Doctor's Cat - Gee Wiz (1984)
Doctor's Cat 1984

Doctor's Cat - Gee Wiz (1984)

Electronic Electro Italo-Disco

Doctor's Cat『Gee Wiz』――イタロ・ディスコとエレクトロの交点にある1984年作

Doctor's Catの『Gee Wiz』は、1984年に登場したイタリア産イタロ・ディスコ/エレクトロ作品だ。リリースはドイツのZYX Records(20 036)で、同レーベルが80年代に積極的に紹介していたヨーロッパのダンス・サウンドの流れにしっかり乗っている。制作面では、Aldo Martinelli、Fabrizio Gatto、Simona Zaniniという、当時のイタロ・ディスコを語るうえで外せない人材が名を連ねており、シングル・ヒットだけでなくアルバム全体としても、シーンの空気をまとめた一枚として位置づけられる作品だ。

Doctor's Catは『Feel The Drive』の印象が強いプロジェクトとして知られるが、この『Gee Wiz』ではその代表曲を含め、ダンスフロア向けの曲が連続して並ぶ構成になっている。A面・B面ともに曲尺は長めで、当時のクラブ志向の作りがはっきりしている。シーケンサー主体の推進力に、シンセ、サックス、生パーカッションが加わることで、無機質に寄りすぎず、ディスコ的な熱量を保っているのが特徴だ。

制作陣とサウンドの輪郭

この作品の核にあるのは、Aldo Martinelliの制作・編曲・ミキシング、Fabrizio Gattoのキーボードとシーケンサー・プログラミング、Simona Zaniniのボーカルという分担だ。Martinelliはメロディと機械的なビートの両方を見せるタイプのプロデューサーで、ここでも曲の推進力とフックの作り方にその手つきが出ている。Zaniniの歌声は、派手に押し出すというより、少し距離を置いた表情で曲に乗る。その温度感が、イタロ・ディスコ特有の直線的なビートと相性がいい。

また、G. Porroのサックス、F. Di Traniのドラム/パーカッションが入ることで、完全なシンセ・ポップでもなく、純粋なディスコでもない、80年代半ばらしい混ざり方になっている。打ち込みの輪郭がはっきりしている一方で、要所に人力のニュアンスが残るため、機械的な反復だけで終わらないところが面白い。

注目曲1:Feel The Drive

『Feel The Drive』は、Doctor's Catを代表する曲としてまず触れておきたい一曲だ。ヨーロッパ各地でヒットしたとされるこの曲は、アルバムの中でも最も知名度が高く、イントロから反復するシーケンスとボーカルの入り方で一気に空気をつかむ。派手な展開で押し切るというより、同じモチーフを少しずつ積み上げていく作りで、ダンスフロアでの持続力が強いタイプのトラックだ。

この曲を聴くと、当時のイタロ・ディスコが持っていた「メロディの分かりやすさ」と「機械的なグルーヴ」の両立がよく見える。後の再評価でも、この曲が単独で取り上げられることが多いのは、その構造がシンプルでありながら印象に残りやすいからだろう。

注目曲2:Theme From Rodeo (incl. William Tell's Ouverture)

『Theme From Rodeo (incl. William Tell's Ouverture)』は、クラシックの「ウィリアム・テル序曲」を取り込んだトラックとして目を引く。レーベル表記でもその旨が明記されており、当時のイタロ・ディスコに見られる引用感覚がよく出ている。原曲のメロディをそのまま重く扱うのではなく、ダンス用の推進力に置き換えていく作りで、アルバムの中でもいちばん遊び心が見えやすい。

この手のクラシック引用は80年代のユーロ・ダンスで珍しくないが、『Gee Wiz』ではそれが単なるネタでは終わらず、アルバム全体の流れの中に自然に収まっている。クラブ向けの実用性と、当時のヨーロッパ・ポップらしい分かりやすさが同居している曲だ。

アルバムとしてのまとまり

収録曲を見ると、『Gee Wiz』『Watch Out』『Crash』『Doctor's Cat Melody』といった長尺のダンス・トラックが並び、アルバムというより現場で機能する楽曲群として組まれている印象が強い。B面の『Crash』は7分を超える展開で、エレクトロ色の強さが前に出る。『Watch Out』はベースラインの押し出しが目立ち、フロア向けの即効性がある。『Doctor's Cat Melody』はタイトル通り、メロディの断片をつなぐような構成で、プロジェクト名を冠した楽曲としても位置づけが分かりやすい。

この時期のイタロ・ディスコは、ミラノを中心にした制作環境と、ドイツのZYXのようなレーベルによる流通が結びついて広がっていった。Doctor's Catもその流れの中にあり、同時代のプロジェクトでいえば、Gino SoccioやKano、あるいは同じくメロディと機械的ビートを結びつける多くのユーロ・ダンス作品と並べて語られる場面が多いタイプだ。

盤の情報と当時の空気

このドイツ盤は、カタログ番号がジャケット表記で20 036、ラベル表記で20.036となっている。ラベルには『Theme From Rodeo』が『William Tell's Ouverture』を含むこと、そして℗ 1984が記されている。マトリクス表記はエッチングで、80年代中盤のヨーロッパ盤らしい作りだ。ZYX Recordsがこの時期に展開していたカラフルなラベル群の一枚として見ても、当時の市場での存在感がうかがえる。

Doctor's Cat『Gee Wiz』は、ヒット曲『Feel The Drive』を軸に、シーケンサー主体のイタロ・ディスコをアルバム単位でまとめた作品だ。派手さだけでなく、制作の分業や楽器の入れ方まで含めて、1984年という年のヨーロッパ・ダンス・ミュージックの輪郭をそのまま閉じ込めたような一枚になっている。

トラックリスト

  1. A1 Gee Wiz 6:24
  2. A2 Feel The Drive 5:50
  3. A3 Watch Out 6:40
  4. B1 Crash 7:11
  5. B2 Doctor's Cat Melody 7:09
  6. B3 Theme From Rodeo 4:06

動画

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Electro"

toast