Def Leppard - Hysteria (1987)
Def Leppard『Hysteria』について
Def Leppardの『Hysteria』は、1987年にUKのBludgeon Riffolaから出た4作目のスタジオ・アルバムで、バンドの名前を一気に大きくした代表作として知られている。Sheffield出身の英ロック・バンドという出自を持つ彼らが、ハードロックとアリーナ・ロックの文法を、当時のメインストリームに届く形へ押し広げた作品だ。全米・全英でアルバム・チャート1位を獲得し、シングルも連続してヒットしていることからも、この作品がバンドの中で特別な位置にあることはわかりやすい。
制作には長い時間がかかり、仕上がりもかなり緻密だ。プロデュースは前作『Pyromania』に続いてRobert John “Mutt” Lange。録音や編集を重ねながら、コーラス、ギター、リズムの輪郭をきっちり整えた作りになっている。80年代後半のハードロックの中でも、勢いだけで押し切るタイプではなく、音の積み上げ方そのものに重心があるアルバムとして聴こえる。
作品の位置づけ
『Hysteria』は、Def Leppardにとって商業的な到達点のひとつであり、同時にバンドの録音美学が最もはっきり出た作品でもある。メンバーにはPhil Collen、Joe Elliott、Rick Savage、Pete Willis、Steve Clark、Rick Allen、Vivian Campbell、Tony Kenningの名が挙がるが、アルバムの中心となる時期のDef Leppardは、Rick Allenの事故後の再構築を経て、より精密なアンサンブルへ向かっていった。ドラマーが左腕を失った後も活動を続けたことはよく知られていて、この作品にもその経験が制作の背景として重く残っている。
同時代のハードロックやアリーナ・ロックと比べると、『Hysteria』はラフさよりも整音、即興性よりも構成の明確さが前に出る。Mötley Crüeのような粗い攻撃性とも、Bon Joviのような親しみやすいロック・アンセムとも少し違い、細部を磨き込んだうえで大衆的なフックを置くタイプ。そうした作りが、80年代の大型ロック作品の中でも独特の存在感につながっている。
注目曲「Pour Some Sugar on Me」
このアルバムを語るうえで外せないのが「Pour Some Sugar on Me」だ。後からシングルとして大きく広がった曲だが、アルバムの中でも最も耳に残りやすい一曲で、リフ、掛け声、サビの持ち上がり方が非常にわかりやすい。ハードロックの骨格を保ちながら、ポップ・ソングとしての反復の強さを前面に出していて、ライブでの反応が想像しやすい作りになっている。
実際に聴くと、音数は多いのに隙間の使い方が明確で、ギターの厚みとボーカルの押し出しがぶつからない。シングルとしての完成度は高く、アルバム全体の方向性を象徴する曲でもある。Def Leppardがこの時期に目指していた「ロックの大きさ」と「メロディの明瞭さ」の両立が、そのまま形になったような一曲だ。
注目曲「Love Bites」
全米1位を記録した「Love Bites」は、『Hysteria』の中でも特にバラード寄りの曲として知られる。とはいえ、単なる静かな曲ではなく、コーラスの重ね方やギターの配置にかなり手が入っていて、アルバム全体の制作方針がそのまま反映されている。感情を前に出すというより、音の層を積み上げることで曲の大きさを作っている印象が強い。
この曲がヒットしたことは、Def Leppardがハードロック・バンドでありながら、ラジオやチャートの文法にもきちんと乗っていたことを示している。『Hysteria』が単なる派手なロック盤ではなく、複数の入口を持つアルバムとして受け止められた背景には、この曲の存在が大きい。
タイトル曲「Hysteria」
タイトル曲「Hysteria」は、アルバムの中でも特に音の広がりがはっきりしている。テンポを過度に上げず、ボーカルとコーラスの重なりで引っ張る構成で、派手さよりも持続する推進力がある。曲名の印象よりも実際の音は整理されていて、アルバム全体の精密さを象徴するような位置にある。
この曲もまた、80年代のロックが単純なギター・ヒーロー型から、スタジオ作品としての完成度を競う方向へ進んでいたことを示す例として聴ける。Def Leppardがこの時期に持っていた強みは、ライブ感を残しながらも、録音物としての説得力をかなり高いレベルで保っていた点にある。
UK盤としてのポイント
このUK盤は、印刷されたインナー・スリーブ付きで、クレジット、写真、短い自伝的な文章が収められている仕様だ。盤面のランアウトには、A面がJack Adamsによるカット、B面にMasterdiskのUSA stamperを使ったものがあり、UKコピーの中にも両面Jack Adams、両面Masterdisk、Dennis Blackhamカットの存在があるとされる。ランアウトのうち「JA」は手書きで、それ以外はスタンプという点も特徴的だ。
こうしたプレス違いは、同じ『Hysteria』でも細部の見え方に差が出る要素だが、作品そのものの核は変わらない。1987年という年に、Def Leppardが到達した録音技術と作曲のバランスが、そのまま一枚に固定されたアルバムとして受け取れる。
まとめ
『Hysteria』は、Def Leppardの代表作であるだけでなく、80年代後半のハードロックがどこまで大きく、どこまで整った音になり得るかを示した作品でもある。制作の長期化、Rick Allenの事故後の再編、Mutt Langeによる徹底した作り込み、そして「Pour Some Sugar on Me」「Love Bites」「Hysteria」といったヒット曲の連打。どの要素を取っても、このアルバムがバンドの歴史の中で特別な位置にあることは見えやすい。
音の厚み、サビの強さ、曲ごとの役割分担がはっきりした一枚で、ハードロックとアリーナ・ロックの交差点に置くと輪郭がつかみやすい。Def Leppardが2019年にロックの殿堂入りを果たしたことを思い返しても、『Hysteria』はその評価の中心にある作品と見てよさそうだ。
トラックリスト
- A1 Women
- A2 Rocket
- A3 Animal
- A4 Love Bites
- A5 Pour Some Sugar On Me
- A6 Armageddon It
- B1 Gods Of War
- B2 Don't Shoot Shotgun
- B3 Run Riot
- B4 Hysteria
- B5 Excitable
- B6 Love And Affection