Alice In Chains - Alice In Chains (1995)
Alice In Chains『Alice In Chains』(1995) について
Alice In Chainsのセルフタイトル作、通称“Tripod”として知られる1枚。1995年にUS盤としてColumbiaから出た本作は、バンドの重さと陰影がさらに濃くなった時期の記録であり、同時にLayne Staley在籍期の最後のスタジオ・アルバムでもある。Seattle発のグランジという枠に置かれながら、実際にはヘヴィメタル寄りの硬さと、2人の声の絡みを軸にした独特の構成感が前面に出ている作品だ。
作品の位置づけ
1990年の『Facelift』で広く知られ、1992年の『Dirt』で大きく評価を伸ばしたAlice In Chainsは、この1995年作でさらに内向きの重さを深めている。バンド名をそのままタイトルにしたアルバムは、初期から積み上げてきたサウンドの到達点のひとつとして扱われることが多い。実際、曲の並びを追うだけでも、リフ中心の骨太な楽曲、低音の効いたテンポ感、アコースティックの質感を含む曲までが、ひとつの暗い流れの中に収まっている。
制作面では、Jerry Cantrellが自分のソロ用セッションを進める中で、Sean KinneyやLayne Staleyにも声をかけたことがきっかけになったという経緯が知られている。結果として“ソロの延長”ではなく、バンドとして再び集まった形でまとまった作品になった。1995年当時のメンバーの状況も含め、制作自体が緊張感を帯びたものだったことは、このアルバムの音にもそのまま残っている。
サウンドと聴きどころ
本作の中心にあるのは、Cantrellの鋭いギターリフと、Staleyの声の沈み方だ。Alice In Chainsの特徴であるハーモニーはここでも重要で、単なるツインボーカルではなく、曲の輪郭そのものを作る役割を持っている。大きく開くコーラスで押し切るタイプではなく、声が重なることで圧を作る設計。グランジの中でも、NirvanaやPearl Jamよりメタル寄りの質感を好む耳には、より直接的に届く作りになっている。
代表曲としてまず挙がるのは「Grind」だろう。硬いリフと反復で引っ張るこの曲は、アルバムの入口として分かりやすい推進力を持つ。「Again」もシングル曲として存在感があり、メロディの残り方が強い。「Heaven Beside You」はこの作品の中でも比較的広いレンジを感じる曲で、アコースティック寄りの質感が前に出る。「Over Now」は終盤の空気を決める楽曲で、アルバム全体の閉じ方に重さを与えている。
そしてD3「Good Night」では、Jed Lewis & His Orchestraの音源が使用されている。こうした引用が、単なるヘヴィなロック作品に留まらない、少し古い時代の感触を差し込んでいる点も面白い。全体としては派手な展開よりも、音の密度と停滞感の作り方に耳が向くアルバムだ。
リリース時の反応と記録性
LPは1995年10月31日にリリースされ、Billboard 200で初登場1位を記録した。初週売上は18万9千枚とされ、商業的には強い出足だった。評価は一様ではなく、当時のロック批評ではグランジという枠組みそのものの疲れや変化と一緒に語られることも多かった。それでも、全世界で300万枚以上を売り上げたことからも、当時の存在感の大きさははっきりしている。
この盤は、後年の再発盤ではなく1995年のUSオリジナル盤。ColumbiaのC2 67248、ゲートフォールド仕様で、フロントステッカーと2枚の印刷インナーが付く構成になっている。© 1995 Sony Music Entertainment Inc.、℗ 1995 Sony Music Entertainment Inc.のクレジットも入り、90年代半ばのメジャー・ロック作品らしいパッケージングだ。
同時代との距離感
この頃のシアトル周辺のバンド群は、初期の勢いから少しずつ別の段階へ移っていた。Alice In Chainsはその中でも、オルタナティヴ・ロックの広がりに完全には溶けず、重いリフと陰のある旋律を保ったまま進んだ側にいる。SoundgardenやMudhoneyと比べても、よりメタルの硬質さが強く、同時にポップな抜けを抑えたまま成立しているのが特徴だ。
結果として『Alice In Chains』は、90年代グランジの一枚としてだけでなく、バンドの最後の局面を刻んだ記録としても読める。音は厚く、曲は粘り、声は沈む。そうした要素がまとまったこの作品は、Alice In Chainsというバンドの輪郭を最もはっきり残したアルバムのひとつになっている。
トラックリスト
- A1 Grind 4:44
- A2 Brush Away 3:22
- A3 Sludge Factory 7:12
- B1 Heaven Beside You 5:27
- B2 Head Creeps 6:28
- B3 Again 4:05
- C1 Shame In You 5:35
- C2 God Am 4:08
- C3 So Close 2:45
- D1 Nothin' Song 5:40
- D2 Frogs 8:18
- D3 Over Now 7:03