Tom Browne - Rockin' Radio (1983)
Tom Browne『Rockin' Radio』(1983)について
Tom Browneの『Rockin' Radio』は、1983年にUSのAristaから登場した作品で、ジャズ・ファンクやソウルの文脈に立ちながら、同時代のエレクトロの空気も取り込んだ1枚だ。トランペッター/シンガー/ソングライターとして活動してきたBrowneにとっては、1970年代末から80年代前半にかけてのソロ活動の流れの中に置ける作品で、クラブ寄りの感触と演奏主導のバランスが見えやすい時期の記録でもある。前作までで築いたダンスフロア向きの感覚を引き継ぎつつ、80年代らしい音像へ寄せたアルバム、と捉えると輪郭がつかみやすい。
Tom Browneは1954年生まれ、ニューヨーク・クイーンズ出身のアメリカン・ソウル/ジャズ/ジャズ・ファンク系のアーティストで、ニューヨークのジャズ・シーンに早くから関わってきた人物だ。ソロでは11枚のアルバムを残しており、その中でも広く知られているのが1980年の「Funkin’ for Jamaica」。『Rockin' Radio』は、そうした代表曲で知られるBrowneが、80年代前半の音楽環境の中でどのように自身のスタイルを更新していたかを見るうえで重要な位置にある作品と言えそうだ。
80年代初頭のジャズ・ファンクとエレクトロの接点
この時期のUSのブラック・ミュージックは、ディスコ以後のダンス志向、シンセサイザーの導入、機械的なビート感の強まりが同時に進んでいた。『Rockin' Radio』もその流れの中にあり、ジャズ・ファンクの生演奏感だけでなく、エレクトロやソウルの要素が前面に出やすい時代性を持っている。Tom Browneの作品は、同時代のGeorge DukeやHerbie Hancockのファンク寄りの路線、あるいはカーニバル的な高揚感を持つクラブ・ジャズとも比べられやすいが、本作ではトランペットの存在感が軸として残っている点が特徴的だ。
AristaからのUS盤という点も、この作品の時代感をよく示している。Aristaは1980年代前半にソウル、ポップ、ブラック・コンテンポラリーの幅広い作品を抱えていたレーベルで、当時の音作りの標準線に沿った仕上がりが期待できる環境だった。1983年という年は、アナログR&Bの質感とシンセ主体の新しい質感が並走していた時期で、『Rockin' Radio』もその境目に置かれたアルバムとして聴ける。
代表曲「Rockin' Radio」
タイトル曲「Rockin' Radio」は、本作の性格をそのまま示す中心曲として捉えやすい。ラジオ向けの明快さ、ダンスフロアを意識した推進力、そしてBrowneらしい管楽器のフレーズが同居するタイプの楽曲で、80年代前半のクロスオーバー感がはっきり出ている。ジャズの技巧を前面に押し出すというより、リズムの持続とフックの分かりやすさを優先する作りで、クラブや放送の場を意識した温度がある。
Tom Browneのトランペットは、この曲でも単なる装飾ではなく、曲の輪郭を決める役割を担っている。細かいアドリブで押すというより、短いフレーズを繰り返しながら曲の推進力を支える形で、ソウル寄りのボーカルやグルーヴと噛み合っている印象だ。『Funkin’ for Jamaica』のような強いリフの記憶を持つ人には、その延長線上にある80年代版の更新形として聴こえる可能性が高い。
アルバム全体の聴きどころ
『Rockin' Radio』の魅力は、派手な演奏合戦というより、当時のブラック・ミュージックの機能性に寄った構成にある。リズム隊の粘り、シンセの配置、ブラスの差し込み方が整理されていて、各曲がラジオ・プレイやクラブ・プレイを意識した長さと密度で進む。ジャズ・ファンク盤にありがちな生々しいセッション感というより、プロダクションの整え方に80年代らしさが出ている点が見どころになる。
また、Tom Browneというと「Funkin’ for Jamaica」の印象が強いが、『Rockin' Radio』はその一発のヒットだけではない活動の幅を示す作品としても読める。トランペッターとしてのバックグラウンドを保ちながら、ソウル、ファンク、エレクトロへと寄せていく姿勢が見え、当時のジャズ系プレイヤーがポップ寄りの市場に接近していた流れの中でも位置づけやすい。
同時代との比較で見えるもの
同時代の耳で見ると、Tom Browneは純粋なフュージョンの文脈だけで語るより、ダンス・ミュージックとの接点で捉えたほうが実態に近い。George Bensonのソロ作のような歌心、Herbie Hancockの80年代初頭のファンク化、あるいはLonnie Liston Smith周辺のジャズ寄りソウル感とも比較しやすいが、Browneの場合はトランペットが前に出るぶん、器楽的な輪郭が残る。そこが本作の個性になっている。
1983年のオリジナルUS盤としては、Aristaの当時の標準的なレーベル・デザイン期に属する1枚で、1984年以降の紫黒ラベル時代の前に出た作品でもある。つまり、レーベル面でも80年代初頭のAristaらしさがそのまま載っている。Tom Browneのキャリアの中では、代表曲のイメージを背負いつつ、その後の時代へ向けてサウンドを調整していた時期の記録として見えてくるアルバムだ。
トラックリスト
- A1 Rockin' Radio 6:14
- A2 Crusin' 6:29
- A3 Turn It Up (Come On Y'all) 6:30
- A4 Angeline 4:40
- B1 Brighter Tomorrow 6:18
- B2 Never My Love 4:18
- B3 Mr. Business 5:46
- B4 Feel Like Making Love 4:17
動画
- Rockin' Radio
- Cruisin'
- Turn It Up
- Angeline
- Brighter Tomorrow
- Never My Love
- Mr. Business
- Feel Like Making Love
- Bye Gones (Extended Version)
- Cruisin' (Dub Version)
- Rockin' Radio (12" Special Mix)
- Tom Browne - Rockin' Radio (1983) - A1 - Rockin' Radio
- Tom Browne - Rockin' Radio (1983) - A2 - Crusin'
- Tom Browne - Rockin' Radio (1983) - A3 - Turn It Up (Come On Y'all)
- Tom Browne - Rockin' Radio (1983) - A4 - Angeline