで引っ張るというより、拍の芯を保ちながら曲全体の推進力を作る役回り。John Blakeのベースは、その隙間を埋めるように線を保ち、曲の重心を下に置いている。

代表曲として語られやすいのは、冷えたリズムと広がる残響が印象に残るタイプの曲だろう。Abecedariansの楽曲は、サビで一気に開くというより、同じモチーフを保ちながら少しずつ景色を変える構成が目立つ。聴いていると、音数はそれほど多くないのに、空間が広く感じられる。ボーカルも感情を大きく振るというより、一定の距離を保ったまま進む場面が多く、その温度感が全体の統一感につながっている。

もうひとつの聴きどころは、シンセの使い方だ。80年代のオルタナティブ・ロックやポストパンクでは、シンセが飾りではなく、曲の輪郭を整える役割を担うことが多いが、この作品でもその傾向がはっきりしている。ギターの鋭さを和らげるというより、逆に残響を増幅させる方向で働いていて、結果として曲が乾きすぎない。ロックの編成でありながら、少し別の空気を持ち込む感じがある。

同時代の文脈で見ると

『Eureka』を80年代半ばの作品として見ると、英国のポストパンクやネオサイケデリアの影響を受けたアメリカ勢の一角として捉えやすい。The Cure周辺の陰影、あるいはFactory Records系の冷ややかな質感を思わせる部分がありつつ、USバンドらしい直線的なバンド演奏も残っている。完全にどこかへ寄り切るのではなく、その中間に立っている印象だ。

そのため、この作品は単に「80年代のインディー・ロック」とまとめるより、ポストパンク以降の残響系ギターサウンドがUSでどう展開したかを見る材料としても興味深い。派手なヒット曲で押し切るタイプではないが、曲単位で聴くと、当時のインディー・シーンで共有されていた美意識がかなり明瞭に出ている。

2012年盤としての意味

2012年のPylon Records盤は、オリジナルの年代を知ったうえで手に取ると意味が見えやすい。80年代当時の作品を、後年のリスナーがあらためて聴ける形で残した再発盤として、資料的な価値もある。音の質感を追う楽しみが中心の作品なので、盤としての存在意義は大きい。Abecedariansという名前を手がかりに、当時のUSオルタナティブの細いが確かな流れをたどれる1枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Ghosts
  2. A2 Soil
  3. A3 Beneath The City Of The Hedonistic Bohemians
  4. B1 I Glide
  5. B2 Mice & Coconut Tree
  6. B3 Misery Of Cities
  7. C1 Smiling Monarchs
  8. C2 Benway's Carnival
  9. C3 Switch
  10. C4 Other Side Of The Fence
  11. D1 They Said Tomorrow
  12. D2 Wildflower
  13. D3 John's Pop
  14. D4 Spaghetti Western

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