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Big Big Train(ビッグ・ビッグ・トレイン)は、1990年にイングランド南部のボーンマスで結成されたプログレッシブ・ロック・バンド。中心人物であるベーシスト/ソングライターのグレッグ・スポートン(Greg Spawton)と、共同設立者のアンディ・プール(Andy Poole)によって始動した。バンド名はスポートンの家族史に深く根ざしている。彼の母方の実家はイングランド中部の鉄道官舎にあり、祖父や叔父たち全員が鉄道員という家庭環境で育った。幼少期に贈られた玩具の列車セットに「Big Big Train」と名付けられていた記憶が残り、1980年代末に兄のバンド名候補となった後、1990年のバンド結成時にグループ名として正式採用された。
1994年、IQのマーティン・オーフォードらが運営するプログレ専門レーベルGiant Electric Pea(GEP)からデビュー・アルバム『Goodbye to the Age of Steam』を発表。マーティン・リード(ボーカル)、スティーヴ・ヒューズ(ドラムス)、イアン・クーパー(キーボード)を擁し、GenesisやVan der Graaf Generator直系の叙情的なシンフォニック・ロックとして高い評価を得た。しかし続く『English Boy Wonders』(1997年)の制作難航とレーベル契約解除、メンバーの脱退が重なり、バンドはライヴを行わない長期のスタジオ・プロジェクトへと移行することになる。
2000年代に入るとショーン・フィルキンスをボーカルに迎え、自主レーベルから『Bard』(2002年)、バトル・オブ・ブリテンのパイロットたちに捧げられた『Gathering Speed』(2004年)を発表。歴史や市井の人々のドラマを軸にする独自の作風を確立していった。2007年の『The Difference Machine』では、後に正式加入することとなるSpock's Beardのニック・ディヴァージリオ(ドラムス)やXTCのデイヴ・グレゴリー(ギター)がゲスト参加し、来るべき黄金期への布石を打った。
2009年、バンドの運命を決定づける転機が訪れる。かつてジェネシスのフロントマン・オーディションで最終選考に残った実力派シンガー/マルチ奏者、デヴィッド・ロングドン(David Longdon)が加入。ニック・ディヴァージリオとデイヴ・グレゴリーも正式メンバーとなり、通算6作目『The Underfall Yard』(2009年)を発表した。ブリストルの歴史的な造船ドックを題材にした表題組曲(元It Bitesのフランシス・ダナリーがギター客演)をはじめ、ブラス・アンサンブルを大胆に導入した雄大なシンフォニック・ロックは、世界中のプログレ・コミュニティから熱狂的な絶賛を浴びた。
続く二部作『English Electric Part One』(2012年)と『English Electric Part Two』(2013年)では、英国の産業遺産、炭鉱夫や鉄道員、田園地帯に生きる人々の営みを丹念に描き出し、バンドの評価は決定的なものとなった。2013年のProgressive Music Awardsでは「ブレイクスルー・アーティスト賞」を受賞。ダニー・マナーズ(キーボード)、レイチェル・ホール(バイオリン)、リカード・シェーブロム(元Beardfish、ギター/キーボード)が加わり、大所帯バンドとしての表現力を極限まで高めていった。
2015年8月、ロンドンのKings Placeにて実に17年ぶりとなるライヴ復帰公演を行い、3公演が即日完売。「ライヴ・イベント賞」を受賞し、スタジオ・プロジェクトから屈指のライヴ・アクトへと脱皮を果たした。続くアルバム『Folklore』(2016年)では同アワードの「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞。『Grimspound』(2017年)、『The Second Brightest Star』(2017年)と精力的に傑作を連発し、2019年の『Grand Tour』は全英オフィシャル・アルバム・チャートで35位を記録。同年のProgressive Music Awardsにおいて最高峰の「バンド・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。
世界的な成功の只中にあった2021年11月19日、バンドの象徴であったデヴィッド・ロングドンが自宅での不慮の事故により負傷し、翌20日に56歳で急逝。世界中の音楽ファンが深い悲しみに包まれた。彼が生前にボーカルを録音していたアルバム『Welcome to the Planet』は、遺族とメンバーの意志のもと2022年1月に遺作としてリリースされた。
深い喪失感を乗り越え、バンドはロングドンの音楽的遺産を未来へと継承することを決断。2022年4月、イタリアの名門プログレ・バンドPFM(Premiata Forneria Marconi)でリード・ボーカルやマルチ奏者を務めていたアルベルト・ブラヴィン(Alberto Bravin)が新フロントマンとして加入した。さらにオスカー・ホルドルッフ(キーボード)やクレア・リンドリー(バイオリン)を迎え、大手プログレ・レーベルInsideOut Musicと契約。ブラヴィンの故郷トリエステで録音された新体制初のアルバム『The Likes of Us』(2024年3月)は、バンドの強靭な生命力と新たなダイナミズムを証明する傑作として各国のチャートで高く評価されている。
Big Big Trainの音楽は、70年代英国プログレ直系のクラシカルな構築美に、ブラス・バンド、ストリングス、フルート、アコーディオン、12弦ギター、そして多声コーラス・ハーモニーを幾重にも重ね合わせた芳醇なアンサンブルが最大の特徴である。
歌詞世界においては、抽象的なファンタジーに依存することなく、考古学・歴史学・民俗学に根ざした英国の土地の記憶、産業革命期の労働者、巨石記念物、名もなき職人たちのドラマを丹念に描き出す。その徹底したヒューマニズムとナラティブ(物語性)こそが、彼らを21世紀プログレッシブ・ロックの最高峰に位置づけている。