Violent Femmes - Violent Femmes (1983)
Violent Femmes 1983

Violent Femmes - Violent Femmes (1983)

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Violent Femmes『Violent Femmes』(1983) レビュー

Violent Femmesのデビュー・アルバム『Violent Femmes』は、1983年4月に登場した作品で、のちにこのバンドを代表する存在になった一枚だ。ミルウォーキー出身の3人組による初期衝動が、そのままパッケージされたような内容で、アコースティック主体の編成なのに、演奏の切迫感はかなり強い。ロック、インディー・ロック、オルタナティヴ・ロック、ポストパンクの文脈で語られることが多いが、実際に聴くと、どの棚にもきれいに収まりきらない独特の鳴り方をしている。

このUK盤はRough TradeのROUGH 55。発売当時の独立系レーベルらしい流通の空気も含んだリリースで、アメリカのSlash Records名義の作品が、イギリスではRough Trade経由で広がっていった流れが見える。録音は1982年7月、ウィスコンシン州レイク・ジェネバのCastle Recording Companyで行われた。内袋には歌詞が印刷され、曲作りの輪郭がそのまま読める仕様になっている。

バンドの出発点としての位置づけ

Violent Femmesは、ベース/マルチ奏者のBrian RitchieとドラマーのVictor DeLorenzoを中心に始まり、1981年にGordon Ganoが加わって現在知られる形になった。もともとライブで鍛えたというより、街頭で演奏しながら曲を磨いていったバンドで、その粗さがこのデビュー作にもはっきり残っている。後年の彼らは長く活動を続けるが、この1枚はその出発点として、いちばん輪郭がはっきりした記録でもある。

制作面では、資金が潤沢だったわけではなく、Victor DeLorenzoの父親から借りた1万ドルで録音したことが知られている。そうした事情もあってか、音は必要以上に飾られていない。ギターは乾いていて、リズムは軽いのに落ち着かず、Gordon Ganoの歌は時に鼻先で笑うような調子を含む。その組み合わせが、このアルバムの特徴になっている。

「Blister in the Sun」——アルバムを象徴する入口

代表曲としてまず挙がるのは「Blister in the Sun」だろう。後年になって広く知られるようになった曲だが、アルバムの1曲目として置かれていることで、作品全体の性格が最初の数秒で伝わる。テンポは速すぎず、演奏はシンプルだが、リズムの刻み方とボーカルの言い回しが妙に引っかかる。アコースティック・ギター中心なのに、軽快さよりも神経の張りつめ方が前に出るところが面白い。

この曲は、のちのオルタナティヴ・ロックの文脈で何度も参照された。90年代に入ってからの口コミ的な広がりもあって、Violent Femmesを知らない層にも届いた代表曲になったが、元の音像はかなり素朴だ。派手な録音処理がないぶん、フレーズの反復や歌詞の切れ味がそのまま残る。

「Kiss Off」——皮肉と緊張感の同居

「Kiss Off」も、このアルバムを語るうえで外しにくい曲だ。タイトルの時点で挑発的だが、実際の演奏は荒っぽいというより、感情の置き場が定まらない感じに近い。コーラスの反復は覚えやすく、しかし内容は単純なカタルシスに回収されない。Ganoの書く歌詞は、若さゆえの反発だけでなく、内向きの苛立ちも抱え込んでいて、その曖昧さが曲の持ち味になっている。

この曲では、バンドの“演奏を整えすぎない”姿勢がよく出ている。音数は多くないのに、空白が気にならない。むしろ、その隙間が歌の語気を目立たせる。シンプルな編成でここまで持たせるのは、かなりこのバンドらしい作法だと思える。

「Add It Up」「Gone Daddy Gone」——曲の幅を示す2曲

「Add It Up」は、アルバム後半で勢いを作る曲のひとつだ。ビートの推進力が前面に出て、歌の苛立ちもはっきりする。Violent Femmesの楽曲は、アコースティック中心でもおとなしくならないが、この曲ではその性格がよく出ている。ラフな演奏のまま押し切る感じではなく、言葉の詰め込み方と反復で熱量を作るタイプだ。

「Gone Daddy Gone」は、後年カバーでも知られることになる曲で、アルバムの中でもやや異質な存在感がある。リズムの置き方が独特で、単なるフォーク寄りのロックでは終わらない。ヴァイブのような響きが加わることで、音の輪郭が少し変わり、Violent Femmesの間口の広さが見える。デビュー作の時点で、すでにこのバンドが一筋縄ではいかないことが分かる曲でもある。

作品全体の印象

『Violent Femmes』は、発売直後に大ヒットしたタイプのアルバムではなく、時間をかけて評価が広がった作品として知られている。のちにプラチナ認定を受け、バンド最大の売り上げ作にもなった。初期のオルタナティヴ・ロックや、フォーク・パンク的な感触を持つ作品群を語るとき、しばしば原点のひとつとして挙げられるのも納得しやすい。

聴きどころは、派手さではなく、編成の少なさがそのまま曲の緊張感に変わっている点にある。アコースティックだから柔らかい、という単純な話ではなく、むしろ音が少ないぶん言葉とリズムが前に出る。そうした作りが、今聴いても古びにくい理由のひとつだろう。Rough Trade盤としてのこの1983年UKリリースも、当時の独立系ロックの空気をよく伝える一枚になっている。

トラックリスト

  1. A1 Blister In The Sun 2:23
  2. A2 Kiss Off 2:53
  3. A3 Please Do Not Go 4:15
  4. A4 Add It Up 4:44
  5. A5 Confessions 5:27
  6. B1 Prove My Love 2:37
  7. B2 Promise 2:48
  8. B3 To The Kill 3:59
  9. B4 Gone Daddy Gone 3:03
  10. B5 Good Feeling 3:49

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