Big Big Train - Folklore (2016)
Big Big Train 2016

Big Big Train - Folklore (2016)

Rock Folk, World, & Country Prog Rock

Big Big Train / Folklore(2016, UK / Plane Groovy)

Big Big TrainのFolkloreは、2016年に発表された通算9作目のスタジオ・アルバムである。英国のプログレッシブ・ロックを軸にしながら、フォークやブリティッシュ・トラッドの要素を強く取り込んだ作品で、バンドの作風をわかりやすく示す一枚でもある。リリース元は英国のヴァイナル専門レーベルPlane Groovyで、ここではゲートフォールド仕様のLPとして出ている。CD版に対して「Mudlark」と「Rivers of London」の2曲が追加されているのも、この盤の特徴だ。

Big Big Trainは1990年に結成された独立系のプログレ・バンドで、Greg Spawtonを中心に活動を続けてきた。Folkloreの時点では、元BeardfishのRikard Sjöblomが正式加入し、さらにRachel Hallも正式メンバーとしてクレジットされている。金管アンサンブルやフルート、ヴァイオリン系の音色を含む編成が前面に出ていて、従来のシンフォニックな厚みの上に、より物語性の強い音像が乗る構成になっている。

英国の記憶をたどるアルバム

タイトルの通り、この作品は英国各地の民俗、土地、史実を題材にした楽曲が並ぶ。楽曲ごとの題材が具体的で、抽象的なイメージよりも、実在の出来事や場所を積み重ねていく作りが目立つ。バンドの過去作でも英国的な風景や歴史への視線はあったが、本作ではその方向がより明確になっている。

たとえば「Winkie」は、第二次世界大戦中に北海へ不時着した爆撃機の乗員救助につながった伝書鳩Winkieの実話を扱う。鳩が120マイルを飛んで帰還し、その到着時刻から機体の位置が割り出されたというエピソードは有名で、楽曲もその逸話をそのまま軸に据えている。「Brooklands」は12分を超える大曲で、Brooklands出身のレーシングドライバーJohn Cobbの生涯を描く。陸上速度記録の樹立、そしてネス湖での水上速度記録挑戦中の事故死まで、ひとつの人生を大きくたどる構成だ。

また「Wassail」は、収穫を願って酒を振る舞う英国の伝統行事を題材にしていて、アルバム全体の民俗的な色合いを支える。こうした題材選びは、Big Big Trainが単にプログレ的な長尺曲を並べるのではなく、英国の風土や記憶そのものを音楽にしていく姿勢を示している。

音の作りと聴きどころ

この作品でまず目に入るのは、編成の広がりである。ギター、キーボード、ベース、ドラムという基本のロック・バンド編成に、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、金管が重なり、場面ごとの色分けが細かい。演奏は派手な技巧の見せ合いに寄りすぎず、曲の流れを崩さない範囲で積み上がる印象が強い。長い曲でもセクションごとの切り替えがはっきりしていて、物語を追うように聴ける作りだ。

実際に聴くと、最初に感じるのは音数の多さよりも、整理された配置である。管楽器が前に出る場面、弦が景色を広げる場面、コーラスが重みを足す場面が分かれていて、各パートの役割が見えやすい。「Brooklands」のような長尺曲では、静かな導入から加速していく流れが明確で、アルバム中の山場として機能している。「Winkie」は題材の具体性がそのまま曲の輪郭につながっていて、ストーリー性が強い。

Big Big Trainの中での位置づけ

Folkloreは、Big Big Trainが2010年代半ばに到達した作風をまとめた作品として見やすい。The Underfall Yard以降に強まった、英国史や鉄道、土地の記憶を素材にする流れがここでさらに整理され、バンドの看板になったパストラルなプログレの形がはっきりする。David Longdonの歌唱を中心に据えつつ、Spawtonの作曲、Sjöblomの加入、Hallの弦楽器が加わることで、音の厚みが一段増した時期でもある。

同時代の英国プログレの中でも、Big Big Trainは技巧の誇示より、題材の選び方とアレンジの積層で聴かせるタイプに入る。GenesisやCamel、Jethro Tullの流れを思わせる部分がありつつ、過去の模倣に寄らず、英国の民話や実話を現代の録音でまとめる姿勢が際立つ。Folkloreは、その方向性をかなり明瞭に示したアルバムとして受け取れる。

盤の特徴

  • 2016年のUK盤LP
  • Plane Groovyによるヴァイナル・エディション
  • ゲートフォールド仕様
  • CD版に対して「Mudlark」「Rivers of London」を追加収録
  • 一部はBurning Shed経由でメンバー直筆サイン入り

Big Big Trainの作品群の中でも、Folkloreは題材、編成、構成のまとまりがはっきりした一枚である。英国の歴史や風習を、長尺のプログレ曲として整理し直した内容で、バンドの持ち味がそのまま出ている。音の密度と物語の具体性、その両方が前に出るアルバムだ。

トラックリスト

  1. A1 Folklore 7:30
  2. A2 Along The Ridgeway 6:06
  3. A3 Salisbury Giant 3:37
  4. B1 London Plane 10:10
  5. B2 Mudlarks 6:12
  6. B3 Lost Rivers Of London 6:02
  7. C1 The Transit Of Venus Across The Sun 7:18
  8. C2 Wassail 6:47
  9. C3 Winkie 8:26
  10. D1 Brooklands 12:39
  11. D2 Telling The Bees 6:02

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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