Dire Straits - Dire Straits (1978)
Dire Straits / Dire Straits(1978年、日本盤 Vertigo RJ-7541)
Dire Straitsのデビュー作『Dire Straits』は、1978年に登場した初期の決定打のようなアルバムだ。派手な装飾を前に出すタイプではなく、演奏の輪郭、曲の運び、ギターとリズム隊の噛み合いで聴かせる内容で、のちの大規模な成功をすでに予感させる一枚になっている。バンドは1977年にマーク・ノップラー、デヴィッド・ノップラー、ジョン・イルズリー、ピック・ウィザースによって結成され、この作品はその立ち上がりをそのまま刻んだ初期ドキュメントでもある。
録音は1978年2月、ロンドンのBasing Street Studiosで行われ、プロデュースはMuff Winwood。バンドの初期活動で培われたライブ感が、そのままアルバムの芯になっている。音数を詰め込みすぎず、各パートがきっちり役割を持って動く作りで、当時の英国ロックの中でもかなり整理された印象を受ける。パンク以後の空気の中で、速さや荒さではなく、演奏の確かさで勝負しているのがこの作品の大きな特徴だ。
アルバム全体の印象
この時期のDire Straitsは、後年の大きなスケール感よりも、4人編成の呼吸の合ったアンサンブルが前面に出ている。マーク・ノップラーの歌は強く押し出すというより、語るように進む場面が多く、そこに細いけれど明瞭なギターが乗る。派手なソロを連発するのではなく、フレーズの置き方で曲を引っ張るタイプで、アルバム全体に余白が残る。その余白が、かえって各曲の構造を見えやすくしている。
同時代の英国ロックと比べると、Dire Straitsはハードロック的な厚みや、ニューウェイヴの切断感とは少し距離がある。むしろ、曲の骨格をしっかり見せる作りは、クラシック・ロック寄りの感触も持ちながら、当時の新しさもある。演奏のうまさを誇示する方向ではなく、必要な音だけで場面を作る姿勢が、デビュー作の時点ですでに固まっている。
「Sultans of Swing」について
このアルバムを語るうえで外せないのが「Sultans of Swing」だ。のちに代表曲として広く知られるこの曲は、無名バンドのデビュー作から出てきたとは思えない完成度で、作品全体の評価を決定づけた存在になっている。ジャズやスウィングを気取るのではなく、ロンドンの小さな現場で演奏するバンドの空気をそのまま切り取ったような楽曲で、歌詞の視点も具体的だ。
演奏面では、マーク・ノップラーのギターが曲の中心を作る。速弾きで押すのではなく、音の置き方と間で引っ張るスタイルがはっきりしていて、イントロの段階で曲の輪郭が立つ。リズム隊もそこにきっちり乗っていて、全体が軽く転がるように進む。ラジオで広く受け入れられたのも、このわかりやすい構成と、耳に残るギターの運びが大きかったはずだ。
他の収録曲とバンドの輪郭
「Down to the Waterline」や「Water of Love」なども含めて、アルバムはブルースの影を持ちながら、過剰に湿っぽくならないところが面白い。どの曲も、メロディを前に出しすぎず、演奏の流れで聴かせる。特に初期Dire Straitsらしいのは、リフやフレーズが大きく主張しすぎないのに、曲が終わるころにはしっかり印象が残るところだ。
このデビュー作は、のちに『Making Movies』や『Love over Gold』で見せるような長尺志向や構築性よりも、バンドの基本動作をそのまま提示している。つまり、何を強みにするグループなのかが最初から明快だ。派手さより精度、勢いより整合性、という方向性が、ここではかなり素直に出ている。
日本盤とレーベルの存在感
今回の日本盤はVertigoのRJ-7541。Vertigoは70年代のプログレッシブ・ロックとの結びつきで知られるレーベルだが、ここではそうしたイメージに収まりきらない、より端正なギターロック作品を受け止めている。盤には透明感のある仕様があり、初期プレスらしい作りも含めて、1978年当時の空気を感じさせる一枚だ。
総じて『Dire Straits』は、デビュー作でありながら完成度の高い作品として語られやすい。バンドの核になる演奏、マーク・ノップラーの歌とギター、そして「Sultans of Swing」という明確な代表曲。その3点だけでも十分に成立しているが、アルバム全体を通すと、初期Dire Straitsの持っていた控えめな自信のようなものまで見えてくる。大きな音で押し切るのではなく、必要な音をきっちり置いていく。その姿勢が、この作品のいちばん大きな魅力だと思う。
トラックリスト
- A1 Down To The Waterline 4:01
- A2 Water Of Love 5:27
- A3 Setting Me Up 3:20
- A4 Six Blade Knife 4:12
- A5 Southbound Again 2:59
- B1 Sultans Of Swing 5:52
- B2 In The Gallery 6:19
- B3 Wild West End 4:43
- B4 Lions 5:07
動画
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Down To The Waterline
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Water Of Love
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Setting Me Up
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Six Blade Knife
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Southbound Again
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Sultans Of Swing
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In The Gallery
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Dire Straits – Wild West End (1978)
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Lions