Mastodon - Marrow Deep (2026)
Mastodon『Marrow Deep』について
アトランタ出身のヘヴィメタル・バンド、Mastodonが2026年に発表したアルバム『Marrow Deep』。Loma Vistaからのリリースで、ダブルLP仕様のデラックス盤として登場した作品だ。トリプル・ゲートフォールドのジャケット、メタリックインクを使ったアートワーク、24×24インチのポスター、8ページの歌詞ブックレットまで付属し、盤面もメタリックシルバーのカラー・ヴァイナル。外装も含めて、作品全体をひとつのパッケージとして組み上げた作りになっている。
Mastodonは2000年結成のバンドで、Bill Kelliher、Troy Sanders、Brann Dailor、Brent Hindsの4人を軸に活動してきた。ヘヴィメタルを土台にしながら、プログレッシブ・メタル寄りの展開や変拍子、長尺構成を取り込み、2000年代以降のメタル・シーンで独自の位置を築いてきた存在だ。『Leviathan』『Blood Mountain』『Crack the Skye』あたりで広く知られるようになったが、その後も作品ごとに音像を更新し続けてきた。そうした流れの中で『Marrow Deep』は、バンドの歴史を踏まえつつ、現在の編成を前面に出した一枚として記録されている。
ブレント・ハインズ不在で制作された初のフルアルバム
この作品の大きなポイントは、結成メンバーだったBrent Hinds不在で作られた初のフルアルバムという点にある。2025年3月にハインズの脱退が発表され、その後バンドは新ギタリストとしてNick Johnstonを迎えた。『Marrow Deep』では、ギターの役割がこれまでとは少し違う形で整理され、Troy SandersとBrann Dailorがヴォーカルの多くを分担している。
収録曲「Your Ghost Again」では、Brann Dailorが「お前の幽霊をまた見た」と歌う場面があり、亡きハインズへの追悼を思わせる要素も含まれている。アルバム全体にも、単なる編成変更の記録というより、バンドの出発点に関わった人物への反応が織り込まれている印象が残る。ゲストとしてRandy Blythe、Joe Duplantier、Neil Fallonらが参加している点も見逃せない。いずれも同時代のヘヴィ/プログ系シーンで存在感の強い名前で、Mastodonが築いてきたネットワークの広さがそのまま表れている。
音楽性と同時代性
本作の基本は、ヘヴィメタルとプログレッシブ・メタルの接点にある。Mastodonはもともと、Sludge MetalやProgressive Metalの文脈で語られることが多く、同系統のバンドとしてはGojira、Baroness、High on Fire、Converge周辺の重さと複雑さを併せ持つバンドたちと並べられてきた。『Marrow Deep』でも、その系譜を引きながら、曲ごとの構成やリフの置き方にバンドらしい癖が残っている。
実際に聴くと、まず耳に残るのは音の層の厚さだ。ギターは単純に重く押し出すだけではなく、フレーズの隙間やコードの切り替えで曲の輪郭を作る。ドラムはBrann Dailorらしい細かな動きが目立ち、リズムの推進力を保ちながら曲の展開を支える。ヴォーカルは一人に固定されず、複数人で分け合うことで、曲ごとの表情が変わる構成になっている。長年のMastodonを知る耳には、この分担の仕方自体が作品の性格を示す要素として映るはずだ。
作品としての位置づけ
『Marrow Deep』は、Mastodonの過去作の延長線上に置ける一方で、バンドの内部事情がそのまま作品の輪郭に反映されたアルバムでもある。オリジナル・メンバーの変化を経て、現在の編成でどこまでバンドの核を保てるか、その答えを示す場になっている。メタルの重さ、プログレッシブな構成、そして追悼のニュアンスが同居する点に、この時期のMastodonらしさがある。
ジャケットに文字情報を置かず、アートワークだけで勝負している点も含めて、音だけでなく物としての存在感が強い作品だ。2026年のMastodonを記録する一枚として、編成の変化、ゲスト参加、そしてバンドの現在地がまとめて刻まれている。
トラックリスト
- A1 Barbarians Blood
- A2 Poisonous Weapons
- A3 Your Ghost Again
- A4 Snakes For Dinner
- B5 Out Like A Lamb
- B6 In The Ruins
- B7 They're Coming For You
- C8 Golden Spires
- C9 Moth And Bone
- C10 A Vampire's Demeanor
- D11 The Vanishing
- D12 The Three Fates