Aphrodite's Child - It's Five O'Clock (1970)
Aphrodite's Child『It's Five O'Clock』について
『It's Five O'Clock』は、ギリシャ出身のロック・バンド、Aphrodite's Childが1970年に発表したアルバムである。メンバーはヴァンゲリスことEvangelos Papathanassiou、Demis Roussos、Lucas Sideras、Argiris Koulouris。60年代後半のヨーロッパ・ポップスの流れの中から登場し、シングル「Rain and Tears」のヒットで広く知られるようになったグループで、この作品はバンド後期のアルバムに当たる。
1978年には日本盤がPhilipsから発売されている。オリジナルは1970年の作品だが、日本盤はそれから数年後の再発盤で、邦楽市場に向けて改めて流通したものと見てよい。
バンドの位置づけ
Aphrodite's Childは、もともとポップ・ロック寄りの楽曲で成功したバンドだが、作品を重ねるにつれてヴァンゲリスの志向がより実験的な方向へ寄っていく。その流れは次作『666』でさらに明確になるが、『It's Five O'Clock』はその直前にある作品として、初期の親しみやすい歌ものと、後期へ向かう変化のあいだに位置している。
デミス・ルソスの歌唱が前面に出る構成はこのバンドの大きな特徴で、メロディを軸にした曲作りは、同時代のプログレッシブ・ロックの中でも比較的わかりやすい部類に入る。サイケデリック・ロックとポップ・ロックの要素が同居している点も、このグループらしいところである。
このアルバムの聴きどころ
この作品では、Aphrodite's Childの代表曲「Rain and Tears」で知られるような、旋律を重視した作りが引き続き確認できる。派手な演奏の応酬よりも、歌メロ、鍵盤、アレンジの配置で曲を進めていくタイプのアルバムで、バンドの持っていた大衆性がよく出ている。
また、ヴァンゲリスのキーボードは、単に伴奏に留まらず、曲の雰囲気を決める役割を担っている。後年のソロ作品ほど広がりを前面に出した音ではないが、60年代ポップスの枠を少しずつ押し広げていく感触がある。
同時代とのつながり
Aphrodite's Childは、ギリシャ出身という出自に加えて、ロンドンを目指して移動したのちパリで活動を始めた経緯も含め、ヨーロッパ各地のポップ・ロック文化が交差するバンドだった。サイケデリック・ロックや初期プログレッシブ・ロックの文脈で語られることが多いが、実際には歌謡性の強さもはっきりしている。
同じ時代の英米ロックの大作志向と比べると、Aphrodite's Childは楽曲単位の完成度を保ちながら、アレンジで少しずつ色を変えていく印象がある。ギリシャ系の旋律感を意識して聴くと、バンドの個性が見えやすい。
日本盤としてのポイント
1978年の日本盤はPhilipsのBT-5170番。1970年のオリジナルからは時間が経っているため、当時の日本のリスナーに向けて、Aphrodite's Childのカタログを改めて紹介する役割もあったはずだ。70年代後半の日本では、ヴァンゲリスの名前がソロ活動を通じて広く知られるようになっていく時期でもあり、そうした流れの中でこのアルバムに触れた人もいたと考えられる。
オリジナル盤と比べた音の違いまではここでは断定しないが、少なくとも作品そのものは、バンド後期の節目にあるアルバムとして読むと整理しやすい。『Rain and Tears』で知られるポップな側面と、『666』へ向かう実験性のあいだをつなぐ一枚という位置づけである。
まとめ
『It's Five O'Clock』は、Aphrodite's Childのアルバムの中でも、メロディ重視のポップ・ロックと、後のヴァンゲリスにつながる鍵盤主体の感触が同居する作品である。バンドの代表曲で知られた初期像と、解散前の変化の気配、その両方をたどれる一枚として見ておきたい。
トラックリスト
- A1 It’s Five O' Clock
- A2 Take Up
- A3 Take Your Time
- A4 Annabella
- A5 Let Me Love, Let Me Live
- B1 Funky Mary
- B2 Good Time So Fine
- B3 Marie Jolie
- B4 Such A Funny Night