The Beatles - The Beatles (1968)
The Beatles 1968

The Beatles - The Beatles (1968)

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The Beatles『The Beatles』――“ホワイト・アルバム”という呼び名が定着した2枚組

The Beatlesの『The Beatles』は、1968年にUKのApple Recordsから出た9作目のスタジオ・アルバムで、のちに“ホワイト・アルバム”の名で広く知られる作品だ。白一色のジャケットに題名だけを配したミニマルな装丁は、それ以前の『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』の華やかさとは対照的で、作品そのものの振れ幅の大きさも含めて、この時期のビートルズをよく表している。ロック、ポップ・ロック、サイケデリック・ロック、実験性が同居した2枚組で、グループの後期を代表する1枚として扱われることが多い。

制作は1968年春のインド滞在後に本格化し、アビー・ロードで集中的に録音された。メンバー4人が常に同じ方向を向いていたというより、それぞれが持ち込んだ曲を個別に詰めていく場面が増えている。結果として、アルバム全体は統一感よりも曲ごとの個性が前に出た構成になっている。ビートルズの作品群の中でも、バンドとしてまとまっていた時代から、各メンバーの持ち味がそのまま分岐していく過程をはっきり聴き取れる位置づけだ。

白いジャケットと番号入りコピーの存在感

UK初回盤は、見た目の印象も強い。白い見開きジャケットにエンボス加工の題字、個別番号入りの仕様、4枚の光沢写真と両面ポスター、黒い内袋が付属する。店頭で手に取った時点で、すでに“作品”としての情報量が多い。ステレオ表記やラベルの細かな違いもあり、初期プレスでは細部の仕様差が多い盤として知られている。Apple Recordsのリリースだが、EMIロゴが併記されるのは当時の流通事情によるもので、レーベルの見え方にも時代性がある。

「Back in the U.S.S.R.」――冒頭から飛ばす構成の起点

1曲目の「Back in the U.S.S.R.」は、アルバムの入口としてかなりわかりやすい。チャック・ベリー系のロックンロールの手触りを持ちながら、ビーチ・ボーイズを思わせるコーラス感覚も入っていて、いきなりジャンルの境界をまたいでくる。演奏の推進力が強く、2枚組の長さを意識させない立ち上がりだ。ビートルズがロックの基本形をなぞるだけのバンドではなかったことを、冒頭で示しているように聴こえる。

この曲の面白さは、引用やパロディの要素を含みつつ、それが単なる模倣で終わっていない点にある。ロックンロールの骨格を借りながら、録音の積み重ねで独特の厚みを作っている。ホワイト・アルバム全体に通じる「断片の集合」の感覚も、この曲の時点でかなり見えている。

「While My Guitar Gently Weeps」――アルバムの中で輪郭が立つ代表曲

代表曲として外せないのが、ジョージ・ハリスン作の「While My Guitar Gently Weeps」だ。ビートルズのアルバムの中でも、ジョージの作家性が強く前面に出た曲として知られている。メロディは明快だが、歌詞は個人的な感情の重さを抱え、演奏もそれに合わせて緊張感を保っている。アルバム全体が多様な曲調で進む中で、この曲はかなりはっきりした芯を持っている。

ギターの存在感も大きい。楽曲の中で感情の起伏を担う役割が明確で、ホワイト・アルバムの中でも特に“曲としての強さ”が前に出る1曲だと思える。後期ビートルズでは、メンバー個々の作曲力がアルバムの質感を左右する場面が増えるが、その流れを象徴するのがこの曲だろう。

「Helter Skelter」――荒さと音量が前に出る一曲

「Helter Skelter」は、アルバムの中でも特に荒い手触りを持つ。ハードな演奏、押しの強いボーカル、勢い重視の構成で、当時のロックの中でもかなり極端な部類に入る。ビートルズがポップ・グループとして認知されていたことを思うと、この曲の振り切れ方はかなりはっきりしている。サイケデリック期の実験が、ここでは音響の遊びよりも、強度そのものの追求に向かっている印象だ。

ホワイト・アルバムの文脈で見ると、この曲は“まとまりのなさ”ではなく“振れ幅の大きさ”を示す代表例になっている。静かな曲と激しい曲が隣り合うこのアルバムでは、こうした極端な曲が全体の印象を決めている。

「Blackbird」や「Julia」――個人的な空気が前に出る場面

アコースティック寄りの曲も重要だ。「Blackbird」は、ギターと歌を中心にした簡潔な作りで、アルバムの中に一度空気を抜くような役割を持っている。「Julia」も同様に、音数を抑えた構成の中で歌の輪郭がはっきり見える。こうした曲が入ることで、ホワイト・アルバムは単なる“荒い作品”ではなく、個々の持ち味を並べた記録として聴こえてくる。

当時の評価と、その後の見られ方

発売当時から評価は一枚岩ではなかった。曲数が多く、作風の幅も広いため、統一感のあるアルバムを期待すると戸惑いも出やすい。一方で、後年になるほど、ロックの定型を壊す実験性や、メンバーそれぞれの作家性がそのまま出た点が評価されるようになった。1960年代後半のロックが、シングル中心の発想からアルバム単位の表現へ移っていく流れの中でも、この作品はかなり象徴的な位置にある。

同時代の英国ロックと比べても、ビートルズのこの時期は単なるポップの延長では収まらない。ローリング・ストーンズやザ・フーが荒々しさを強めていた時期だが、ビートルズはそこに加えて、構成のばらけ方や録音手法の多様さまで含めて提示している。『The Beatles』は、その後のソロ活動を見据えたような分岐点でもあり、バンドの終わりに向かう空気と、まだ曲を作り続ける力の両方が同居した作品だといえる。

トラックリスト

  1. A1 Back In The U.S.S.R.
  2. A2 Dear Prudence
  3. A3 Glass Onion
  4. A4 Ob-La-Di, Ob-La-Da
  5. A5 Wild Honey Pie
  6. A6 The Continuing Story Of Bungalow Bill
  7. A7 While My Guitar Gently Weeps
  8. A8 Happiness Is A Warm Gun
  9. B1 Martha My Dear
  10. B2 I'm So Tired
  11. B3 Blackbird
  12. B4 Piggies
  13. B5 Rocky Raccoon
  14. B6 Don't Pass Me By
  15. B7 Why Don't We Do It In The Road
  16. B8 I Will
  17. B9 Julia
  18. C1 Birthday
  19. C2 Yer Blues
  20. C3 Mother Nature's Son
  21. C4 Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey
  22. C5 Sexy Sadie
  23. C6 Helter Skelter
  24. C7 Long, Long, Long
  25. D1 Revolution 1
  26. D2 Honey Pie
  27. D3 Savoy Truffle
  28. D4 Cry, Baby, Cry
  29. D5 Revolution 9
  30. D6 Good Night

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