Big Big Train - Ingenious Devices (2023)
Big Big Train 2023

Big Big Train - Ingenious Devices (2023)

Rock Prog Rock

Big Big Train『Ingenious Devices』(2023)について

Big Big Trainは、英国ボーンマスを拠点に活動するプログレッシブ・ロック・バンドだ。1990年にGreg Spawtonを中心に始動し、現在もSpawtonが核になって作品を作り続けている。2023年作の『Ingenious Devices』は、バンドの代表的な長尺曲を軸に、新録や再ミックス、未発表の管弦楽曲、ライヴ音源をまとめた企画盤である。単なる寄せ集めではなく、既存曲を別の角度から組み直した構成がはっきりしている。

作品の骨格

本作の中心は「East Coast Racer」「Brooklands」「Voyager」の3曲だ。いずれもBig Big Trainのカタログの中で存在感の大きい楽曲で、ここでは新しい形で提示されている。「East Coast Racer」は、旧アルバム期のDavid Longdonの歌唱を使いながら、2019年時点の編成で新たに組み直した版。「Brooklands」はドラム、ベース、ベースペダルを新録し、「Voyager」には追加のギターとヴァイオリンが加わっている。3曲とも再ミックスされ、同じ素材でも輪郭の出し方が変わっている。

さらに、弦楽アレンジを前面に置いた「The Book of Ingenious Devices」、そして2022年9月にAylesburyのWaterside Theatreで録音されたライヴ「Atlantic Cable」が収録される。全体としては、過去曲の再編集盤というより、関連する4曲を一本の作品として並べ直した印象が強い。

Big Big Trainらしさと、この時期の位置づけ

Big Big Trainは、物語性のある構成、歴史や風景を題材にした作風、そして長尺の展開で知られるバンドだ。『Ingenious Devices』でもその特徴はそのまま出ている。特に弦楽セクションの使い方が大きく、Abbey Road Studiosで録音された17人編成のストリングスが、曲の推進力と細部の密度を押し上げている。

この時期のBig Big Trainは、2021年に亡くなったDavid Longdonの存在が大きい。公式説明でも、本作はLongdonの歌唱を含む3曲を通じて彼への敬意を示す内容として扱われている。作品全体の流れの中で、過去の楽曲をただ残すのではなく、現在の編成と制作体制で再提示している点が、このアルバムの重要な部分だ。

楽曲ごとの見どころ

「East Coast Racer」は、本作の中でも特に位置づけが明確な曲だ。元の楽曲の印象を保ちながら、オーケストラ的な広がりが加わり、構成の見通しが変わっている。鉄道を題材にしたこの曲は、Big Big Trainの代表曲の一つとして扱われることが多く、ここでは新たな完成形として再提示されている。

「Brooklands」は、Greg Spawton自身が以前から満足しきれなかった曲として言及されており、本作では弦楽の追加によって曲の骨格が整理されている。「Voyager」も同様に、追加パートによって厚みが増している。いずれも、単純な音数の増加ではなく、曲の流れをもう一段階はっきりさせる方向の作業だ。

「Atlantic Cable」はライヴ録音で、スタジオ収録の3曲とは違う空気を持つ。ここでは新ヴォーカリストAlberto Bravinの存在が前に出て、バンドが次の段階へ進んでいることを示す締めくくりになっている。

音楽性と同時代の文脈

Big Big Trainは、YESやGenesisの系譜にある英国プログレの文法を受け継ぎつつ、現代的な録音で整理したサウンドを作るバンドとして語られることが多い。『Ingenious Devices』でもその方向性は明確で、長尺曲の展開、アコースティック楽器とエレクトリック楽器の重なり、合唱的なボーカル処理、弦とブラスの配置が、バンドの持ち味としてまとまっている。

この作品は、初期の代表曲を現在の編成で再構築する試みでもあり、過去のカタログを別の形で読み直す動きとしても見える。オリジナル版の記録性と、2023年版の再構成が並んでいる点が面白いところだ。盤としてはゲートフォールド仕様で、ブラック・ポリ製インナーと両面の歌詞シートが付属する。

まとめ

『Ingenious Devices』は、Big Big Trainの代表的な長尺曲を、弦楽アレンジと再録・再ミックスで組み直した2023年の作品だ。過去曲の再編集でありながら、David Longdonへの追悼、新ヴォーカル体制の提示、バンドの現在地の確認が同時に入っている。Big Big Trainの作品群の中でも、過去と現在をつなぐ位置に置かれる一枚として整理できる。

トラックリスト

  1. A1 East Coast Racer 15:52
  2. B2 The Book Of Ingenious Devices 1:23
  3. B3 Brooklands 12:29
  4. C4 Voyager 14:10
  5. D5 Atlantic Cable (Live) 15:24

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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