Alberto Camerini - Comici Cosmetici (1978)
Alberto Camerini 1978

Alberto Camerini - Comici Cosmetici (1978)

Rock Pop Synth-pop Alternative Rock Punk

Alberto Camerini『Comici Cosmetici』(1978)

Alberto Cameriniの『Comici Cosmetici』は、1978年にイタリアのCramps Recordsから出たアルバムで、彼の3作目にあたる作品だ。シンガーソングライター、ギタリスト、そしてイタリア演劇の文脈にもつながる表現者として知られるカメリーニが、ロックやポップの枠の中で、自分のキャラクターと演出を前面に押し出し始めた時期の重要作として位置づけられている。のちに「Tanz Bambolina」や「Rock 'n' Roll Robot」で知られることになる、イタリアの先駆的なシンセポップ/ニューウェーブの感覚へ向かう前段階としても、かなり見通しのよい一枚だ。

このアルバムは、単なる曲の寄せ集めというより、クラウン「Neurox」の物語を軸にしたコンセプト作として語られることが多い。録音はCarimateのStone Castle Studiosで行われ、Shel Shapiroがプロデュースを担当した。演奏面ではWalter Calloni、Paolo Donnarumma、Aldo Banfi、Giorgio Azzoliniらが参加している。Cramps Recordsというレーベル自体も、1970年代イタリアの前衛的な空気を象徴する存在で、そうした環境の中で本作が作られたことは大きい。ロック、パンク、フォークの要素が混ざるという説明もあるが、音の中心には、カメリーニ自身の視覚的なキャラクター作りと、舞台的な身振りがある。

作品の位置づけ

『Comici Cosmetici』は、カメリーニにとって「演奏する歌手」から「像を作る表現者」へと重心が移っていく局面の記録として読める。後年の彼は、アルレッキーノやコメディア・デッラルテ的なイメージを強く打ち出していくが、その感覚はこの時点ですでに見えている。1979年2月18日の『Discoring』で収録曲「Macondo」を披露した際にも、現代のシンガーソングライターを“現代のコメディア・デッラルテの登場人物”と語っていたというエピソードがあり、本作がその発想の橋渡し役だったことがうかがえる。

同時代のイタリアの文脈で見ると、これはパンク以前の空気を完全に無視した作品ではない。後年の回顧では、イタリアでかなり早い段階からパンクを取り込んだ作品のひとつとして扱われている。とはいえ、英米のパンクをそのままなぞるのではなく、イタリア語の語感、舞台的な人物像、ポップな見せ方へと接続している点がカメリーニらしいところだ。イタリアのニューウェーブやアート寄りのポップを考えるときに、外せない位置にあるアルバムだと思う。

収録曲の聴きどころ

「Divo divo」は、このアルバムを代表する曲としてよく挙げられる。タイトルからしてすでに“スター”や“偶像”を戯画化する視点があり、曲の運びも、ただ勢いで押すのではなく、言葉の置き方と身振りの強さで聴かせるタイプだ。後年の回顧で「イタリアで早い段階からパンクを取り入れた作品」とされる際にも、この曲は中心的な例として扱われることが多い。攻撃性そのものより、キャラクターを先に立たせる作りが印象に残る。

「Poliziotto per favore」も重要曲だ。タイトルの時点で社会的な視線を含みつつ、曲は硬直したプロテスト一辺倒ではなく、演劇的な語り口で進んでいく。ここでのカメリーニは、ロックの緊張感とポップな聞きやすさの間を行き来しながら、人物像を立ち上げる。Crampsのカタログにある前衛性と、一般的な歌ものの輪郭が、無理なく同居しているのが面白いところだ。

タイトル曲「Comici cosmetici」も外せない。アルバム全体の方向性をそのまま示すような曲で、コメディ、化粧、仮面、見せることと隠すこと、といった要素が一続きになっている。カメリーニの作品では、音楽そのものだけでなく、歌う人物の設定や衣装感覚まで含めて一つの作品になっているが、この曲はその性格がかなりはっきり出ている。後の「Arlecchino」的な自己演出を知っていると、ここにその原型が見えてくる。

「Macondo」は、アルバムの中でも少し視界を広げる曲だ。1979年の『Discoring』で彼自身が披露したことでも知られていて、単なるアルバム収録曲以上の意味を持つ。タイトルが示す通り、現実から少し離れた場所を思わせるが、音の作りは浮ついていない。むしろ、メロディと語りのバランスで、カメリーニがどこを見ているのかを伝えるタイプの曲だ。

音の印象と時代性

実際に聴くと、このアルバムは派手なロック・アルバムというより、言葉とキャラクターの運びが前に出る作りだと感じる。ギター主体の骨格の上に、時代らしいシンセや鍵盤の色が入り、そこにシアトリカルな歌い方が重なる。音の密度は過剰ではないが、曲ごとに表情が変わるので、一本調子にはならない。ロック、パンク、フォークの要素が混ざるという説明はあるものの、聴感としては、まず「誰がどう演じているか」が先に立つ。

商業的には大ヒット作ではなかったようだが、1979年5月12日のイタリア・アルバムチャートで49位、14週チャートイン、最高41位という記録が残っている。大衆的な爆発よりも、独自のスタイルが少しずつ認知されていったタイプの作品と見てよさそうだ。Cramps Recordsの持つ実験精神と、カメリーニのポップな感覚、その接点にある1978年の一枚として、『Comici Cosmetici』はかなり具体的に当時の空気を伝えている。

まとめ

『Comici Cosmetici』は、Alberto Cameriniのキャリアの中でも、のちのキャラクター性や舞台性を強く押し出す方向へ進む前触れのようなアルバムだ。パンク以後の感覚を取り込みながら、イタリア語の歌、演劇的な身振り、ポップの輪郭をまとめている点に特徴がある。1970年代後半のイタリアで、ロックがどこへ向かっていたのかを知るうえでも、見逃しにくい作品だろう。

トラックリスト

  1. 1ª Parte
  2. A1 Rock Show (Io Per Te) 3:50
  3. A2 Neurox 4:15
  4. A3 Sciocka 3:50
  5. A4 Divo Divo 1:45
  6. A5 Comici Cosmetici 6:15
  7. 2ª Parte
  8. B1 Amore Che Felicità (Anna) 3:08
  9. B2 Macondo 4:51
  10. B3 Poliziotto Per Favore 3:02
  11. B4 Siamo Tanti! 2:51
  12. B5 Ho Bisogno Di Cercarti 4:50

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