Gary Wilson - You Think You Really Know Me (1977)
Gary Wilson『You Think You Really Know Me』(1977)レビュー
Gary Wilsonの『You Think You Really Know Me』は、1977年にUSで発表されたデビュー作にして、本人の名を長く残すことになった代表作だ。電子音、ロック、ファンク、ポップが同居する一枚で、当時のニューウェーブ周辺の感覚とも接点を持ちながら、既存のどの枠にもきれいには収まりきらない。後年になってカルト的な支持を集めた作品として知られ、Gary Wilsonという人物像そのものを語るうえでも外せないアルバムである。
レーベルはMCM。ニューヨーク州エンディコットのローカルなレーベルで、Gary Wilson作品のために使われたものとして記録されている。初回は300枚、その後さらに同内容で300枚が追加されたとされ、流通量の少なさもこの作品の存在感を際立たせている。黒白のジャケットに、写真インサート、歌詞インサート、インナー・スリーブ付きという構成も、いかにも自主制作的な手触りを伝えるものだ。
Gary Wilsonという作家の位置づけ
Gary Wilsonは、実験的な音楽家でありパフォーマンス・アーティストとして語られることが多い。『You Think You Really Know Me』のあと、録音やライヴ活動からいったん距離を置き、のちに80年代から90年代にかけてじわじわとカルト人気を広げた。2000年代初頭には再び活動を活発化させている。つまりこのアルバムは、単なる初期作ではなく、いったん本人の表舞台を閉じることになる節目の作品でもある。
音の作りは、いわゆる整ったポップ・アルバムとはかなり違う。リズムの置き方、声の出し方、曲の切り替わり方に、普通のロックやファンクの流れから少し外れた感触がある。とはいえ難解さだけに寄らず、短いフレーズや反復、キーボードやベースの動きが耳に残る場面も多い。70年代後半のニューウェーブや実験ポップ、ファンクの周辺で起きていた“崩れ方”のひとつとして聴ける一枚だと思う。
作品全体の聴こえ方
このアルバムを通して聴くと、曲ごとの性格がかなり違うのに、全体ではひとつの視界にまとまっているのがわかる。ファンク寄りのグルーヴが出る曲もあれば、リズムが不安定に感じられる曲、歌メロが妙に素直に響く曲もある。録音の質感は大きく磨き込まれているわけではないが、そのぶん演奏や歌のクセが前に出る。手作り感のある仕上がりが、内容とそのまま結びついている印象だ。
同時代の文脈で見ると、Tom VerlaineやDevoのようなニューウェーブの知性化された方向とも、FunkadelicやGeorge Clinton系のファンクとも、一定の距離を保っている。むしろ、そこから少しだけ外れた場所で、ポップの形を保ちながら歪みを入れていく感覚が近い。比較対象をひとつに絞るのは難しいが、奇妙さとキャッチーさが同居する点で、後年の宅録的なポップ感覚にもつながる要素がある。
注目曲について
アルバムの表題にもなっている「You Think You Really Know Me」は、この作品の性格を端的に示す中心曲として聴こえる。タイトルからして自己言及的で、相手との距離感や誤解を扱うような空気がある。音楽面では、整ったヒット曲の書法というより、フレーズの繰り返しと不穏さが同時に進むタイプで、言葉の置き方とリズムのズレが印象に残る。Gary Wilsonの歌声も、感情を強く押し出すというより、少し引いた位置から独特の温度で進んでいく。
この曲は、後年にカルト盤として語られる際の入口にもなっている。派手な展開や大きなサビで引っ張るのではなく、妙に頭に残る断片が積み重なっていくタイプで、聴いた直後よりも、しばらくしてから輪郭が浮かぶような曲だ。アルバム全体の中でも、Gary Wilsonという人物の見え方を決める看板曲として機能している。
もうひとつ、この作品ではグルーヴが前に出る曲群にも注目したい。ファンクの要素が入る場面では、単に踊れる方向へ寄るのではなく、ベースやドラムの反復に少しだけ違和感が混ざる。その違和感が、結果として曲を平坦にしない。ポップな輪郭を持ちながら、どこか不安定なまま進行する感じが、このアルバムの持ち味になっている。
また、ニューウェーブ的な乾いた感覚が見える曲では、演奏の隙間や音の置き方が目立つ。ギターやキーボードが前面に出すぎず、歌との距離を保ちながら進むため、全体の空気が少し冷えて聴こえる場面もある。ここでは「洗練」よりも「配置」の妙が重要で、どの音も過剰に説明しないまま曲を成立させている。
この盤の価値
1977年のオリジナル盤としての『You Think You Really Know Me』は、Gary Wilsonという異色の作家が最初に残した輪郭そのものだ。流通量の少なさ、ローカル・レーベルからの発表、黒白ジャケットという体裁まで含めて、作品の性格をよく伝えている。のちにカルト視される理由も、この時点ですでにかなりはっきりしている。ポップ、ファンク、実験性の接点で、簡単には分類しにくい音を記録したアルバムとして、1970年代後半の変則的な一枚に位置づけられる。
派手な成功譚というより、ひとりの作家が自分のやり方で残した初期の到達点。そういう見方が似合う作品だと思う。
トラックリスト
- A1 Another Time I Could Have Loved You 1:21
- A2 You Keep On Looking 2:08
- A3 6.4 = Make Out 5:06
- A4 When You Walk Into My Dreams 2:41
- A5 Loneliness 3:05
- A6 Cindy 2:53
- B1 You Were Too Good To Be True 2:01
- B2 Groovy Girls Make Love At The Beach 4:09
- B3 I Wanna Lose Control 2:25
- B4 You Think You Really Know Me 2:10
- B5 Chromium Bitch 3:32
- B6 And Then I Kissed Your Lips 2:49
動画
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gary wilson - you think you really know me (full album)
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *Another Time I Could Have Loved You*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *You Keep On Looking*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *6. 4 = Make Out*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *When You Walk Into My Dreams*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *Loneliness*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *Cindy*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *You Were Too Good To Be True*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *Groovy Girls Make Love At The Beach*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *I Wanna Lose Control*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *You Think You Really Know Me*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *Chromium Bitch*
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Gary Wilson "You Think You Really Know Me" 1977 *And Then I Kissed Your Lips*