Magick Brother & Mystic Sister - Tarot Part II (2024)
Magick Brother & Mystic Sister『Tarot Part II』について
Magick Brother & Mystic Sisterは、スペイン・バルセロナを拠点に活動するバンドで、名前はSoft Machineの楽曲タイトルに由来する。2024年作の『Tarot Part II』は、ジャズ、ロックを軸にしながら、Psychedelic Rock、Space Rock、Jazz-Rock、Prog Rockの要素をまとめた作品として登場した。リリースはギリシャのSound Effect Recordsからで、黒盤450枚仕様のほか、色違いの限定盤やCDも用意された。
バンドの編成はMarc Tena、Maya Fernández、Xavi Sandoval、Eva Muntadaの4人。Sound Effect Recordsはアテネを拠点に、流通や製造、通販、レコード店も手がけるレーベルで、この作品もそのネットワークの中で流通した形になる。ジャズとロックの交差点を土台にしつつ、サイケデリックやスペースロックの広がりを持つ盤として、近年の欧州プログレ系リスナーの関心を集めやすい位置にある作品だろう。
作品の輪郭
『Tarot Part II』というタイトルからは、連作性や物語性を意識した構成がうかがえる。実際、リリースの装丁も凝っていて、ゲートフォールド仕様のジャケットにフルカラー印刷の内袋、タロットカードとグラフィックを配したデザインが採用されている。音だけでなく、視覚面でも作品世界を組み立てるタイプの一枚と見てよさそうだ。
ジャンル表記はJazz、Rock、スタイルとしてPsychedelic Rock、Space Rock、Jazz-Rock、Prog Rock。こうした並びから想像されるのは、演奏の自由度と構成の緻密さを両立させる方向性である。欧州の現行プログレやジャズロックの文脈では、長尺の展開、リフの反復、鍵盤やギターのレイヤー、リズムの切り替えが重要になることが多いが、この作品もその系譜に置かれる盤として整理できる。
注目したい点1: タロットを軸にしたパッケージと世界観
まず目を引くのは、タロットカードを前面に出したパッケージである。音楽作品としての中身と、カードや図像の連想が自然につながる作りで、アルバム全体を一つの儀式的な場として見せる意図が感じられる。限定盤ごとにカラー・ヴァイナルが分かれている点も、コレクション性を強めている。
こうした仕様は、70年代プログレやサイケデリック作品に見られる“作品を一冊の本のように扱う”感覚とも相性がよい。音楽そのものを聴く前から、カード、象徴、連作というイメージが立ち上がるので、曲順や展開にも一定の流れを期待させる構成だ。
注目したい点2: ジャズロックとスペースロックの接点
この作品の核は、ジャズロックの流動性とスペースロックの伸びをどう接続するか、という点にあるように見える。ジャズ由来のアンサンブル感が前に出ると、演奏は細かく動く。一方でスペースロック寄りの感触が強いと、同じモチーフを引き延ばして反復する場面が増える。両者が同居すると、曲は直線的に進むというより、場面転換を繰り返しながら進む形になりやすい。
Magick Brother & Mystic Sisterは、その名前自体がすでにサイケデリックな含意を持っているが、実際の作品紹介でもその方向性ははっきりしている。欧州の現行シーンで言えば、ジャズ寄りの即興性と、プログレ寄りの組曲感をまたぐバンド群と並べて語られることが多そうな立ち位置だ。
同時代の文脈
2020年代のプログレ/サイケデリック系では、70年代の語法をそのままなぞるのではなく、録音の明瞭さやアートワークの完成度を含めて総合的に作り込む流れが目立つ。『Tarot Part II』も、Sound Effect Recordsからのフィジカル中心の展開や、複数の限定仕様を見る限り、その文脈に収まる作品といえる。ギリシャのレーベルからスペインのバンドが発信する構図も、ヨーロッパ圏内でのジャンル横断的な流通を感じさせる。
また、バンド名の由来がSoft Machineにある点も示唆的で、ジャズロックと実験性の親和性を意識した命名と受け取れる。そうした背景を踏まえると、本作は単なるレトロ志向ではなく、プログレ、スペースロック、ジャズロックの接点を現代的に整理したアルバムとして見えてくる。
まとめ
『Tarot Part II』は、バルセロナの4人組Magick Brother & Mystic Sisterによる2024年の作品で、ジャズとロックを土台にしたサイケデリックな世界観を打ち出した一枚。タロットを手がかりにした装丁、限定盤の多さ、ギリシャのSound Effect Recordsからのリリースなど、音と外装の両面で作品性を組み立てている。欧州の現行ジャズロック/プログレ系の流れの中で、しっかりと存在感を持つタイプのアルバムとして受け取れる。
トラックリスト
- A1 Strength 5:05
- A2 The Hanged Man 3:31
- A3 The Unnamed Arcane 3:25
- A4 The Temperance 4:26
- A5 The Devil 3:23
- A6 The Tower 3:16
- B1 The Star 5:00
- B2 The Moon 5:54
- B3 The Sun 4:42
- B4 The Judgement 5:56
- B5 The World 7:12
- Total Time: 48:38