Herb Alpert - Rise (1979)
Herb Alpert 1979

Herb Alpert - Rise (1979)

Jazz Funk / Soul Jazz-Funk Smooth Jazz

Herb Alpert「Rise」(1979)

ハーブ・アルパートの「Rise」は、1979年という時代の空気をそのまま吸い込んだような1枚だ。トランペット奏者、ヴォーカリスト、作曲家、バンドリーダー、プロデューサーとして長く活動してきたアルパートが、60年代のティファナ・ブラス的なイメージから一歩進み、ジャズ、ファンク、ソウル、ディスコの要素をまとめ上げた作品として知られている。A&M Recordsからのリリースで、同レーベルの共同設立者でもある彼自身のキャリアを考えると、かなり象徴的なタイトルでもある。

作品の位置づけ

このアルバムは、アルパートにとって70年代後半の再浮上を示す作品として語られることが多い。特に同名曲「Rise」のヒットが大きく、インストゥルメンタル曲でありながらBillboard Hot 100で1位を獲得し、2週にわたって首位を維持した。アルパートにとっては「This Guy’s in Love with You」以来の大きな成功であり、しかもトランペット主体のインスト曲がポップチャートの頂点に立った点に、この作品の特別さがある。

アルバム全体も、そのシングルの印象に引っ張られる形で、当時のダンス・ミュージックの文法を取り入れた作りになっている。A&M StudiosのStudio Dで録音され、A1以外の曲は3M-32トラックのデジタル機材で録音してからアナログ編集に回されたとされる。1979年という時期を考えると、録音技術の面でも時代の先端を意識した制作だったことがうかがえる。

サウンドの特徴

聴いてまず分かるのは、従来の“陽気なブラス・ポップ”とは少し違う、リズム重視の組み立てだ。ベースとドラムが前に出て、そこへトランペットのフレーズが乗る。いわゆるスムース・ジャズの先取りのようにも聴こえるが、同時に当時のジャズ・ファンクやディスコの現場感もある。派手に音数を詰め込むというより、必要な音だけを置いていくタイプのアレンジで、そこにアルパートの音色がすっと入ってくる。

表題曲「Rise」は、やはりこの盤の中心だ。のちにクラブDJに支持された12インチ盤の存在も含めて、ダンス・フロアとの結びつきが強い。メロディは分かりやすく、リズムは粘る。インストゥルメンタルなのに、言葉の代わりにフレーズの反復で押し切る構成が印象に残る。アルパートの代表曲として扱われるのも自然な流れだろう。

収録曲とクレジットの見どころ

収録曲のうち、A1以外は3M-32トラックのデジタル機材で録音されたという点も、この作品のトピックのひとつだ。70年代末らしい試みで、音の輪郭に少し独特の整い方がある。参加ミュージシャンも豪華で、Tom Scott、Joe Sample、James Jamerson, Jr. らの名前が並ぶ。各人が所属レーベルの表記つきで参加しているのも当時のレコーディング事情を感じさせる。

作曲クレジットでは、A1からA4にAlmo Music Corp.、A2とA4にBadazz Music、B1、B2、B3、B4にはそれぞれ異なる出版社が記されている。タイトル曲「Rise」は、のちにサンプリングや引用の対象にもなっていくが、ここではまず1979年の完成形そのものを聴くのが筋だろう。

同時代との関係

この時期のA&M周辺を見ても、「Rise」はかなり時代性の強い作品だ。70年代後半のジャズ・ファンク、ソウル、ディスコの流れの中で、より洗練されたクロスオーバー路線に位置づけられる。Miles Davis周辺の電化ファンクや、George Bensonのクロスオーバー成功、あるいは当時のクラブ志向のソウル作品と並べて語られることがあるのも納得できる。とはいえ、アルパートの楽曲はトランペットの歌心が前面に出るぶん、純粋なダンス音楽とも少し違う立ち位置にある。

結果として「Rise」は、ハーブ・アルパートの長いキャリアの中でも、単なるヒット作以上の意味を持つアルバムになっている。60年代のイメージを引きずるのではなく、70年代末の録音技術とクラブ感覚を取り込みながら、自分の楽器を中心に再定義した作品。A&M創設者としての顔と、演奏家としての現在形が重なる1枚として見ると、かなり面白い。

盤について

このUS盤はA&M Records、カタログ番号SP-4790。Columbia, Santa Mariaプレスとされ、ランアウトには「S1」「SM」の刻印が見られる。ラベル表記や配置にいくつかのバリエーションがあるようで、コレクター的にはそのあたりも見どころになる。とはいえ、まずは1979年当時のアルパートがどんな音を鳴らしていたかを知るうえで、重要な1枚であることに変わりはない。

トラックリスト

  1. A1 1980 2:25
  2. A2 Rise 7:37
  3. A3 Behind The Rain 5:34
  4. A4 Rotation 5:12
  5. B1 Street Life 5:01
  6. B2 Love Is 4:28
  7. B3 Angelina 4:13
  8. B4 Aranjuez (Mon Amour) (A-Ron-Ways) 6:42

動画

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