The Miles Davis Quintet - Workin' With The Miles Davis Quintet (1959)
The Miles Davis Quintet 1959

The Miles Davis Quintet - Workin' With The Miles Davis Quintet (1959)

Jazz Hard Bop Bop

The Miles Davis Quintet『Workin' With The Miles Davis Quintet』

モダン・ジャズの帝王マイルス・デイヴィス(Miles Davis)率いる「第1期偉大なるクインテット(The First Great Quintet)」が、名門プレスティッジ(Prestige Records)に残した伝説のマラソン・セッション4部作(『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』)の第3弾(カタログ番号:PRLP 7166)。コロムビア・レコードへの専属移籍に伴い、プレスティッジとの契約消化のために1956年に行われた2度のスタジオ・セッションから珠玉のテイクを編纂し、1959年末(1960年1月)にリリースされた。ジャズ史に君臨する黄金の5人が、普段のクラブ・ギグそのままの圧倒的な集中力と緊張感で駆け抜けた、ハード・バップの不滅のモニュメントである。

制作背景:2日間のマラソン・セッション

1955年のニューポート・ジャズ・フェスティバルでの劇的なカムバックを機に大手コロムビアとの契約を結んだマイルスだったが、プレスティッジの創設者ボブ・ワインストックとの間にアルバム4枚分の残存契約が残されていた。この義務を果たすため、マイルス率いるクインテットはニュージャージー州ハッケンサックのルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオに集結。1956年5月11日と10月26日のわずか2日間のセッションで、驚異的なペースで20曲以上を一発録り(ほぼ全曲ファースト・テイク)で吹き込んだ。

本作『Workin'』に収められた8曲のうち、マイルス作の「Half Nelson」のみが10月26日のセッション、残る7曲はすべて5月11日のセッションで記録されたものである。クラブのステージを再現するように、各曲の幕間やクロージングにバンドのテーマ曲「The Theme」の断片が挿入されており、当時のナイトクラブの臨場感とドキュメンタリー性を鮮烈に今に伝えている。

黄金の布陣と楽曲解説

メンバーはマイルス(トランペット)を筆頭に、ジョン・コルトレーン(John Coltrane / テナー・サックス)、レッド・ガーランド(Red Garland / ピアノ)、ポール・チェンバース(Paul Chambers / ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ("Philly" Joe Jones / ドラムス)という、ジャズ史上屈指のスーパー・クインテットである。

アルバム冒頭を飾るリチャード・ロジャース作の名バラード「It Never Entered My Mind」は、マイルスの哀愁に満ちたハーマン・ミュートと、ガーランドによる愛らしいイントロ(イギリス民謡「カントリー・ガーデンズ」のフレーズを借用)が完璧なリリシズムを描き出す歴史的名演(コルトレーンは不参加)。続く「Four」や、タッド・ダメロンの「Lady Bird」のコード進行を下敷きにした「Half Nelson」では、チェンバースの俊敏なウォーキング・ベースとフィリー・ジョーの小気味よいブラッシュワークに乗って、マイルスとコルトレーンが対照的な美学をぶつけ合う熱狂的なブローイング・セッションが展開される。

また、コルトレーン作のブルース「Trane's Blues」(別名「Vierd Blues」)では、コルトレーンが骨太な低音から咆哮するようなソロを聴かせ、デイヴ・ブルーベック作の「In Your Own Sweet Way」では繊細なミュートのニュアンスが際立つ。さらに、マイルスが強く影響を受けたピアニストへのトリビュートである「Ahmad's Blues」ではホーン隊が控え、ガーランド〜チェンバース〜フィリー・ジョーによるピアノ・トリオ編成で瑞々しいスウィングを聴かせる(チェンバースによるアルコ/弓弾きソロも聴きどころである)。

時代の文脈と後世への影響

本作がリリースされた1959年末から1960年初頭といえば、マイルスはすでに『Kind of Blue』を発表してモード・ジャズという未踏の領域を切り拓き、コルトレーンも『Giant Steps』で自らの語法を確立していた時期にあたる。しかし、この『Workin'』に封じ込められたハード・バップの極致とも言えるスウィング感とバンドの一体感は、何年経っても決して色あせることのない普遍的な魅力を放ち続けた。

オリジナル盤は、上部に「203 South Washington Ave. Bergenfield, N.J.」のアドレスが記されたイエロー&ブラックのファイヤーワークス・レーベルに、ヴァン・ゲルダーの手による「RVG」のデッドワックス刻印を持つ。静寂とダイナミズム、叙情と疾走感が奇跡的な調和を遂げた本作は、モダン・ジャズのアンサンブルの究極の模範として、今なお世界中のリスナーを魅了し続けている。

トラックリスト

  1. A1 It Never Entered My Mind
  2. A2 Four
  3. A3 In Your Own Sweet Way
  4. A4 The Theme (Take #1)
  5. B1 Trane's Blues
  6. B2 Ahmad's Blues
  7. B3 Half Nelson
  8. B4 The Theme (Take #2)

動画プレイリスト

公開: 2026年11月
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