Wire - Chairs Missing (1978)
Wire 1978

Wire - Chairs Missing (1978)

Rock New Wave Post-Punk

Wire『Chairs Missing』について

Wireの『Chairs Missing』は、1978年に発表された2作目のアルバムだ。1976年にロンドンで結成されたこのバンドは、初期UKパンクの現場から出発しながら、すぐにその枠を広げていった存在として知られている。デビュー作『Pink Flag』の勢いを受けつつ、本作では曲の構造、音の置き方、ギターの処理がより整理され、後のポストパンクに直結する手つきがはっきり見える。2018年盤はPinkflagレーベルからのヨーロッパ盤で、オリジナルの1978年作品を現在の形で聴ける再発盤という位置づけになる。

Wireの初期3作は、パンクを出発点にしながら、作品ごとに音の輪郭を変えていく流れの中にある。その中で『Chairs Missing』は、荒々しい初期衝動だけで押し切るのではなく、空間の使い方や不穏な静けさを前面に出した作品として見やすい。The CureやJoy Division、Gang of Four、Siouxsie and the Bansheesといった同時代の英国勢と並べて語られることも多いが、Wireはその中でも曲の切れ方と音の配置がかなり独特だ。短い曲でも、ただ速いだけでは終わらない。

アルバム全体の流れ

収録曲は、パンクの速度感を残しながらも、リズムの反復やギターのエフェクト処理によって、聴き手の視線を少しずつずらしていく。演奏はタイトだが、音数を詰め込みすぎないため、各パートの役割がはっきりしている。ベースは輪郭を支え、ドラムは直線的に進み、ギターはリフというより断片として置かれる場面が多い。ボーカルも感情を押し出すというより、言葉の配置を優先するタイプで、その乾いた感じが作品全体の温度を決めている。

2018年盤は、オリジナルの楽曲構成をそのまま受け継ぎながら、現行のレコードとして手に取りやすい形に整えられている。Wireは後年に自らのカタログをPinkflagで扱うようになり、初期作の再発もその流れの中で聴けるようになった。盤としては新しいが、内容は1978年当時のWireの到達点をそのまま確認できる一枚だ。

注目曲「Outdoor Miner」

本作を語るうえで外せないのが「Outdoor Miner」だ。Wireの中でも比較的メロディが前に出る曲で、アルバム全体の中では少し異質に聞こえるかもしれない。とはいえ、単純に聴きやすいだけの曲ではなく、短い尺の中で旋律、リズム、コード進行がきれいに整理されている。歌の入り方も含めて、必要な要素だけを置いたような作りで、Wireの作曲の精度がよく出ている。

この曲は後年にシングルとしても知られるようになり、アルバムの代表曲として扱われることが多い。パンクの直線性とポップな輪郭が同居していて、Wireが単なる硬質なバンドではないことを示す一曲でもある。曲だけ切り出すと軽やかに聞こえるが、アルバムの中に置くと、その明るさがかえって全体の陰影を浮かび上がらせる。

注目曲「Practice Makes Perfect」

「Practice Makes Perfect」は、Wireらしい緊張感が強く出る曲だ。リズムは前へ進むが、ギターの入り方や歌の置き方に妙な間があり、単純な勢いだけでは終わらない。演奏が整っている一方で、どこかひっかかる感触が残るのが面白い。ここでは、Wireがパンクの速度を保ったまま、構造のある曲へ移行していく様子が見えやすい。

この曲を聴くと、Wireが後のポストパンク勢に与えた影響の輪郭もつかみやすい。たとえばGang of Fourのような鋭いリフの扱い、あるいはThe Fallのような反復の感覚と比較してみると、Wireはより乾いた設計で曲を組んでいる印象がある。勢いだけで押さず、短いフレーズの積み重ねで引っ張るところに、このバンドの特徴がある。

作品の位置づけ

『Chairs Missing』は、Wireが初期パンクの文脈から一歩進み、ポストパンクの核に近づいていく過程を示す作品として重要だと思う。デビュー作の鋭さを残しながら、音の隙間、曲の切り替え、メロディの扱いがより意識的になっている。ここで見せた手つきは、次作『154』でさらに広がっていくが、その前段として本作の役割は大きい。

1978年という時点で、ここまで音を削り、構造を見せる作りをしていたのはかなり先を行っていたと言える。派手なヒット狙いの作品ではないが、Wireのディスコグラフィーの中では、バンドの方向性がはっきり立ち上がる一枚だ。パンクの速度と、ポストパンクの知的な整理、その両方が同じ盤面に収まっているところに、このアルバムの面白さがある。

トラックリスト

  1. A1 Practice Makes Perfect 4:06
  2. A2 French Film Blurred 2:35
  3. A3 Another The Letter 1:06
  4. A4 Men 2nd 1:43
  5. A5 Marooned 2:21
  6. A6 Sand In My Joints 1:51
  7. A7 Being Sucked In Again 3:12
  8. A8 Heartbeat 3:15
  9. B1 Mercy 5:46
  10. B2 Outdoor Miner 1:45
  11. B3 I Am The Fly 3:06
  12. B4 I Feel Mysterious Today 1:56
  13. B5 From The Nursery 3:00
  14. B6 Used To 2:21
  15. B7 Too Late 4:16

動画

Share
記事一覧に戻る
toast