Megadeth - Peace Sells... But Who's Buying? (1986)
Megadeth『Peace Sells... But Who's Buying?』1986年US盤レビュー
Megadethの『Peace Sells... But Who's Buying?』は、1986年に発表された2作目のスタジオアルバムで、バンドの名前をスラッシュメタルの中心へ押し上げた重要作として知られている。前作『Killing Is My Business... and Business Is Good!』で見せた粗さと勢いを保ちながら、この作品では曲構成の緻密さ、リフの組み立て、演奏の精度が一段はっきりしている。Dave Mustaineのギターと歌、David Ellefsonのベースが前面に出る作りで、80年代のメタルの中でも、速さだけではない緊張感が残る一枚になっている。
作品の位置づけ
Megadethは、Metallica脱退後のMustaineが1983年に立ち上げたバンドで、同時代のMetallica、Slayer、Anthraxと並んで「Big 4」の一角に数えられる存在だ。このアルバムは、その中でもMegadethらしさを決定づけた作品と見なされやすい。攻撃的なテンポ、細かく刻まれるギター、政治や社会への視線を含んだ歌詞、そしてどこか皮肉を含む語り口。その輪郭が、この時点でかなり明確になっている。
制作面では、もともとCombat向けに進んでいた録音を、Capitol加入後に調整した経緯がある。結果として、作品全体は荒さを残しつつも、音像や曲順の流れにまとまりがある。Megadethの初期作の中でも、バンドの方向性がはっきり形になった節目のアルバムと言えそうだ。
USオリジナル盤の特徴
ここで扱うのは1986年のUS初回盤。Capitol Recordsのカタログ番号はST-12526で、ラベル上部に虹色の帯が入り、「MFG BY CAPITOL RECORDS, INC , A SUBSIDIARY OF CAPITOL INDUSTRIES-EMI, INC., U.S.A.」の表記が黒字で入るのがオリジナルの特徴になる。再発盤ではこの「CAPITOL INDUSTRIES-EMI」の記載がないため、見分けの手がかりになりやすい。
付属物としては、両面印刷の歌詞/クレジット入りインナー・スリーブが入る。ジャケットには国連本部ビルが描かれており、アルバムの政治的な空気を視覚面でも支えている。コピーによってはゴールドのプロモスタンプが押されているものもある。さらに、ランアウト部にはArtisanのスタンプに加えてAlliedの「ɑ」ロゴが確認できるものがあり、盤の細部にも当時のUSプレスらしい情報が残っている。
聴きどころ
タイトル曲「Peace Sells」は、このアルバムの顔としてまず触れたい曲だ。冒頭のベースラインは非常に印象的で、Megadethの代表曲として長く語られてきた理由がわかりやすい。曲の進み方も単純な疾走一辺倒ではなく、リフの切り替えやブレイクの入れ方に計算がある。「平和は売り物ではない」という皮肉めいた視点が、Mustaineらしい語り口で置かれているのも重要な点だ。
収録曲全体を通すと、速い曲でも音数が多く、各パートの動きが追いやすい。単に速いだけのスラッシュではなく、ベースがよく動き、ギターが細かなフレーズを積み重ねるため、聴き込むほど構造が見えてくるタイプのアルバムになっている。演奏の切れ味と同時に、曲ごとの輪郭がはっきりしているのが強い。
また、「I Ain't Superstitious」はWillie Dixonの曲のカバーで、アルバムの中では少し違う温度を持つ。オリジナル曲群の攻撃性の中にこうした選曲が入ることで、Megadethが単なる速さのバンドではなく、ブルースやロックの文脈も背負っていることが見えやすい。
同時代の文脈
1986年はスラッシュメタルが大きく伸びた時期で、Metallica『Master of Puppets』、Slayer『Reign in Blood』と並べて語られることも多い。Megadethのこの作品は、その中でも技術面の細さと、Mustaineの神経質なまでのリフ構築が際立つ一枚として受け取られてきた。暴力的な速さだけではなく、アレンジの情報量で押してくるところが、同時代の中でもはっきりした個性になっている。
後年のMegadethがより複雑な構成やメロディを取り込んでいく流れを考えると、このアルバムは初期の荒さと完成度の中間にある重要な地点でもある。ここで示された方向性が、その後の『So Far, So Good... So What!』や、さらに先の『Rust in Peace』へつながっていく流れは見えやすい。
まとめ
『Peace Sells... But Who's Buying?』は、Megadethがスラッシュメタルの有力バンドとして認識されるきっかけになった作品であり、1986年のUS初回盤はその時代の空気をそのまま持った一枚だ。ラベル表記、インナー・スリーブ、国連ビルのジャケット、そしてタイトル曲の存在感まで含めて、バンドの初期像がかなり明確にまとまっている。速さ、精密さ、皮肉のある視線、その3つが同時に立っているアルバムとして記憶されている。
トラックリスト
- A1 Wake Up Dead 3:37
- A2 The Conjuring 5:00
- A3 Peace Sells 4:05
- A4 Devils Island 5:02
- B1 Good Mourning / Black Friday 6:39
- B2 Bad Omen 4:03
- B3 I Ain't Superstitious 2:42
- B4 My Last Words 4:44