Gabor Szabo - Dreams (1968)
Gabor Szabo『Dreams』(1968)
Gabor Szaboの『Dreams』は、1968年にUSのSkye Recordsから発表されたアルバムで、彼の音楽性がかなりはっきり見える一枚だ。ハンガリー出身のジャズ・ギタリストであるSzaboは、ジャズの語法を土台にしながら、ポップスやロック以後の感覚、さらに東欧的な旋律の気配まで取り込んでいく人だった。この作品でも、その混ざり方が前面に出ている。単なるジャズ作品というより、当時の空気をそのまま吸い込んだような内容で、後年の再評価も大きいアルバムとして知られている。
Skye Records期の中心的な1枚
このアルバムが重要なのは、Gabor Szabo自身がCal Tjader、Gary McFarland、Norman Schwartzらと立ち上げたSkye Recordsから出ている点にもある。つまり、レーベルの方針の中で作られた作品というより、Szaboたちが自分たちの理想を実現する場として動かしていた流れの中にある。1968年はSzaboが複数の作品を発表していた時期でもあり、『Dreams』はその中核に置かれる一枚と見てよさそうだ。
録音は1968年8月、ロサンゼルスのWestern RecordingとニューヨークのGotham Recordingで行われた。西海岸と東海岸のスタジオをまたいでいる点も、当時の制作環境をうかがわせる要素になっている。Gatefoldのラミネート仕様のジャケットという物理的な作りも、レコードとしての存在感を強めている。
収録曲と演奏の輪郭
収録曲はオリジナル曲に加えて、既存曲をSzabo流に組み替えたものが中心だ。A1「Galatea's Guitar」、A2「Half the Day Is the Night」、A4「Fire Dance」、B2「The Fortune Teller」などでは、ギターの音の立ち上がりがはっきりしていて、コードの進行よりもフレーズの運びが耳に残る。A3「Song of Enchantment」やB1「The Last Judgement」では、曲そのものの輪郭よりも、和声の置き方や間の取り方にSzaboらしさが出る。
特に「Galatea's Guitar」は、このアルバムを語るうえでよく挙げられる曲だ。映画『The Kids Are All Right』で使われたことでも知られていて、後年の聴き手にまで届いた代表的な一曲になっている。派手な見せ場を前に出すタイプではないが、音の並びに引っかかりがあり、何度か聴くうちに細部が見えてくるタイプの曲だ。
音の特徴と当時の文脈
『Dreams』を聴くと、60年代後半のジャズが通っていた複数の方向が一枚の中に入っているのがわかる。ポスト・バップの語法を基礎にしながら、ソウル・ジャズのわかりやすい推進力もあり、さらに前衛寄りの処理も混ざる。とはいえ、どれか一つに寄り切らない。ギターの音色が前に出る場面でも、リズム隊が単純な伴奏に収まらず、曲全体の流れを支える構図になっている。
同時代のギタリストでいえば、Wes Montgomeryのようなメロディの明快さや、Jim Hallのような間合いの取り方と比較されることはあるが、Szaboはそこに自分の出自を含む別の旋律感覚を持ち込んでいる。西欧のジャズ・ギターの系譜にそのまま収まらないところが、この人の個性だろう。後のジャズ・フュージョンや、欧州的な感触を持つインスト作品の先触れとして語られることがあるのも納得しやすい。
作品の位置づけ
Gabor Szaboのキャリアの中では、『Dreams』は代表作の一つとして扱われることが多い。商業的なヒット作というより、後世のリスナーやコレクターのあいだで価値が強まっていったタイプのアルバムだ。Skye Records自体が短命だったこともあり、レーベル史の中でも印象に残るタイトルになっている。
また、収録曲の使われ方や、再発見されていく過程も含めて、この作品は長く聴かれてきた。1968年という年の空気をまといながら、ジャズの枠の外側にも届いていく感触がある。Gabor Szaboというギタリストが、アメリカでどう自分の音楽を形にしていたのかを知るうえでも、かなり重要な一枚だ。
収録曲
- A1. Galatea's Guitar
- A2. Half the Day Is the Night
- A3. Song of Enchantment
- A4. Fire Dance
- B1. The Last Judgement
- B2. The Fortune Teller
- B3. Comin' Back
『Dreams』は、Gabor Szaboの音楽が「ジャズの中の変化球」ではなく、彼自身の言語としてまとまっていることを示す作品だ。録音、曲の選び方、レーベルの成り立ちまで含めて、1968年の一枚として見ると輪郭がよりはっきりしてくる。
トラックリスト
- A1 Galatea's Guitar 5:33
- A2 Half The Day Is Night 4:23
- A3 Song Of The Injured Love 4:05
- A4 The Fortune Teller 4:28
- B1 Fire Dance 5:39
- B2 The Lady In The Moon (From Kodaly) 5:13
- B3 Ferris Wheel 5:27