Bauhaus - In The Flat Field (1980)
Bauhaus 1980

Bauhaus - In The Flat Field (1980)

Rock Post-Punk Goth Rock

Bauhaus『In The Flat Field』──ポストパンクの先で形を持った、1980年のデビュー作

Bauhausの『In The Flat Field』は、1980年にUKの4ADから登場したファースト・アルバムだ。のちにゴスロックの原型として語られることの多い作品だが、内容は単に暗いだけではない。鋭いギター、引き締まったリズム、Peter Murphyの演劇的な歌唱が前面に出た、かなり輪郭のはっきりしたアルバムである。Bauhausというバンド名自体が示すように、最初から音だけでなく視覚や空気感まで含めて設計されたような作品で、1980年という時点でここまで独自の様式を持っていたことにまず目を引かれる。

バンドの出発点と、このアルバムの位置

Bauhausは1978年にノーサンプトンで結成された英ポストパンク・バンドで、Peter Murphy、Daniel Ash、Kevin Haskins、David Haskinsの4人編成。この『In The Flat Field』は、その初期の美学をアルバム単位でまとめた最初の到達点にあたる。先行シングルとして知られる「Dark Entries」や「Terror Couple Kill Colonel」で見せていた不穏さ、切り詰めた演奏、そして舞台的な振る舞いが、そのまま長編に拡張された印象が強い。

当時の英国ロックの文脈で見ると、パンク以後の次の表現を探る流れの中にある作品だが、Bauhausは同時代のバンドの中でもかなり異質だ。Gang of Fourのような硬質なリズム感とも、Joy Divisionのような内省とも少し違う。むしろ、音の隙間や声の置き方、曲の展開そのものに演劇性を持ち込んでいる点が、この作品の際立ったところだろう。

収録曲の核にあるもの

アルバム冒頭の「Double Dare」は、短いイントロから一気に引き込む構成で、最初の1曲目からこのバンドの気配がはっきり出る。「In the Flat Field」はタイトル曲らしく、アルバム全体の空気を代表するような曲で、低音の圧と声の張り方が強い。「St. Vitus Dance」や「Dive」では、リズムの推進力とギターの刺し方が前に出て、単なる陰鬱さでは終わらない動きがある。

中でも「Bela Lugosi's Dead」は、このアルバムと直接の収録関係ではないものの、Bauhausを語るときに外せない代表曲としてよく挙がる。長尺で、間の取り方が極端で、後のゴスロック像を決定づけた1曲として知られる。『In The Flat Field』は、その曲で示された美学を、アルバムとしてもう一段押し広げた位置づけにあると見てよさそうだ。

音の質感と、聴いてわかる強さ

実際に耳を通すと、この作品は「暗い雰囲気」だけで語れない。ベースは前に出るが、ただ重いだけではなく、曲によってはかなり機動的だ。ドラムは空間を埋めすぎず、むしろ緊張を保つ役割が大きい。Daniel Ashのギターも、メロディをなぞるというより、ノイズや和音の角で場面を切り替えていく感じがある。Peter Murphyの歌は、感情を直接ぶつけるというより、言葉の子音や伸ばし方まで含めて見せるタイプで、結果として全体がかなり劇的に聞こえる。

そのため、いわゆる「ゴス」のイメージに回収される一方で、パンク由来の切迫感や、ポストパンクらしい冷えた構造もはっきり残っている。後年のゴシック・ロック勢、たとえばSisters of MercyやFields of the Nephilimのようなバンドを思い浮かべると、その前段階としての輪郭が見えやすい。とはいえ、Bauhaus自身はその後の型にきれいに収まる存在ではなく、このアルバムもまた、定型より先にある手触りを持っている。

制作とオリジナル盤の情報

オリジナルのUK盤は4ADのCAD 13。青い4ADラベルで、マットな白黒スリーブ、内袋には歌詞が載る仕様だった。録音はロンドンのSouthern Studiosが中心で、A1のみMaida Vale StudiosでBBC Recordsの手配によって録音されたとされる。マスタリングはUtopiaのものが使われ、ランアウト部のライアー記号で示されている。こうした初期4ADらしい整理されたパッケージも、この時期のレーベルの個性をよく表している。

4AD自体も1980年創設のレーベルで、この作品はその初期カタログの重要な一枚にあたる。のちの4ADが持つ視覚面の強さや、アーティスト像の作り方を考えると、Bauhausのような存在が早い段階でそこにいた意味は大きい。

当時の反応と、その後の評価

発売当時の英国週刊音楽紙の反応はかなり厳しかったとされる。一方で、インディー・シーンでは強く支持され、UKインディー・アルバム・チャートでは首位を記録した。全英アルバム・チャートでは最高72位を記録している。つまり、広い意味での商業的成功というより、先に現場とインディー側が反応した作品だったわけだ。

現在では、1980年時点でここまで様式化されたポストパンク/ゴスロック作品が出ていたこと自体が、かなり重要に見える。Bauhausはこの後も活動を続けるが、『In The Flat Field』はその出発点として、バンドの輪郭をもっともはっきり刻んだアルバムのひとつだろう。初期4AD、初期ゴス、ポストパンクの接点にある一枚として、今でもその位置は揺れていないように思える。

トラックリスト

  1. A1 Double Dare 4:57
  2. A2 In The Flat Field 4:00
  3. A3 A God In An Alcove 4:07
  4. A4 Dive 2:10
  5. A5 The Spy In The Cab 4:27
  6. B1 Small Talk Stinks 3:35
  7. B2 St. Vitus Dance 3:30
  8. B3 Stigmata Martyr 3:37
  9. B4 Nerves 7:10

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