Tangerine Dream - Force Majeure (1979)
Tangerine Dream『Force Majeure』について
Tangerine Dreamの『Force Majeure』は、1979年にUKのVirginから出たアルバムで、バンドのVirgin期を代表する1枚としてよく語られる作品だ。ベルリン・スクールの電子音楽を軸にしながら、ここではシーケンサーの反復だけで押し切るのではなく、曲の展開やメロディの運びがよりはっきりしている。前作『Cyclone』で見えたバンド編成の要素を受けつつ、さらに整理された構成でまとめた印象が強い。
録音はベルリンのHansa Studiosで行われ、エドガー・フローゼとクリストファー・フランケを中心に制作された。Tangerine Dreamは70年代前半の実験色の強い時期から、シンセサイザーとシーケンサーを前面に出した独自の様式へ進み、この時期に国際的な評価を固めていく。『Force Majeure』は、その流れの中でも、電子音楽とロックの接点をかなり明快に示した作品として位置づけられる。
作品の輪郭
アルバムは長尺曲を中心に構成されているが、ただ長いだけではなく、フレーズの切り替えや音の重ね方に意識が向いている。表題曲「Force Majeure」は、穏やかな導入から徐々に密度を上げていく流れが印象的で、音が増えても輪郭が崩れにくい。電子音の反復が前面に出る一方で、旋律線の存在感がはっきりしており、当時のプログレッシブ・ロックを聴いていた耳にも入りやすい作りだ。
「Thru Metamorphic Rocks」は、このアルバムを語るときに外せない1曲だ。低音のシーケンスに歪みが乗った部分については、ミキシング卓の不具合に由来する偶然の音が残された、という話が知られている。結果として、機械的な反復の中に生々しいざらつきが混ざり、曲全体の推進力を作っている。こうした偶発性がそのまま作品の個性になっている点も面白い。
Virgin期の中での位置づけ
Tangerine Dreamは『Phaedra』以降、Virginとの関係の中で大きく評価を広げたが、『Force Majeure』はその流れの後半にあたる重要作だ。初期の浮遊感や実験性だけでなく、70年代末のロック文脈に接続する分かりやすさがある。クラフトワークのように冷たく整理された電子音楽とも、YESやGenesisのような英プログレとも違う、ベルリン発の流れを保ちながら、よりダイナミックな方向へ進んでいる。
この時期のTangerine Dreamは、同じ電子音楽でも、純粋なアンビエントやシンセ実験とは少し違う場所にいた。反復、推進、旋律、空間処理が一体になっており、後の映画音楽やシンセ・ミュージックの広がりにもつながる要素がすでに見える。80年代に入ると彼らはよりメロディ重視へ傾くが、その前段階として本作のバランス感覚はかなり重要だ。
盤の特徴と当時のリリース
このUK盤はVirginのV2111で、1979年のオリジナル・リリースにあたる。Virginのこの時期のLPは、レーベル面のデザインも時代を映していて、70年代後半のVirginらしいグリーン/レッド系の意匠が使われている。さらに、透明盤として出た版も存在し、リリース当時の凝った仕様として知られている。テクスチャー入りスリーヴの版もあり、ジャケット面でも少し特別感がある。
チャート面では英国で最高26位を記録し、Tangerine Dreamとしてはかなり目立つ成績を残した。電子音楽のアルバムがロックの市場でここまで届いたこと自体が、この作品の存在感を示している。70年代末のUKロック/プログレの中で、シンセサイザー主体の音楽が一般のリスナーにも届いていた時代背景を、そのまま背負ったような1枚でもある。
まとめ
『Force Majeure』は、Tangerine Dreamが持っていた実験性と、Virgin期に広げたロック的な聴きやすさが、かなり自然な形で同居したアルバムだ。音の作りは端正でありながら、ところどころに偶然性や荒さが残っていて、そのバランスが作品の芯になっている。ベルリン・スクールの代表格としての面目と、70年代末のプログレ/エレクトロニック・ロックの交差点に立つ作品としての性格、その両方が見える内容だ。
トラックリスト
- A Force Majeure 18:18
- B1 Cloudburst Flight 7:21
- B2 Thru Metamorphic Rocks 14:15