Mark-Almond - To The Heart (1976)
Mark-Almond 1976

Mark-Almond - To The Heart (1976)

Rock Jazz Smooth Jazz

Mark-Almond『To The Heart』(1976)

Mark-Almondの『To The Heart』は、1976年にUSのABC Recordsから出たアルバムで、Jon MarkとJohnny Almondを軸にした英ジャズ/ロック・グループの中期を代表する1枚として位置づけられる作品だ。前年に再びデュオ編成へ戻ったのちに制作された作品で、バンド名義ではあるが、実質的にはこの2人の関係性が強く出た内容になっている。録音はサンフランシスコのCBS StudiosとロサンゼルスのABC Studiosで行われ、当時のABCらしい都会的な制作環境も背景にある。

作品の輪郭

全6曲、約40分という構成で、長尺の組曲的な曲が目立つ。冒頭にはBilly Joelの「New York State of Mind」を含むメドレーが置かれ、続く「Here Comes the Rain, Parts 1&2」は10分を超える展開を持つ。短い曲を積み重ねるというより、ひとつの流れの中で旋律や演奏の温度をじっくり聴かせる作りだ。ジャズの即興性とロックの曲構成が重なり、そこにソウル寄りの響きも混ざる。派手な見せ場を前面に出すタイプではなく、音の密度とパート間の受け渡しで聴かせるアルバムである。

クレジット面ではBilly Cobhamがゲスト参加している点が大きい。ドラムの存在感がはっきりしており、業界紙でもこの点は注目されていたようだ。Gavin Reportでは、久々の新作として歓迎され、器楽パートとCobhamのドラムが聴きどころとして取り上げられている。商業的には大きなヒットには届かなかったと見られるが、放送局や業界内では関心を集めた形跡がある。Cash Boxのアルバムチャートでは1976年10月時点で112位に入っている。

Mark-Almondという流れの中で

Mark-Almondは、Jon MarkとJohnny AlmondがJohn Mayall周辺での活動を経て1970年に結成したグループで、初期は複数メンバーを含む編成、その後の変遷を経て、1975年に再びこの2人を中心に再始動している。『To The Heart』は、その再始動後に出たアルバムであり、グループの中でも演奏の整理と楽曲の密度が一段と前に出た時期の記録といえる。Mark-Almondの作品群の中では、バンドの拡張路線よりも、2人の呼吸を軸にしたまとまりが見えやすい。

同時代の文脈で見ると、Steely Danのような洗練された都会的ロックや、Poco以降のソフトなロック感覚、さらにジャズ・ロックの流れと重なる部分がある。ただし、Mark-Almondはそれらのどこかに収まるというより、より内向きで、演奏の間合いを重視する方向に寄っている。AllMusicではムード面で「Gentle」「Reflective」「Laid-Back/Mellow」といった語が付されており、音の運びが前に出るというより、フレーズの余韻を残すタイプの作品として扱われている。

曲の印象と聴きどころ

「New York State of Mind」を含むメドレーは、既存曲を素材にしながらも、Mark-Almondらしい解釈で自分たちの流れへ引き込んでいく構成に聞こえる。単なるカバーというより、アルバム全体の入口として機能している印象だ。「Here Comes the Rain, Parts 1&2」は長い時間をかけて展開するため、メロディの置き方やリズムの重ね方に耳が向く。大きく盛り上げるより、音量や密度を少しずつ変えながら進む作りで、ジャズ寄りの聴感が強い。

録音年代らしく、音色は過度に厚くなく、各パートの輪郭が比較的わかりやすい。ギター、ホーン、鍵盤、ドラムが前面でぶつかるより、空間を保ちながら並ぶ感じがある。そうした作りのため、スムーズ・ジャズ的な聴きやすさと、ジャズ・ロック的な演奏の緊張感が同居している。タイトルどおり、楽曲の中心が「心」に寄っているような構成で、技巧の誇示よりもフレーズの流れが残る。

この盤について

今回のUS盤はABC RecordsのABCD-945で、ラベルには「33 1/3 RPM」「STEREO」とともに「ABCD 945 A/B」の表記がある。1976年当時のオリジナル仕様として見てよい盤で、録音年と発売年が一致している。ABC Recordsは70年代にロック、ソウル、カントリーまで幅広く扱っていたレーベルで、この時期の同社作品には、都会的で洗練されたサウンドを持つものが少なくない。『To The Heart』もその流れの中で捉えやすい一枚だ。

Mark-Almondの中では、派手な代表曲で押すアルバムというより、演奏と曲想のまとまりで印象を残す作品である。ジャズ、ロック、スムーズ・ジャズの境界をまたぎながら、1970年代半ばの空気をそのまま閉じ込めたような内容。アルバム単位で聴くと、Jon MarkとJohnny Almondの関係性がかなり明確に感じられる一作だ。

トラックリスト

  1. Medley:
  2. A2 Here Comes The Rain (Part One) 4:48
  3. A3 Here Comes The Rain (Part Two) 5:26
  4. A4 Trade Winds 5:42
  5. B1 One More For The Road 6:48
  6. B2 Busy On The Line 4:57
  7. B3 Everybody Needs A Friend 5:57

動画

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