Mudhoney - Every Good Boy Deserves Fudge (1991)
Mudhoney 1991

Mudhoney - Every Good Boy Deserves Fudge (1991)

Rock Alternative Rock Grunge

Mudhoney『Every Good Boy Deserves Fudge』について

1991年にSub Popから出たMudhoneyの2作目『Every Good Boy Deserves Fudge』は、シアトルのグランジ・シーンを語るうえで外せない1枚だ。前作『Mudhoney』で見せた荒さをそのまま引き継ぎつつ、曲の輪郭は少しだけ整理されている。とはいえ、勢い任せのロックでは終わらず、ノイズの量、テンポの揺れ、歌の投げ方まで含めて、バンドの癖がはっきり残っているアルバムになっている。

バンドの立ち位置と当時の空気

Mudhoneyは、Green River解散後にMark ArmとSteve Turnerを中心に結成されたシアトルのバンドで、1988年の始動。Sub Popの初期を象徴する存在でもある。NirvanaやSoundgarden、Pearl Jamのように大きく広く知られるタイプではないが、初期90年代グランジの芯にいたグループとして扱われることが多い。『Every Good Boy Deserves Fudge』は、その中でもメジャー契約の話が動く時期に録られていて、バンドがどこに向かうかを決める節目の作品として見られている。

制作は春のEgg Studiosで、Conrad Unoの8トラック機材による録音。事前にJack EndinoとMusic Source Studioで5曲を24トラック録音したものの、バンド側が「小綺麗すぎる」と判断してお蔵入りにした、という経緯が残っている。結果として選ばれたのが、より粗さの残る8トラック録音だった。Mudhoneyらしい判断で、音のまとまりよりも、演奏の摩擦やざらつきが前に出た仕上がりになっている。

タイトルと作品の性格

タイトルは、音楽理論の語呂合わせ「Every Good Boy Does Fine」をもじったもの。元の言い回しを少しずらしただけだが、そこにバンドの自嘲気味なユーモアが出ている。真面目に見せるより、少しふざけた感じを残すあたりがMudhoneyらしい。アルバム全体も、その感覚に沿っている。直線的に押す曲があっても、歌詞や歌い方には皮肉が混ざり、単純な怒り一辺倒にはなっていない。

この作品でよく知られる曲としては「Let It Slide」がある。アルバムの中でも比較的知られた曲で、後にシングルとしても印象を残した。ほかにも「Thorn」「Broken Hands」など、短い尺の中でノイズとフックを行き来する曲が並ぶ。ギターは鋭いが、音像は意外と密で、ベースとドラムが前へ押し出すたびに、歌がその上で少し崩れていく。この崩れ方が聴きどころになっている。

サウンドの印象

実際に聴くと、まず感じるのは音の近さだ。スタジオの広がりを見せるより、演奏の手触りをそのまま置いたような鳴り。Steve Turnerのギターはリフの切れ味よりも、ノイズ混じりの押し出しで存在感を作っている。Mark Armの歌も、整ったボーカルというより、言葉を投げつけるような発声が中心で、そこにMudhoneyの特有の気だるさが乗る。速い曲でも、ただ速いだけで終わらず、少し遅れてくるような間が残るのが面白い。

録音が8トラックということもあり、音数は多くないが、その分、各パートの輪郭が見えやすい。派手なダブリングや過剰な装飾はなく、バンドがその場で鳴らした空気を閉じ込めた感じが強い。グランジという言葉が広く流通する前後の時期にあって、後の大きな成功作群とは別の質感を持つアルバムとして受け取られてきた。

同時代の文脈

1991年のUSオルタナティヴ・ロックは、シアトル勢を中心に大きく動いていた時期だが、Mudhoneyはその中でも早い段階からSub Popを支えていた。UKでは本作がアルバムチャート34位を記録し、その後にNirvana『Nevermind』が同じチャートに現れる流れも知られている。グランジが世界的に拡大する直前、あるいはその入口にあった時期の空気が、この盤にはそのまま残っている。

売上面でも、本作はSub Popの経営を支えた作品として記録されている。シーンを作ったレーベルと、その初期を代表するバンドが、まだ大きくなりきる前のタイミングで出した重要作。Mudhoneyのディスコグラフィーの中では、荒さと曲のまとまりがちょうどせめぎ合っている位置にある一枚だ。

まとめ

『Every Good Boy Deserves Fudge』は、Mudhoneyの自意識、ユーモア、ノイズ、そしてシアトルの現場感がまとまった1991年の作品だ。メジャーの誘いを前にしながらも、最終的に選んだのは、きれいに整えることではなく、粗さの残る録音だった。その判断がアルバム全体の性格を決めている。グランジの黎明期を知るうえでも、Mudhoneyというバンドの芯を確認するうえでも、かなり重要な位置づけの作品として残っている。

トラックリスト

  1. A1 Generation Genocide
  2. A2 Let It Slide
  3. A3 Good Enough
  4. A4 Something So Clear
  5. A5 Thorn
  6. A6 Into The Drink
  7. A7 Broken Hands
  8. B1 Who You Drivin' Now?
  9. B2 Move Out
  10. B3 Shoot The Moon
  11. B4 Fuzz Gun '91
  12. B5 Pokin' Around
  13. B6 Don't Fade IV
  14. B7 Check-Out Time

動画プレイリスト

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