Vinyl Record Reviews
Protomartyrは、アメリカ・ミシガン州デトロイト出身のロック・バンドだ。ポストパンクを軸に、アートロック、ノイズロック、ゴスロックの要素を持つ。メンバーはKevin Boyer、Greg Ahee、Joe Casey、Scott Davidson、Alex Leonardで、現在の編成に至るまでにベースの交代もあった。
結成の母体になったのは、ギタリストのGreg AheeとドラマーのAlex Leonardによるパンク・バンド「Butt Babies」だ。Aheeがデトロイトのジェム・シアターでドアマンとして働いていた時期に、同僚だったJoe Caseyと音楽の話や、共通の知人でもあるガレージ・パンク・バンドTyvekの話で意気投合したことが始まりとされている。
Joe Caseyはそれまで本格的なバンド経験がなく、Tyvekのツアーに同行したことがある程度だったが、2010年に33歳でボーカルとして加入した。初期メンバーにはTyvekのKevin Boyerがベースで参加し、その後Scott Davidsonがベースを務めるようになった。
バンド名の「Protomartyr」は、キリスト教最初の殉教者とされる聖ステファノを指す言葉だ。
Joe Caseyは1977年生まれで、舞台恐怖症を抱えている。ステージではビールを持ち込んで緊張をしのぐことがあるという。2008年3月に72歳の父を手術の合併症で亡くした経験は、本人にとって大きな転機になり、その後の歌詞に強く影響した。
彼の歌詞は、自由連想的な「ブルーカラーのビート詩」と評されることがある。内容には、哲学、ギリシャ神話、実存主義の要素が入り、そこにデトロイトの風景や生活感のある描写が重なる。歌声はバリトンで、イアン・カーティスやマーク・E・スミスと比較されることがある。
パーケイ・コーツのアンドリュー・サヴェージは、Caseyについて「今最高のリード・シンガーのひとり。ステージでのあの感じは“キャラ”ですらなく、ただの彼そのものなんだ」と語っている。
Protomartyrは2012年にUrinal Cake Recordsから『No Passion All Technique』でデビューした。続いて2014年にハードリー・アートから『Under Color of Official Right』、2015年に『The Agent Intellect』を発表している。
『The Agent Intellect』は、アリストテレスとアルツハイマー病の両方から着想を得た作品として知られる。収録曲「Why Does It Shake?」は、Joe Caseyの母親がアルツハイマー病と診断されたことがきっかけになったという。このアルバムは、ローリング・ストーン誌、スピン誌、A.V.クラブの2015年年間ベストにも選ばれている。
その後はドミノへ移籍し、『Relatives in Descent』(2017年)、『Ultimate Success Today』(2020年)、『Formal Growth in the Desert』(2023年)、『Hotel Usona』(2026年)を発表している。
Protomartyrのサウンドは、70年代の英国ポストパンクにある陰鬱さと、デトロイトのガレージ・ロックにある荒さを組み合わせたものとされ、比較対象としては、Wire、The Fall、Pere Ubuの名前が挙がる。
イギー・ポップはBBC Radio 6 Musicの自身の番組で、Protomartyrを「今アメリカにいる最高のバンド」と紹介している。