Sepultura - Chaos A.D. (1993)
Sepultura 1993

Sepultura - Chaos A.D. (1993)

Rock Thrash Groove Metal

Sepultura『Chaos A.D.』— ブラジル発、ヘヴィ・メタルの重心を塗り替えた1993年作

Sepulturaの『Chaos A.D.』は、1993年にブラジルでリリースされた通算5作目のスタジオ・アルバム。スラッシュ・メタルを基盤にしながら、より遅いテンポと反復の強いリフを前面に出し、のちのグルーヴ・メタルへつながる流れを決定づけた作品として知られている。前作までの切れ味の鋭いスピード感に対して、このアルバムでは音の重さ、間の取り方、リズムのうねりがはっきりと前に出る。Sepulturaのキャリアの中でも、音楽性の転換点として位置づけられる1枚だ。

制作背景とサウンドの変化

制作は1992年から93年にかけて、ウェールズのモンマスにあるRockfield Studiosで行われた。外界から距離を置いた環境を選んだことが、この作品のまとまりにそのまま反映されている。プロデューサーはAndy Wallace。前作『Arise』でミックスを担当していた人物で、ここでも輪郭のくっきりした音像を支えている。

この時期のSepulturaは、Max CavaleraとAndreas Kisserの間で、チューニングやリフの作り方をめぐる議論を重ねていたとされる。結果として、D standardチューニングの低い重心が全体を支え、速さだけで押し切るタイプではない、粘りのあるサウンドが形になった。聴いていてまず感じるのは、各曲のリズムが前へ出ること。ドラムとベースが単に土台に留まらず、曲の推進力そのものになっている。

代表曲「Refuse/Resist」と「Territory」

本作を語るうえで外せないのが「Refuse/Resist」。冒頭には、当時Max Cavaleraの妻の腹の中にいた息子Zyonの胎児の心音が使われている。そこから一気に入るリフとビートの切り替わりが印象的で、アルバムの入口として強い存在感を持つ。反復の強い構成と、声の押し出しが前面に出た1曲だ。

もう1つの代表曲が「Territory」。こちらはアルバム全体の方向性を端的に示す曲で、鋭いスラッシュの感触を残しながら、より重いグルーヴへ寄せている。激しさだけでなく、曲の進み方そのものに緊張感がある。ライブでも定番化しやすい構造で、Sepulturaのこの時期を象徴する楽曲として扱われることが多い。

「Kaiowas」の存在感

「Kaiowas」は、Chepstow Castleの遺跡でライブ収録された完全アコースティックの器楽曲。歌を置かず、打楽器と弦の響きだけで進む構成が、アルバムの中で異質な空気を作っている。曲名は、土地を奪われたブラジル先住民Guarani-Kaiowá族の悲劇に由来する。ヘヴィ・メタルのアルバムの中に、こうした形式の曲を置いたこと自体が、この作品の視野の広さを示している。

ブラジル性と当時のヘヴィ・メタル文脈

『Chaos A.D.』では、ブラジルのアフロ・ブラジリアン打楽器隊Olodumの影響も反映されている。単に欧米のスラッシュ・メタルをなぞるのではなく、リズム面にブラジル固有の要素を取り込んでいる点が重要だ。Sepulturaはこの時期、同時代のMetallicaやPantera、さらには後続のKornやSlipknotへつながる流れの中で語られることが多い。特に、重いリフを軸にしたグルーヴの作り方は、90年代以降のヘヴィ・ミュージックに大きな影響を残した。

リリース後の反応も大きかった。Billboard 200で32位を記録し、Roadrunner Recordsにとって初のTop 40入りアルバムになった。米国、英国、ブラジルでゴールド認定を受け、世界的には200万枚以上を売り上げたとされる。Kerrang!誌の1994年アワードで年間最優秀アルバムに選ばれたことも、この作品の評価を裏づけている。

この盤の仕様

このブラジル盤は1993年の初出リリースで、Roadrunner RecordsのRR 9000-1規格。レーベル表記にはRoadrunner Brasil Ltda.のクレジットがあり、バックカバーにはBMG Ariola Discos Ltda.、レーベル面にはBMG Ariola Discos Ltda. Divisão Sonopressの表記が確認できる。ダブルサイドのインサート付きで、当時の南米盤らしい実用的な作りになっている。

まとめ

『Chaos A.D.』は、Sepulturaがスラッシュ・メタルの枠内に留まらず、リズム、重さ、社会的な視点まで含めて自分たちの形を作り直した作品。速さの快感だけで進むアルバムではなく、曲ごとの重量感や、民族音楽的な要素、アコースティック曲の配置まで含めて、全体の設計がはっきりしている。1993年という時点で、ここまで大胆に音の重心を変えたメタル作品は、かなり存在感が強い。

トラックリスト

  1. A1 Refuse / Resist 3:19
  2. A2 Territory 4:45
  3. A3 Slave New World 2:54
  4. A4 Amen 4:24
  5. A5 Kaiowas 3:32
  6. A6 Propaganda 3:31
  7. B1 Biotech Is Godzilla 1:52
  8. B2 Nomad 4:58
  9. B3 We Who Are Not As Others 3:43
  10. B4 Manifest 4:55
  11. B5 The Hunt 3:58
  12. B6 Clenched Fist 4:57
  13. Brazil Only Bonus Track
  14. B7 Polícia 1:48

動画プレイリスト

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