Marty Robbins - Gunfighter Ballads And Trail Songs (1959)
Marty Robbins 1959

Marty Robbins - Gunfighter Ballads And Trail Songs (1959)

Folk, World, & Country Country

Marty Robbins『Gunfighter Ballads And Trail Songs』(1959)

Marty Robbinsの『Gunfighter Ballads And Trail Songs』は、1959年にColumbiaから出たアルバムで、西部劇の物語性とカントリーの語り口がきれいに重なった作品だ。Robbinsは当時すでにポップ・カントリーのヒットを持つ歌手だったが、このアルバムではその持ち味がかなりはっきり出ている。歌そのものを前に出しつつ、曲ごとに短編小説のような情景を組み立てていく作りで、単なる“西部もの”にとどまらないまとまりがある。

1959年4月7日にたった1日8時間のセッションで録音され、同年9月にリリースされたという経緯も、この盤を語るうえで外せない。短い時間で録り切った作品だが、演奏や歌唱に急ぎ足の印象は少ない。むしろ、言葉の運びとメロディの置き方が整理されていて、Robbinsのバリトンが曲の中心にきちんと収まっている。全米ポップ・アルバム・チャートでは6位を記録し、後年にはゴールド、さらにプラチナ認定も受けている。

作品の核にある「El Paso」

このアルバムを代表するのは、やはり「El Paso」だ。Robbinsが1956年末、ナッシュビルからフェニックスへ戻る車中で、実在の町エル・パソを通りかかった際に書き上げたとされる曲で、数時間で完成したという逸話が残る。曲は恋と暴力と逃避行を、かなり具体的な地名と行動の流れで追っていく。歌の中の主人公がどう動いたかが見えやすく、物語の展開がそのまま曲の推進力になっている。

「El Paso」はポップ・チャート、カントリー・チャートの双方で1位を獲得し、翌年の第1回グラミー賞ではカントリー部門で最初の受賞曲になった。Robbinsの代表曲としての位置づけはもちろん、この曲でアルバム全体の輪郭も決まっている。近年でもBob Weirが長く愛奏したカバー曲として知られ、Grateful Deadのレパートリーにも深く結びついている。

「Big Iron」を含む、物語を聴くアルバム

もう一つの代表曲「Big Iron」も、この盤を語る際には欠かせない。無法者と保安官の対決を軸にした西部劇的な場面描写がはっきりしていて、Robbinsの語りのうまさがそのまま曲の輪郭になる。半世紀以上たってからインターネット・ミームとして再び注目されたことも、この曲の珍しい歩みだ。

このアルバムの面白さは、ヒット曲が単独で強いだけでなく、他の収録曲も含めて“語り”の密度が揃っているところにある。西部の伝承、ガンマン、旅路、対決といった要素が、過度な装飾なしに並んでいく。Marty Robbinsの歌は、派手に押し切るタイプではなく、言葉の置き方で場面を立ち上げるところに特徴がある。

Marty Robbinsという歌い手の位置づけ

Robbinsは1925年生まれのアメリカのカントリー歌手で、ステージ、ラジオ、テレビ、俳優業まで幅広くこなした人物だ。1950年代から60年代にかけて、カントリーだけでなくポップ・バラードやロカビリー、ハワイアン、ゴスペルまで扱える柔軟さを持っていた。その中でも『Gunfighter Ballads And Trail Songs』は、彼の“物語を歌で運ぶ力”がはっきり表れた代表作として見やすい。

同時代のカントリー作品と比べると、このアルバムは西部劇の題材を前面に出しながら、録音や編曲が過剰にドラマティックへ振れすぎない。その分、Robbinsの声と歌詞の情報量がよく残る。ナッシュビルのカントリーが洗練と商業性を強めていく時期に、こうした物語性の強いアルバムが広く受け入れられた事実は大きい。

1959年盤の見どころ

この1959年のオリジナル盤は、Columbiaの“six eye”ラベルで知られる。ジャケット裏の下部右側に印刷業者コード「3」が入っている点も確認できる。盤としては、後年の再発で音質やマトリクス表示が変わることはあっても、作品の核はこの初出時点ですでに完成している。タイトル曲の世界観、代表曲「El Paso」「Big Iron」の存在感、そしてRobbinsの声の置き方が、アルバムを一つのまとまりとして成立させている。

『Gunfighter Ballads And Trail Songs』は、Marty Robbinsのキャリアの中でも特に広く知られた一枚であり、カントリーの物語歌がポップな広がりを持ちうることを示した作品でもある。西部劇の記号だけで終わらず、曲のひとつひとつが具体的な場面を持っているところに、このアルバムの強さがある。

トラックリスト

  1. A1 Big Iron
  2. A2 Cool Water
  3. A3 Billy The Kid
  4. A4 A Hundred And Sixty Acres
  5. A5 They're Hanging Me Tonight
  6. A6 Strawberry Roan
  7. B1 El Paso
  8. B2 In The Valley
  9. B3 The Master's Call
  10. B4 Running Gun
  11. B5 Down In The Little Green Valley
  12. B6 Utah Carol

動画プレイリスト

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