The Cramps - Songs The Lord Taught Us (1980)
The Cramps 1980

The Cramps - Songs The Lord Taught Us (1980)

Rock Garage Rock Punk Psychobilly

The Cramps『Songs The Lord Taught Us』(1980)

The Crampsの『Songs The Lord Taught Us』は、1980年にI.R.S. Recordsから出た1作目のフル・アルバムだ。バンドの初期シングルやライブの空気を、LPという形でまとまったものとして提示した作品で、後の“psychobilly”の原型として語られることが多い。The Crampsは1976年に結成された米国のバンドで、Lux InteriorとPoison Ivyを軸に活動を続けた。ガレージ、パンク、古いロックンロールやホラー趣味を結びつけた独自の立ち位置は、このデビュー作の時点でかなりはっきりしている。

録音はメンフィスのArdentで行われ、制作はアレックス・チルトンが担当した。バンド側の説明によると、チルトンは持ち曲を一通り演奏させ、その中から良いものを選ぶ形で進めたという。実際、盤全体を通しても、ただ荒いだけではなく、曲の輪郭が比較的はっきりしている。音数は多くないが、ギター、リズム、ヴォーカルの噛み合わせが明確で、The Crampsの初期像を知るうえで重要な一枚になっている。

作品の位置づけ

本作は、後年のThe Crampsを代表する要素が最初から揃っているところが大きい。B級ホラーの語感、ロカビリーへの接近、パンクの速度感、ガレージ寄りのざらつき。いずれも単独では珍しくないが、このバンドの場合はそれらがかなり直接的に結びついている。しかも、単なる引用集ではなく、古いロックンロールの断片を自分たちの言葉として組み替えている感じがある。

同時代のパンク/ニューウェイヴの中でも、The Crampsはかなり異色だ。たとえば英国の初期パンクが社会性や速度を強く打ち出していたのに対し、この作品はもっと古いアメリカン・ルーツ音楽に寄っている。とはいえ懐古的ではなく、音の運びはあくまで攻撃的で、結果としてガレージ・ロックやサイコビリー周辺の文脈で長く参照されることになった。

「TV Set」

冒頭を担う「TV Set」は、このアルバムの方向性をそのまま示す代表曲だ。短い尺の中で、リズムの跳ね方、Lux Interiorの芝居がかった歌い回し、Poison Ivyのギターの切れ味がはっきり出る。クレジット上はRorschach/Interior名義だが、元ネタとしてはDon And The Galaxiesの「Sundown」が挙げられている。原曲の輪郭をそのままなぞるのではなく、The Cramps流の不穏さに置き換えている点が面白い。

なお、この盤ではスリーヴとレーベルで曲順や表記に差があり、裏ジャケットでは「Drug Train」とされている曲が実際には「TV Set」になっている。初回盤の細かな混乱も含めて、かなり早い段階で出た作品らしい事情が見えるところだ。後の再発では紫色の文字と正しい曲順に直されている。

「Garbageman」「I Was A Teenage Werewolf」

「Garbageman」は、The Rumblersの「Boss」を下敷きにした曲とされる。リフの反復が強く、聴き手の耳に残るのは、派手な展開ではなく、同じ型をしつこく押し出す構成だ。ここではバンドの“汚れたロックンロール”という印象がかなりわかりやすい。音の密度は低めでも、演奏の圧は落ちない。

「I Was A Teenage Werewolf」は、このアルバムの中でも特にThe Crampsらしさが凝縮された曲のひとつだろう。タイトルからして映画的で、内容もホラー/モンスター文化とロックンロールがそのまま接続している。元ネタはThe Shadesの「Strolling After Dark」とされるが、仕上がりはかなり別物だ。歌詞の意味というより、語感と勢いで押していくタイプで、バンドの美学がよく出ている。

「Sunglasses After Dark」ほか

「Sunglasses After Dark」は、Dwight Pullenの同名曲をもとにしたナンバーで、本作の中では比較的ロカビリー寄りの感触が強い。The Crampsの演奏は、古い曲を“昔風に再現”するのではなく、硬いビートと不穏な空気を足して今の曲のように聞かせる。ここにバンドの方法論がよく出ている。古い素材を扱いながら、結果として現在形の緊張感が残る。

終盤の「What’s Behind the Mask」や「I’m Cramped」も含め、収録曲の多くはカヴァーや既存曲の再解釈に近い性格を持つ。マスターノートにあるように、表向きのクレジットと実際の元ネタが重なる部分もある。The Crampsはこの時点で、オリジナル曲と引用の境界をかなり自由に扱っており、その感覚がアルバム全体の歪んだ一体感につながっている。

盤の仕様と初回盤

この1980年盤は、レインボー・ラベル、表ジャケットの白いタイトル、裏面の青いテキストが特徴の初回プレスとされる。さらに、℗1979 I.R.S. Records, Inc.、File Under Sacred Music、Printed in USAといった表記も確認できる。I.R.S. RecordsのSP 007というカタログ番号は、同レーベル初期のLP番号体系に沿ったものだ。

初回盤は早々に廃盤となり、その後の版では曲順表記の修正やテキスト色の変更が行われた。こうした細部は、作品そのものの内容とは別に、当時の流通の速さや制作現場の勢いを感じさせる部分でもある。

まとめ

『Songs The Lord Taught Us』は、The Crampsが何者かを最初にまとまった形で示したアルバムだ。荒さはあるが、ただの粗雑さではなく、選曲、引用、演奏、制作のバランスがかなり明確に組まれている。商業的な大ヒット作ではないものの、後のガレージ・ロック、パンク、サイコビリーの文脈で繰り返し参照される理由は、この一枚を聴くと見えてくる。初期The Crampsの核が、そのまま記録されたデビュー作である。

トラックリスト

  1. A1 TV Set 3:12
  2. A2 Rock On The Moon 1:43
  3. A3 Garbage Man 3:28
  4. A4 I Was A Teenage Werewolf 3:05
  5. A5 Sunglasses After Dark 3:47
  6. A6 The Mad Daddy 3:16
  7. B1 Mystery Plane 3:40
  8. B2 Zombie Dance 1:53
  9. B3 What's Behind The Mask? 2:06
  10. B4 Strychnine 2:25
  11. B5 I'm Cramped 2:36
  12. B6 Tear It Up 2:31
  13. B7 Fever 4:16

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