The Cars - The Cars (1978)
The Cars『The Cars』
1978年に登場したThe Carsのデビュー・アルバム。リック・オケイセック、ベンジャミン・オール、エリオット・イーストン、グレッグ・ホークス、デヴィッド・ロビンソンの5人が、ロイ・トーマス・ベイカーをプロデューサーに迎え、ロンドンのAIRスタジオで録音した。曲はすべてリック・オケイセックの作で、「Moving In Stereo」だけはグレッグ・ホークスとの共作。ベンジャミン・オールが「Just What I Needed」「Bye Bye Love」「Moving In Stereo」「All Mixed Up」でリード・ヴォーカルを取っている。
制作背景・エピソード
バンドは1976年にボストンで結成され、1977年初めに録ったデモが「Just What I Needed」と「My Best Friend's Girl」につながった。ボストンのDJ、マクサン・サルトーリがそのデモを何度もラジオで流したことで注目が集まり、AristaとElektraが獲得を争ったという。最終的にElektraが選ばれたのは、当時ニュー・ウェイヴ系のアーティストが少なく、自分たちが目立てると考えたからだった。
録音は1978年2月、ロンドンのAIRスタジオで行われ、約2週間で仕上げられたとされる。制作にはクイーンなどを手がけたロイ・トーマス・ベイカーが参加し、当時最新のスタジオ技術がふんだんに使われた。オケイセックの歌詞には皮肉やアイロニーが効いている。グレッグ・ホークスは、バンドはもともとストレートなロックをやろうとしていたのに、結果として「もっとアート寄りのもの」になったと振り返っている。
ジャケットにはロシア出身の詩人で歌手でもあるナタリア・メドヴェージェワの写真が使われたが、このデザインはバンドではなくレコード会社が決めたものだった。メンバーの何人かは気に入っていなかったという。デヴィッド・ロビンソンが考えた別案は、インナー・スリーヴに使われている。
時代の文脈
『The Cars』は1978年6月6日に発売され、翌1979年3月にはBillboard 200で最高18位に達し、139週にわたってチャートにとどまった。1979年の年間チャートでは4位に入り、アメリカで6×プラチナに認定されている。「Just What I Needed」は全米27位・全英17位、「My Best Friend's Girl」は全米35位・全英3位、「Good Times Roll」は全米41位まで到達している。さらに「You're All I've Got Tonight」「Bye Bye Love」「Moving In Stereo」もラジオで人気を集めた。
発売当時、Rolling StoneのKit Rachlisはポップな曲を評価しつつも、アート寄りの方向やベイカーの磨き上げたサウンドに頼る部分では弱くなると書いている。ロバート・クリストガウはB+評価を与えた。
後世への影響
本作はRolling Stoneの「史上最高のアルバム500」で、2003年版282位、2012年版284位、2020年版353位に入っている。2024年4月16日にはアメリカ議会図書館の国家録音登録簿にも加えられた。1999年のリマスター盤には、ライヴとデモを収めたボーナス・ディスクが付いている。
AllMusicのGreg Pratoは後年のレビューで、本作を「正真正銘のロックの傑作」と評している。
トラックリスト
- A1 Good Times Roll 3:44
- A2 My Best Friend's Girl 3:44
- A3 Just What I Needed 3:44
- A4 I'm In Touch With Your World 3:31
- A5 Don't Cha Stop 3:01
- B1 You're All I've Got Tonight 4:13
- B2 Bye Bye Love 4:14
- B3 Moving In Stereo 5:15
- B4 All Mixed Up 4:14