The Flirtations - Nothing But A Heartache (1969)
The Flirtations 1969

The Flirtations - Nothing But A Heartache (1969)

Funk / Soul Soul

The Flirtations『Nothing But A Heartache』――英国で録音されたUSソウル・グループの1969年作

The Flirtationsは、1960年代前半に米国で結成された女性ソウル・グループで、のちに英国へ渡って活動したことで知られる。Ernestine Pearce、Shirley Pearce、Viola Billupsの3人を中心とするこの編成で、1968年に渡英し、Decca傘下のDeramと契約。そこで残した1969年のアルバムが『Nothing But A Heartache』である。グループにとっては、英国での本格的なレコーディング活動の流れを示す重要な一枚で、同時に後年のノーザン・ソウル文脈でも語られる作品になっている。

この作品はUS盤としてDeramから出ており、タイトル曲「Nothing But A Heartache」が作品の顔になっている。The Flirtationsはシングルでも知られるが、アルバムとしてまとまった形で聴くと、3人の声の重なりが前に出る設計がよく分かる。リードを立てつつも、コーラスが単なる背景に退かず、フレーズの終わりや語尾の処理まで含めて楽曲の推進力になっているのが特徴だ。

作品の位置づけ

『Nothing But A Heartache』は、The Flirtationsにとって英国移住後の活動を象徴する記録であり、1969年という時代のソウル・ポップの空気も反映している。アメリカ出身のグループが英国で制作し、英国レーベルからリリースされた点も興味深い。Motown系の洗練、ガール・グループ的な分かりやすさ、そして英国ソウルの受け止め方が重なった地点にある作品として捉えられる。

アルバム単位で見ると、ヒット曲だけを並べた構成ではなく、グループの歌唱バランスや曲ごとの表情を見せる作りになっている。The Flirtationsはのちに1975年のRCA盤や再結成作も残すが、その出発点としてこの1969年作は外せない。特に、グループが英国でどのように聴かれていたかを示す資料としても価値が高い。

タイトル曲「Nothing But A Heartache」

本作の代表曲である「Nothing But A Heartache」は、タイトルどおり失恋の感情を正面から扱う一曲だが、歌の運びは重すぎず、むしろテンポの良い推進力がある。冒頭からコーラスがはっきり立ち、リードの感情表現を周囲が押し出す形で支える。ノーザン・ソウルの現場で好まれそうな、ビートの明瞭さと歌の切実さの両方を持つタイプの楽曲だ。

実際に聴くと、声の“揃い方”がかなり重要な曲だと分かる。3人のハーモニーが厚くなりすぎず、各パートの輪郭が残るため、サビに入ったときの抜けが良い。ソウル・バラード寄りの感情線を持ちながら、演奏は前へ進むので、ドラマ性だけで止まらないところがこの曲の強みになっている。The Flirtationsの録音の中でも、グループ名をそのまま印象づける代表曲として扱われることが多いのも納得できる。

アルバム全体の聴きどころ

収録曲全体を通して感じるのは、女性コーラス・グループとしてのまとまりの良さである。The Flirtationsは、いわゆる単独リードの強さだけで押すタイプではなく、複数声部の配置によって楽曲の表情を作る。だからこそ、曲によっては前に出る声、下支えする声、合いの手のように入る声が明確で、短いフレーズの積み重ねでも印象が残る。

この時期のソウル作品として見ると、同時代の英国録音ソウルや、アメリカの女性グループ作品と比較したくなる内容でもある。たとえば、同じくグループ・ハーモニーを軸にした作品群と並べると、The Flirtationsは感情表現を過剰に引き伸ばすより、曲の中で声をきれいに束ねる方向に寄っているように聴こえる。結果として、ソウルでありながら整理された印象が残る。

1969年のDeram盤として

今回のUS盤は1969年のオリジナル期のリリースで、後年の再発盤とは作品の初出時点の姿を伝えるものになる。DeramはDecca系のレーベルとして、英国ロックやプログレッシブ、ノーザン・ソウル周辺まで幅広く展開したことで知られるが、その中でThe FlirtationsのようなUS出身ソウル・グループが並んでいるのも面白い。レーベルの文脈に置くと、このアルバムは英国の聴き手に向けたソウル作品のひとつとして見えてくる。

『Nothing But A Heartache』は、派手な逸話で語られるアルバムというより、グループの歌唱と時代の接点をそのまま封じ込めた記録に近い。タイトル曲を軸に、The Flirtationsの3声がどう機能していたかを確認できる一枚として、1969年ソウルの中でもはっきりした輪郭を持つ作品だといえる。

トラックリスト

  1. A1 Nothing But A Heartache 2:41
  2. A2 This Must Be The End Of The Line 2:55
  3. A3 I Wanna Be There 3:04
  4. A4 Stay 3:33
  5. A5 How Can You Tell Me? 2:59
  6. A6 Someone Out There 3:01
  7. B1 Need Your Loving 2:56
  8. B2 South Carolina 2:44
  9. B3 Once I Had A Love 2:45
  10. B4 Momma I'm Coming Home 3:02
  11. B5 Love Is A Sad Song 3:07
  12. B6 What's Good About Goodbye My Love 3:03

動画

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