Satin Whale - As A Keepsake (1977)
Satin Whale『As A Keepsake』(1977)について
ドイツ・ケルン出身のプログレッシブ・ロック・バンド、Satin Whaleが1977年に発表したアルバムが『As A Keepsake』だ。バンドは1970年代前半から活動し、初期は長尺のインストゥルメンタルを軸にした構成で知られていたが、作品を重ねるにつれて歌ものの比重も増していく。その流れの中で出てきた本作は、同時代のドイツ産ロックの文脈の中でも、バンドの整理されたアンサンブルと、楽曲単位でのまとまりが目立つ一枚として位置づけられる。
リリースはドイツのNovaレーベル。Novaは1970年代のドイツでプログレッシブ・ロック寄りの作品を多く抱えたレーベルで、Satin Whaleのようなバンドの作品を追ううえでは重要な名前だ。ケルンという土地柄もあって、いわゆるクラウトロックの周辺に置かれやすいが、本作は極端に実験的な方向へ振り切るというより、曲の輪郭を保ちながら進むタイプの作品として受け取られやすい。
作品の輪郭
『As A Keepsake』は、インナー・スリーブに歌詞、写真、クレジットを載せた白黒仕様で出ている。レーベル表記はジャケット裏・背表紙・ラベルで基本的に 6.22969、インナー・スリーブでは 6.22969-00-301 となっている。こうした表記の違いは、当時のドイツ盤らしい実務的な作りの一部で、盤そのものの存在感よりも、レーベルとパッケージの管理情報がしっかり残るタイプのリリースだ。
1977年時点のSatin Whaleは、初期の長尺中心のイメージだけでは捉えきれない。ここでは、鍵盤、ギター、フルートを含む編成が、組曲的な大作だけでなく、比較的コンパクトな楽曲の中でも機能している点が見どころになる。前後のドイツ産プログレ、たとえばTriumviratのような組み立ての精密さや、Grobschnitt周辺にある劇性とは少し距離を置きつつ、よりバンド・アンサンブル寄りの進行を聴かせる印象だ。
注目したい曲の聴きどころ
本作でまず耳に入るのは、リズム隊が曲の骨格を崩さずに支えている点だ。派手に前へ出るというより、キーボードとギターの動きが見えやすいように土台を作る演奏で、ドイツの70年代ロックに多い「展開で引っ張る」感覚がある。曲が進むにつれて音数が増えていく場面でも、各パートが混線しにくく、フレーズの受け渡しがわかりやすい。
また、Satin Whaleらしさとして、メロディの置き方が比較的明快なところも重要だ。初期のインストゥルメンタル主体の時期に比べると、楽曲は短くなっているが、そのぶん一曲ごとの役割がはっきりしている。歌が入る場面では、演奏の密度を保ちながらも、言葉の流れを邪魔しない配置になっていて、アルバム全体の統一感につながっている。
特に、キーボードが主導するパートでは、オルガン系の厚みとシンセの輪郭が重なり、70年代後半のドイツ・プログレらしい質感が出る。ここは同時代の英プログレの華美さとは少し違い、もっと機能的で、曲の構造を見せる方向の鳴り方だ。フルートが入る箇所も、装飾というより旋律線の補強として働いているように聴こえる。
この時期のSatin Whaleという位置づけ
Satin Whaleは、ケルン周辺のバンドとして語られることが多いが、単純に「クラウトロック」という一語では収まらない。初期の長いインストゥルメンタルから、より曲中心の作りへ移っていく過程自体がバンドの歴史になっていて、『As A Keepsake』はその流れの中盤以降の姿を示す作品と見られる。演奏の緊張感を保ちつつ、アルバムとしての聴きやすさも意識された作りに感じられる。
同時代のドイツ・ロックを並べてみると、よりシンフォニックに寄るバンド、よりハードな方向に進むバンドも多い中で、Satin Whaleは比較的バランス型だ。大仰さだけに頼らず、曲の中で展開を作る手つきにバンドの持ち味がある。本作もその延長線上にあり、1977年という時点で、70年代前半のプログレの語法を自分たちなりに整理しているように見える。
盤の情報として
- アーティスト: Satin Whale
- タイトル: As A Keepsake
- オリジナルリリース年: 1977年
- リリース国: Germany
- レーベル: Nova (6)
- カタログ番号: 6.22969
- 表記差: インナー・スリーブに 6.22969-00-301、ラベル・背表紙・ジャケット裏に 6.22969
- 付属物: 歌詞、写真、クレジット入りの白黒インナー・スリーブ
『As A Keepsake』は、Satin Whaleの歩みを追ううえで、初期の長尺志向と後期の楽曲志向のあいだにある時期を示す一枚として見えてくる。Nova盤らしい管理されたパッケージとともに、70年代ドイツのロックが持っていた演奏重視の感覚が、端正な形で残された作品だ。
トラックリスト
- A1 Holidays 5:39
- A2 Reminiscent River 4:12
- A3 Devilish Roundabout 5:43
- A4 A Bit Foolish – A Bit Wise 5:58
- B1 Shady Way 4:14
- B2 Goin' Back To Cologne 3:54
- B3 Kew Gardens 4:26
- B4 Marée 4:38
- B5 No Time To Lose 4:26
動画
-
A1 Holidays
-
A2 Reminiscent River
-
A3 Devilish Roundabout
-
A4 A Bit Foolish A Bit Wise
-
B1 Shady Way
-
B2 Goin' Back To Cologne
-
B3 Kew Gardens
-
B4 Marée
-
B5 No Time To Lose