Ihlo - Union (2019)
Ihlo『Union』:ロンドン発の現代型プログレッシブ・メタル、その出発点
Ihloはロンドンを拠点に活動するプログレッシブ・メタル・バンドで、2016年結成。2019年に発表したデビュー・アルバム『Union』で一気に注目を集めた。重さのあるギター、緻密なリズム、電子的な質感、そしてポップ・ソングとしてのフックを同じ曲の中に置く作風がこのバンドの核にある。Kscopeからの2024年盤は、その『Union』をアナログ2LPとして改めて提示したリイシューで、初出時のアルバムに加えて2020年のLive EPから2曲を収録している。
デビュー作としての位置づけ
『Union』はIhloにとって最初のフルレングス作品で、バンドの輪郭をそのまま示した一枚。Bandcampのプログレッシブ・メタル・チャートで上位に入ったことでも知られ、シーン内で早い段階から存在感を持った。TesseracT以降のモダン・プログ・メタルの流れの中にありながら、単なるフォロワーに寄らず、メロディの運びや曲展開の整理の仕方に独自の手つきがある。
演奏はタイトで、各パートの役割がはっきりしている。重いリフで押し切る場面もあれば、シンセや空間処理で音像を広げる場面もあり、曲ごとの温度差が大きい。ボーカルは輪郭の明瞭さを保ちながら、楽器陣の密度に埋もれない位置で進行する。プログレッシブ・メタルの複雑さを持ちながら、歌のフックを前に出す設計が目立つ。
2024年アナログ盤の内容
2024年10月11日にKscopeから出たこの盤は、Ihloにとって初のアナログ化となる再発。2LP仕様で、D面に2023年のProgPower Europe出演時のライブ音源2曲を追加している。リマスターはTesseracTのAcle Kahneyが担当。アルバム本編を現行の音圧感に合わせて整えつつ、ライブ音源を足した構成になっている。
パッケージはシングルのカードボード・ジャケットに、白のインナー・スリーブ2枚という仕様。バンド直販分にはサイン入りの個体もあった。アナログ盤としては、オリジナルのデジタル/CD版とは収録内容が異なり、ライブ2曲の存在が今回の盤の大きな差分になっている。
サウンドの特徴
この作品でまず目につくのは、重さと明瞭さの両立。ギターは低音域をしっかり押さえつつ、リフの輪郭がぼやけない。ドラムは変拍子や細かなアクセントを使いながらも、曲の推進力を保つ。電子音のレイヤーは装飾に留まらず、曲の構造そのものを支える役割を持っている。メタルの硬質さ、エレクトロニカの精密さ、ポップの分かりやすさが、それぞれ独立したまま同居している印象。
聴感上は、ひたすら技巧を見せるタイプではなく、曲の流れを整えることに重点がある。静かな導入から厚いサビへ移る場面、複数のリズムが噛み合う中間部、空気を一度抜いてから再加速する構成など、展開の作り方に手堅さがある。長尺曲でも、要所でメロディの芯が見えるため、全体像を追いやすい。
同時代の文脈
Ihloは、TesseracTやそれに続く英国勢のモダン・プログ・メタルと接点がある。だが『Union』は、単にジェント的な重量感を強めた作品ではない。電子音の扱い、コーラスの置き方、曲の起伏の作り方に、より広いオルタナティブ・ロックやプログ・ポップの感覚が入っている。Kscopeというレーベルの文脈に置くと、伝統的なプログ・ロックの系譜と、現代メタルの制作感覚がつながる位置にある作品だ。
結果として、『Union』はデビュー作でありながら、バンドの方向性がかなり明確に出た一枚になっている。2024年盤では、その骨格を保ったまま、アナログという媒体で聴くためのまとまりと、ライブ音源による現場感が加わった。スタジオ盤の精密さと、実演の熱量が同じパッケージに入った形。
まとめ
『Union』は、Ihloが2019年時点で示した完成度の高いデビュー作であり、2024年のKscope盤ではその内容が2LP仕様で再提示された。モダン・プログ・メタルの文脈にありながら、電子音やポップなメロディを無理なく織り込む構成がこの作品の軸。重さ、精密さ、歌の分かりやすさが並ぶ、ロンドン発の現在形プログレッシブ・メタル作品として整理できる。
トラックリスト
- A1 Union 6:07
- A2 Reanimate 5:31
- A3 Starseeker 7:33
- B1 Hollow 6:58
- B2 Triumph 4:54
- B3 Parhelion 7:26
- C1 Coalescence 15:14
- Live at ProgPower Europe 2023
- D1 In Stasis / Starseeker 9:35
- D2 Hollow 6:57