Wire Train - Between Two Words (1985)
Wire Train『Between Two Words』――サンフランシスコ発のニュー・ウェイヴ感覚を前面に出した2作目
Wire Trainの『Between Two Words』は、1985年に発表された2作目のスタジオ・アルバム。サンフランシスコで1983年に結成されたオルタナティヴ・ロック・バンドが、前作で示したニュー・ウェイヴ/ネオアコ寄りの持ち味を、もう少し整理された形で押し広げた一枚として位置づけられる。UK & Europe盤はCBSからのリリースで、盤としても1985年当時の空気をそのまま反映した時代の作品になっている。
このアルバムの核にあるのは、ギターのきらめきと、リズムの推進力だと思う。収録曲は派手な一発で押し切るというより、曲ごとの輪郭をきちんと立てながら進む印象で、ニュー・ウェイヴの軽やかさとギターポップ的な抜けのよさが同居している。サンフランシスコのバンドらしく、アメリカ西海岸のバンドにありがちな直線的なロック感だけでなく、英国勢に通じる整理されたアレンジ感も見える作品。
バンドにとっての位置づけ
Wire Trainは1983年結成のバンドで、初期からニュー・ウェイヴの文脈で語られることが多い存在だが、『Between Two Words』ではその輪郭がよりはっきりしている。前作の流れを引き継ぎながら、単なる流行追随ではなく、メロディとギターの組み合わせを軸にしたバンド像を固めていく段階のアルバム、という見方がしやすい。メンバー面ではドラマーのブライアン・マクラウドが初参加となり、制作中にギタリストのカート・ヘルが脱退したため、一部でピーター・マウヌがギターを担当しているのも、この作品の輪郭に影響している要素だろう。
また、この作品はサンフランシスコの415 RecordsとColumbia Recordsの共同リリースとして扱われている。地域色のあるインディー的な動きと、大手レーベルの流通が交わる時期の作品としても興味深い。UK & Europe盤のCBSレーベルは、その国際展開の一端を示すものになっている。
Last Perfect Thing
代表曲としてまず触れたいのが「Last Perfect Thing」。後にベスト盤のタイトルにも使われた曲で、Wire Trainの名前を語るうえで外しにくい存在だ。曲の進行は比較的まっすぐで、ギターの細かなフレーズが前に出るタイプ。派手に転がるというより、一定のテンポを保ちながらフックを積み上げる作りで、80年代中盤のギターバンドらしい手触りがある。
この曲のよさは、メロディのわかりやすさと、バンドの演奏が過度に飾られていない点にあると思う。ニュー・ウェイヴ寄りのバンドに時々ある、冷たさだけが残る感じではなく、曲の芯にちゃんとロックバンドとしての熱がある。ベスト盤のタイトルに採用されたことからも、グループの代表的なイメージを担う曲として扱われてきたことがうかがえる。
Skills of Summer
「Skills of Summer」は、このアルバムの中でもギターの質感がよくわかる曲。The Churchを思わせるという指摘があるのも納得できる部分で、単純なコード進行で押し切るのではなく、音の重なりで空気を作るような場面がある。サイケデリックな要素といっても大げさな展開ではなく、フレーズの反復や響きの残し方にその気配が出ている。
Wire Trainの作品を聴くとき、この曲はバンドが単にポップなだけではないことを示す場面として機能しているように感じる。メロディは明快だが、演奏の置き方には少し余白があり、その余白が曲の温度を調整している。アルバム全体の中でも、ギターポップとサイケロックの接点を確認できる一曲。
God on Our Side
ボブ・ディランのカバー「God on Our Side」も重要な収録曲。原曲の持つ言葉の重さをそのままなぞるのではなく、Wire Trainらしいネオアコ的なアレンジで組み替えている点が見どころになる。カバー曲としては、原曲の骨格を残しつつ、バンドの音色に合わせて輪郭を少し柔らかくしている印象。
この選曲は、当時のWire Trainが単なるニュー・ウェイヴ・バンドではなく、アメリカのロックやフォークの系譜にも目を向けていたことを示している。アルバムの中で浮くというより、むしろ全体の流れに変化を与える役割を持つ曲で、作品の幅を測るうえで外せない存在だろう。
Two Persons
「Two Persons」は、アルバムの中で比較的ストレートにバンドの演奏感が出る曲として耳に残る。曲名どおりの対比や距離感を思わせるが、音の作りはむしろ端正で、リズム隊とギターの噛み合わせが素直に前へ進むタイプ。こうした曲が入ることで、アルバムが単なる実験寄りに傾かず、バンド作品としてのまとまりを保っている。
全体を通して聴くと、『Between Two Words』は目立つ派手さよりも、曲の置き方と演奏のバランスで印象を残すアルバムだとわかる。1985年という時期のニュー・ウェイヴ周辺の空気をまといながらも、ギターポップ寄りの明快さ、サイケデリックな響き、カバー曲の選び方まで含めて、Wire Trainというバンドの輪郭をきちんと見せる内容になっている。付属の歌詞インサートも、当時のアルバムらしい手触りを補強する要素になっている。
UK & Europe盤について
この盤はCBSからのUK & Europeリリースで、CBS 26670のカタログ番号を持つ。オリジナルの1985年作品として扱うのが自然で、同時代のヨーロッパ流通盤らしい仕様になっている。CBSというレーベル名は、80年代の英欧圏ロック/ポップの文脈ではかなりなじみ深く、この作品もそのライン上に置いて見ると、当時のメジャー流通とオルタナティヴ寄りバンドの接点が見えてくる。
Wire Trainの中期以前を知るうえでも、『Between Two Words』は重要な一枚。曲ごとの手触りを追っていくと、バンドがニュー・ウェイヴからギターポップ、そしてアメリカン・ロックの方へ少しずつ視野を広げていく過程が見えてくる作品だ。
トラックリスト
- A1 Last Perfect Thing 3:52
- A2 Skills Of Summer 4:03
- A3 When She Was A Girl 4:27
- A4 God On Our Side 4:29
- A5 Love, Love 3:15
- B1 I Will 4:21
- B2 No Pretties 4:25
- B3 The Ocean 4:05
- B4 Two Persons 2:54
- B5 Home 3:35
動画
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Wire Train - Last Perfect Thing
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Skills of Summer
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When She Was a Girl
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God On Our Side
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Love, Love
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I Will
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No Pretties
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The Ocean
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Two Persons
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Home