The Last Poets - This Is Madness (1971)
The Last Poets 1971

The Last Poets - This Is Madness (1971)

Jazz Funk / Soul Soul-Jazz Free Jazz Spoken Word

The Last Poets『This Is Madness』

1968年5月19日(マルコムXの生誕日)にニューヨーク・イーストハーレムのマウント・モリス・パーク(現マーカス・ガーヴェイ・パーク)で結成され、「ヒップホップ/ラップの祖(ゴッドファーザー・オブ・ラップ)」と称される黒人詩人・音楽家コレクティヴ、ザ・ラスト・ポエッツ(The Last Poets)が1971年3月にDouglas Records(規格番号:Douglas 7 / Z 30583)から発表した通算2作目のスタジオ・アルバム。グループ名は、銃が取って代わる前の「詩の最後の時代」に生きていると語った南アフリカの革命詩人ケオラペツェ・コゴシツィレ(Keorapetse Kgositsile、別名Little Willie Copaseely)の詩句に由来している。

全米Billboard 200で29位、R&Bアルバム・チャートで3位を記録した1970年の1stアルバム『The Last Poets』に続く作品で、ニューヨークのMediasound Studiosにて録音された。プロデュースはジミ・ヘンドリックスやマイルス・デイヴィス関連作でも知られるDouglas Records主宰のアラン・ダグラス(Alan Douglas)とステファン・ブライト(Stefan Bright)、エンジニアはトニー・ボンジョヴィ(Anthony C. Bongiovi)が担当。歌詞が掲載されたゲートフォールド(見開き)仕様のジャケットを飾る絵画アートワークは、マイルス・デイヴィス『Bitches Brew』やサンタナ『Abraxas』のカバー画でも知られる画家アブドゥル・マティ・クラルワイン(Abdul Mati Klarwein)が手がけ、写真はBilal Faridが撮影している。

制作背景と収録曲

本作は、1stアルバムのツアー開始直前に創設メンバーのひとりであるアビオドゥン・オイエウォレ(Abiodun Oyewole)が逮捕・収監されたことを受け、当時アラフィア・プディム(Alafia Pudim)名義で活動していたジャラルディン・マンスール・ヌリディン(Jalaluddin Mansur Nuriddin、別名Lightnin' Rodとしても知られる)と、オマール・ベン・ハッセン(Omar Ben Hassen)名義でクレジットされたウマル・ビン・ハッサン(Umar Bin Hassan)の2人の詩人、そしてパーカッショニストのニラジャ(Raymond “Nilaja” Hurrey)という3人体制で制作された。本編の詩の前に3人の掛け合いによる短い「Chant(チャント)」トラック(「Related To What Chant」「Black Is Chant」「Mean Machine Chant」「Black People What Y'all Gon' Do Chant」「This Is Madness Chant」の5曲、いずれも3人の共作)を挟み込みながら、苛烈な言葉と打楽器を前面に押し出す構成が採られている。

楽曲面では、アラフィア・プディム(ヌリディン)が作詞・リードを担った楽曲として、ブルースの本質を問う冒頭曲「True Blues」(A1、1971年にシングル・カット)、機械文明と破壊の暴走を高速の言葉遊びで描く代表曲「Mean Machine」(A8)、白人社会の傲慢さを痛烈に批判する「White Man's Got a God Complex」(B1)、「Opposites」(B2)、ヘロインのオーバードーズ(過剰摂取)の悲劇を生々しく描写した1970年の先行シングル「O.D.」(B5)が並ぶ。一方、ウマル・ビン・ハッサンが作詞・リードを担った楽曲には、当事者意識を鋭く突きつける「Related To What」(A3)や「Black Is」(A5)、「Time」(A6)、「Black People What Y'all Gon' Do」(B4)、そして狂気に満ちた時代を咆哮とともに総括するタイトル曲「This Is Madness」(B7)が収録された。

時代の文脈

本作は、アフリカ系アメリカ人の公民権運動やブラック・ナショナリズムが先鋭化していた1970年代初頭の空気を色濃く反映し、前作以上にラディカルで政治色の強いスポークン・ワードを展開した作品として位置づけられている。白人至上主義、アメリカ政府、ベトナム戦争、薬物汚染、さらには黒人コミュニティ内部の矛盾にまで踏み込んだ過激なメッセージ性ゆえに、本作の発表後、グループはリチャード・ニクソン政権下のFBI(連邦捜査局)による極秘対敵諜報プログラム「COINTELPRO(コインテルプロ)」の監視対象リストに載せられることとなった。

また、ザ・ラスト・ポエッツの音楽性の変遷においても重要な分岐点にあたる。ウマル・ビン・ハッサンが一度脱退してスライマン・エル=ハディ(Sulaiman El-Hadi)が加入する次作『Chastisement』(1972年)以降は、ジャズやファンクの楽器編成を取り入れた「ジャズオエトリー(Jazzoetry)」へと移行するため、ニラジャのコンガ/パーカッションと生身の声のみがぶつかり合う初期のストイックなスタイルを聴ける最後のアルバムともなっている。

後世への影響と評価

コンガのポリリズムとチャントに乗せて韻を踏んだ言葉を叩きつける本作のスタイルは、のちのヒップホップにおけるMCおよびポリティカル・ラップの直接的な源流となった。収録曲も数多くのアーティストに継承されており、パブリック・エネミー(Public Enemy)は「White Man's Got a God Complex」をリメイクし、「Mean Machine」も1984年にD.St.(グランドミキサーD.ST.)とジャラルディンによってリメイクされたほか、近年ではJIDの2022年の楽曲「Raydar」で大きくサンプリングされている。また1994年には、エイズ撲滅チャリティの名盤『Stolen Moments: Red Hot + Cool』(米タイム誌年間ベスト・アルバム選出)で、ウマル・ビン・ハッサンとアビオドゥン・オイエウォレがファラオ・サンダース(Pharoah Sanders)と共演してタイトル曲「This Is Madness」を再演した。

1971年の発売当時、アルバムは米Billboard 200で最高104位、Billboard Top R&B Albumsチャートで最高14位を記録。AllMusicのロン・ウィン(Ron Wynn)は本作に5点満点中4.5点を与え、アメリカの社会・人種的矛盾を飾り気のない言葉で生々しく暴き出し、のちのヒップホップへの道筋をつけたストリート・ポエッツによる重要作として高く評している。

トラックリスト

  1. A1 True Blues 2:03
  2. A2 Related To What Chant 1:09
  3. A3 Related To What 3:12
  4. A4 Black Is Chant 0:58
  5. A5 Black Is 2:31
  6. A6 Time 1:40
  7. A7 Mean Machine Chant 1:22
  8. A8 Mean Machine 4:02
  9. B1 White Man's Got A God Complex 3:39
  10. B2 Opposites 1:45
  11. B3 Black People What Y'all Gon' Do Chant 0:46
  12. B4 Black People What Y'all Gon' Do 3:23
  13. B5 O.D. 3:07
  14. B6 This Is Madness Chant 1:05
  15. B7 This Is Madness 4:53

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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