Wu-Tang Clan - Enter The Wu-Tang (36 Chambers) (1993)
Wu-Tang Clan『Enter The Wu-Tang (36 Chambers)』について
Wu-Tang Clanの『Enter The Wu-Tang (36 Chambers)』は、1993年に発表されたデビュー作で、ヒップホップ史の中でもよく語られる作品のひとつだ。Staten Island出身の集団として登場したWu-Tang Clanが、RZAを中心に独特のグループ感と荒い質感のサウンドを前面に出したアルバムである。2016年盤は、その名盤をあらためて手に取れる再発盤として位置づけられる。
作品の位置づけ
このアルバムは、Wu-Tang Clanにとって最初のフルアルバムであり、グループの存在感を一気に広げた代表作だ。以後のソロ活動へつながる入口でもあり、メンバーそれぞれの個性がはっきり見える出発点でもある。9人編成のクルーが一枚の作品の中でまとまって動く感じが、この時点ですでに強い。
同時代のヒップホップの中でも、東海岸のハードな作り込みと、サンプリングの切り方、声のぶつけ合いが目立つタイプの作品として知られている。NasやMobb Deep、Gang Starrのような90年代前半のニューヨーク勢と並べて語られることも多いが、Wu-Tang Clanはその中でも集団としての押し出しがかなり強い。
サウンドと聴きどころ
ビートは全体に硬く、乾いた手触りがある。RZAのプロダクションは、きれいに整えるというより、切れ味のある断片を積み重ねていく作りで、声の圧と相まってかなり前に出る。ブーム・バップの骨格がはっきりしていて、ハードコア・ヒップホップとしての輪郭も見えやすい。
聴いていると、各メンバーのラップの性格差がそのまま曲の推進力になっている。Method Manの抜けのよさ、RaekwonやGhostface Killahの言葉数の多さ、GZAの硬質な語り口など、役割分担が明確だ。グループ作品でありながら、ひとりひとりの顔が立つ作りになっている。
代表曲について
この作品を語るうえでは、「Protect Ya Neck」と「C.R.E.A.M.」が外せない。「Protect Ya Neck」はWu-Tang Clanの初期衝動をそのまま切り取ったような曲で、複数のMCが次々とマイクを回す構成が印象に残る。「C.R.E.A.M.」は、後年まで広く知られる代表曲で、金銭と現実の関係を扱った内容が強い。
「Method Man」も人気の高い一曲で、アルバム内でもフックの分かりやすさが目立つ。こうした曲があることで、アルバム全体の荒さの中に、耳に残る入口がいくつも置かれている。
2016年盤について
この盤は2016年のヨーロッパ盤で、レーベルはRCA。オリジナルの1993年盤からかなり後年の再発であり、作品そのものは1993年の内容をそのまま受け継ぐ。盤としては、当時のオリジナルを追うというより、後年の流通形態で入手しやすくなった版と見るのが自然だ。
再発盤のため、作品の本質は初出時のアルバムにある。ジャケット、曲順、収録内容を含めて、Wu-Tang Clanの初期像を確認できる一枚として扱われることが多い。
まとめ
『Enter The Wu-Tang (36 Chambers)』は、Wu-Tang Clanの始まりを示すデビュー作であり、90年代ヒップホップの重要作として位置づけられるアルバムだ。集団の勢い、RZAの硬質なビート、各メンバーの個性がぶつかり合う構成が特徴で、代表曲も多い。2016年のRCA盤は、その作品をあらためて手に取るための再発盤として見てよさそうだ。
トラックリスト
- Shaolin Sword 29:19
- A1 Bring Da Ruckus 4:10
- A2 Shame On A Nigga 2:57
- A3 Clan In Da Front 4:33
- A4 Wu-Tang: 7th Chamber 6:05
- A5 Can It Be All So Simple 4:46
- A6 Protect Ya Neck (Intermission) 6:48
- Wu-Tang Sword 28:53
- B1 Da Mystery Of Chessboxin' 4:48
- B2 Wu-Tang Clan Ain't Nuthing Ta F' Wit 3:36
- B3 C.R.E.A.M. 4:12
- B4 Method Man 5:50
- B5 Tearz 4:17
- B6 Wu-Tang: 7th Chamber - Part II 5:08