Tangerine Dream - Sorcerer (Music From The Original Motion Picture Soundtrack) (1977)
Tangerine Dream 1977

Tangerine Dream - Sorcerer (Music From The Original Motion Picture Soundtrack) (1977)

Electronic Stage & Screen Ambient Soundtrack Berlin-School

Tangerine Dream『Sorcerer (Music From The Original Motion Picture Soundtrack)』レビュー

Tangerine Dreamが1977年に発表した『Sorcerer (Music From The Original Motion Picture Soundtrack)』は、同年公開の映画『Sorcerer』のために制作されたサウンドトラック盤である。アーティストとしてのTangerine Dreamは、ベルリン・スクールを代表する電子音楽集団として知られ、70年代半ばにはシーケンスとシンセサイザーを軸にした演奏で独自の地位を固めていた。この作品は、その流れが映画音楽という形で映画館の外へ広がった例として重要な位置にある。特にハリウッドとの接点という意味では、バンドにとって大きな転機になったタイトルとして語られることが多い。

この盤はシンガポール盤で、MCA Recordsのカタログ番号はMCF 2806。オリジナルの1977年リリースであり、後年の再発ではなく当時の空気をそのまま伝える一枚として見られる。Tangerine Dreamの作品群の中でも、映画音楽としての機能が前面に出た作品でありながら、バンド固有の演奏感や音の運びがしっかり残っているのが特徴だ。

作品の背景

マスターノートによれば、この『Sorcerer』の音楽は、監督ウィリアム・フリードキンがバンドから受け取った90分のセッションテープの中から選んだものだという。つまり、完成した映画に合わせて細かく組み立てたスコアというより、まずバンドの側にある素材が先にあり、それを映画側が採用していった形に近い。Tangerine Dreamが持っていた即興性、持続するリズム、音の層を重ねるやり方が、そのまま映画の緊張感に接続している。

1977年という時期を考えると、Tangerine Dreamはすでに電子音楽の先駆者として認識されていた。『Phaedra』以降の流れで培った、反復するフレーズと長い展開を組み合わせる手法が、このサウンドトラックでも中心にある。ロックバンドの劇伴というより、映画の場面に対して時間の流れそのものを与えるような作りで、同時代のプログレッシブ・ロックや電子音楽の中でも少し特殊な立ち位置にある。

サウンドの印象

聴いてまず分かるのは、打楽器的な推進力と、空間を埋める持続音のバランスである。単に背景音として流れるのではなく、一定の脈動が続くことで映像の緊張を支える設計になっている。電子音の輪郭は比較的はっきりしていて、音色の変化よりも、反復とレイヤーの変化で場面を動かしていくタイプだ。映画音楽としては機能的でありながら、単独で聴いてもTangerine Dreamらしい構成の面白さが残る。

この時期のTangerine Dreamは、ジャーマン・ロックの即興性と、後のシンセ主導のスコアリングの中間にいる。クラウトロックの文脈を引きずりつつも、演奏はより整理され、映画の尺に合わせた流れが見える。CanやAmon Düül IIのようなバンドとは別の方向だが、70年代ドイツ発の実験音楽が映像表現と結びついた例としては並べて語られやすい作品である。

注目曲について

収録曲の中では、映画の核心部分で使われるトラック群が特に印象に残る。Tangerine Dreamのサウンドトラックは、単独のヒット曲を前面に出すタイプではないが、場面ごとのテンションを支える短い断片や長めの展開が連なって、全体として一つの流れを作っている。曲名だけを追うより、映画の映像と一緒に音の推移をたどると、この作品の役割が見えやすい。

代表曲として語られやすいのは、アルバム中でも印象の強いメイン・モチーフ群だろう。反復するシーケンスの上に、冷たいというよりも乾いた質感のシンセが重なり、場面の移動や不穏さをそのまま音にしているような感覚がある。メロディを大きく押し出すのではなく、同じ素材を少しずつずらしていく作りなので、聴き進めるほどに映像のない場面でも画が立つタイプの音楽になっている。

アーティストの中での位置づけ

この作品は、Tangerine Dreamが映画音楽へ本格的に進んでいく流れの中で重要な一枚といえる。70年代後半から80年代にかけて、彼らはサウンドトラック分野での存在感を強めていくが、その入口にあるのがこの『Sorcerer』だ。バンドとしての実験性を保ったまま、映像メディアに適応した点に価値がある。

また、同時代の電子音楽作品と比べても、ここには「シンセサイザーの音を聴かせる」以上の役割がある。音色の珍しさで引っ張るのではなく、反復と構造で緊張を作る。ベルリン・スクールの方法論が、映画のサスペンスと自然に結びついた例として見ておくと、Tangerine Dreamの70年代後半の広がりがつかみやすい。

まとめ

『Sorcerer (Music From The Original Motion Picture Soundtrack)』は、Tangerine Dreamの電子音楽が映画の時間に組み込まれた瞬間を記録した作品である。1977年という年の空気、ベルリン・スクールの手触り、ハリウッド映画との接点、その三つが一枚に収まっている。劇伴としての実用性と、バンド作品としての輪郭が両立している点が、この盤の見どころだろう。

トラックリスト

  1. A1 Main Title 5:28
  2. A2 Search 2:54
  3. A3 The Call 1:57
  4. A4 Creation 5:00
  5. A5 Vengeance 5:32
  6. A6 The Journey 2:00
  7. B1 Grind 3:01
  8. B2 Rain Forest 2:30
  9. B3 Abyss 7:04
  10. B4 The Mountain Road 1:53
  11. B5 Impressions Of Sorcerer 2:55
  12. B6 Betrayal (Sorcerer Theme) 3:38

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