Angela Bofill - Angie (1978)
Angela Bofill『Angie』(1978)
Angela Bofillのデビュー・アルバム『Angie』は、1978年にUSのArista GRPから登場した作品である。GRPのカタログ番号はGRP 5000で、レーベルの立ち上がり直後を示す初期タイトルでもある。ジャズ、ソウル、R&Bのあいだを自然に行き来する歌声を前面に出しながら、当時のニューヨークのスタジオ・シーンの空気をしっかり封じ込めた1枚になっている。
このアルバムは、Angela Bofillにとって最初の本格的な作品であり、同時にArista GRPという新しいレーベルの方向性を示す盤でもある。彼女は友人であるジャズ・フルート奏者Dave Valentinの紹介でDave GrusinとLarry Rosenに出会い、その流れで本作の制作が進んだ。プロデュースはGrusinとRosenが担当し、1977年から1978年にかけてElectric Lady StudiosとA&R Studiosで録音されている。参加ミュージシャンにはSteve Gadd、Eric Gale、Michael Brecker、Ralph MacDonaldらの名が並び、演奏の精度と推進力を支える布陣がそろっている。
アルバムの内容と印象
冒頭の「Under The Moon And Over The Sky」は、5分を超える構成で、アルバムの入口としてかなり重要な役割を担っている。Angela Bofillの声は、ソウル寄りのなめらかさと、ジャズ・ヴォーカルに通じるフレーズの運びを両方持っていて、曲の中でその切り替えがはっきり出る。演奏側も、リズムを強く押し出しすぎず、歌の呼吸を残したまま進む作りで、初作ながら完成度の高い立ち上がりになっている。
本作で広く知られるのが「This Time I’ll Be Sweeter」で、Gwen GuthrieとHaras Fyreの共作曲。R&Bチャートで23位を記録したシングルで、アルバムの中でも代表曲として扱われることが多い。メロディの流れが明快で、Angela Bofillの歌が感情を強く押し出しすぎず、細かなニュアンスで進んでいくタイプの曲である。派手な展開に頼らず、歌そのものの輪郭で引っ張る作り。
全体としては、ジャズの語法を持ちながら、当時のソウル/R&Bのアルバムとしても機能する構成で、スタジオ・ミュージシャンの演奏がその橋渡しをしている。ディスコ時代の空気も少しだけ見えるが、全面的にダンス志向へ振り切るのではなく、歌とアレンジのバランスを保っている点がこの作品の軸になっている。
収録曲とクレジットまわり
収録曲の出版社クレジットを見ると、「Roaring Fork Music/Purple Bull Music」が複数曲に使われており、作家陣の持ち味がアルバム全体に反映されていることがうかがえる。「Jobete Music Company, Inc.」のクレジットもあり、R&Bの文脈に接続する楽曲も含まれている。アルバム末尾には、リリースノートとして「小さな甥Pas」と世界中の子どもたちへの献辞が記されており、作品の題名『Angie』とも呼応する個人的な温度を持っている。
パッケージ面では、℗ & © 1978 Arista Records, Inc.、Printed in U.S.A.の表記があり、US盤としての初期プレスらしい情報がまとまっている。Arista GRPというレーベル名自体も、Dave GrusinとLarry Rosenによるプロダクションの流れから生まれたもので、ジャズ寄りの洗練と当時のアーバン・ソウルを結びつける役割を担っていた。
同時代の文脈
Angela Bofillの歌は、ジャズ寄りのR&Bやスムース・ジャズの流れの中で語られることが多い。1970年代後半のニューヨークでは、ジャズ、フュージョン、ソウルの境界がかなり近く、当時のシーンではこうした横断的な作品が少なくなかった。本作もその文脈に置ける内容で、演奏の骨格にはジャズ・セッションの手触りがあり、歌の表現にはソウルの直接性がある。
後年のAngela Bofillを知っていると、このデビュー作で既に彼女の基本線がかなり明確に出ていることがわかる。のちに「I Try」や「Too Tough」「Angel Of The Night」「Something About You」などで知られるようになるが、その出発点として『Angie』は重要な位置にある。歌の芯を保ったまま、ジャズの編成にも自然に乗る、その初期像がここにある。
まとめ
『Angie』は、Angela Bofillの初期キャリアを語るうえで外せないデビュー作であり、同時にGRPレーベル初期の空気を伝える記録でもある。ヒット曲「This Time I’ll Be Sweeter」を含みながら、アルバム全体ではジャズとソウルの接点を丁寧に描いている。スタジオ・プレイヤーの実力、GrusinとRosenの制作、そしてBofillの声の個性が、1978年という時点できれいにまとまった1枚である。
トラックリスト
- A1 Under The Moon And Over The Sky 5:43
- A2 This Time I'll Be Sweeter 4:18
- A3 Baby, I Need Your Love 4:12
- A4 Rough Times 4:36
- B1 The Only Thing I Would Wish For 4:22
- B2 Summer Days 5:10
- B3 Share Your Love 5:12
- B4 Children Of The World United 5:48