Mick Jagger - Wandering Spirit (1993)
Mick Jagger 1993

Mick Jagger - Wandering Spirit (1993)

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Mick Jagger『Wandering Spirit』――ソロ名義での再確認となった1993年作

Mick Jaggerの『Wandering Spirit』は、1993年に発表されたソロ・アルバムである。The Rolling Stonesのフロントマンとして長く活動してきた彼が、バンドの看板とは少し距離を置き、自分の声と曲作りを前面に出した作品として位置づけられる。タイトル曲を含む本作は、ロックを軸にしながらも、ポップ、フォーク、カントリーの要素を自然に混ぜた内容で、Jaggerのソロ作の中でもまとまりのある一枚として知られている。

この盤は1993年のヨーロッパ盤で、Atlanticからのリリース。レーベル番号は7567-82436-1で、当時のワーナー系流通の中で出たアナログ盤という見方がしやすい。90年代前半はCD主流へと移りつつあった時期だが、こうしたLPは作品の空気感をまとまった形で味わえる点がある。『Wandering Spirit』も、曲順を通して聴くことで、ソロ作品としての輪郭がつかみやすいアルバムだ。

Rolling Stonesの延長線上にあるが、同じではない

Jaggerのソロ作品は、どうしてもRolling Stonesとの比較で語られやすい。本作もその例外ではないが、単なる余技ではなく、彼自身の視点を前に出したアルバムとして聴こえる。バンドでの役割が強い人物だからこそ、ソロでは歌の置き方や言葉の運びがよりはっきり見える。ギター主体のロックを中心にしつつ、曲ごとの温度差をあえて残しているところに、ソロならではの作り方がある。

同時代のロック作品と比べると、派手なサウンドの更新を狙うというより、70年代型のバンド・ロックの手触りを保ちながら1990年代の制作感でまとめた印象が強い。ストーンズ周辺のファンが期待する硬質なノリと、ソロ名義ならではの内省的な空気が同居しているのが面白いところだ。

タイトル曲「Wandering Spirit」について

タイトル曲「Wandering Spirit」は、本作の性格を端的に示す一曲である。アルバム全体の中でも、Jaggerの声の押し出しと、曲の推進力がわかりやすい。Rolling Stonesの楽曲で聴く彼の歌唱よりも、少し個人の輪郭が前に出る印象があり、ソロ作品としての存在感を作っている。タイトルにある「さまよう魂」という言葉どおり、固定されたイメージに収まりきらないJagger像をそのまま示すような配置だ。

音の作りは過度に装飾的ではなく、リズムと歌を軸に進む。大きなサビで押し切るというより、フレーズの反復とバンドの粘りで引っ張るタイプで、90年代初頭のロック作品の中でも古典的な感触が残る。ここではJaggerが単に“歌う人”ではなく、曲全体の空気を組み立てる側に立っていることがよくわかる。

代表曲としての「Sweet Thing」「Out of Focus」

「Sweet Thing」は、本作の中でも比較的耳に残りやすい曲として挙げやすい。ロックの骨格は保ちながら、メロディの流れが明確で、Jaggerのボーカルの滑らかさが前面に出る。Rolling Stonesの攻撃的な曲調とは少し違い、ソロらしく歌そのものを聴かせる方向に寄っているのが特徴だ。派手な展開を詰め込むのではなく、フックの置き方で印象を残すタイプの曲である。

「Out of Focus」も、アルバムの流れの中で重要な位置を占める。タイトルが示すように、少し視点をずらしたような感覚があり、全体の中で温度を落とす役割を持つ。こうした曲があることで、アルバムは単なるロックの連打にならず、曲間の表情が生まれている。Jaggerのソロ作を聴く面白さは、こうした“バンドでなら前に出しすぎないかもしれない要素”が自然に入っている点にもある。

収録曲全体の流れ

『Wandering Spirit』は、ヒット曲だけを並べるタイプのアルバムではないが、通して聴くと曲調の振れ幅がちょうどよい。ロックンロールの推進力、ブルース寄りの粘り、ポップ寄りの歌の運びがバランスよく配置され、Jaggerのキャリアの中で培われた要素が整理された形で見えてくる。ソロ作としては、自己主張が過剰に尖るのではなく、曲ごとの役割がはっきりしている印象だ。

また、1993年という時代を考えると、このアルバムはグランジやオルタナティヴの大きな波の只中にありながら、あえて別のロックの文法を保っている作品でもある。流行に寄せるというより、自分の持ち場を確認するような作りで、Jaggerが長年のキャリアの中で何を自分の核としているかが伝わる。

ヨーロッパ盤LPとしての魅力

このヨーロッパ盤は、1993年当時のオリジナル期の空気をそのまま持つ一枚として見てよい。Atlantic盤らしい整った流通の中で出たタイトルで、アナログで聴くと曲間のつながりや低域のまとまりがわかりやすい。CD時代に出た作品ではあるが、LPで手に取るとアルバム単位で作られている感覚が強く、Jaggerのボーカルを中心にしたロック作品としての輪郭がより見えやすい。

『Wandering Spirit』は、Mick JaggerがRolling Stonesの象徴的な存在である一方で、ソロでも自分の表現をきちんと成立させる人物だと示した作品である。大きな変化球ではなく、積み重ねてきたロックの語法を使いながら、個人名義のアルバムとしてまとめ上げた一枚。90年代のJaggerを知るうえで外しにくいタイトルだ。

トラックリスト

  1. A1 Wired All Night 4:05
  2. A2 Sweet Thing 4:34
  3. A3 Out Of Focus 4:31
  4. A4 Don't Tear Me Up 4:10
  5. A5 Put Me In The Trash 3:34
  6. A6 Use Me 4:25
  7. A7 Evening Gown 3:34
  8. B1 Mother Of A Man 4:17
  9. B2 Think 2:58
  10. B3 Wandering Spirit 4:16
  11. B4 Hang On To Me Tonight 4:34
  12. B5 I've Been Lonely For So Long 3:26
  13. B6 Angel In My Heart 3:21
  14. B7 Handsome Molly 2:03

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