Vinyl Record Reviews
Anderson .Paak(アンダーソン・パーク、本名Brandon Paak Anderson)は、1986年生まれ、米カリフォルニア州オックスナード出身のシンガー、ラッパー、ドラマー、ソングライター、プロデューサーである。70年代のソウルやファンクの有機的なグルーヴと、90年代以降のヒップホップやネオ・ソウルの感覚を高次元で融合させ、卓越したミュージシャンシップと圧巻のライブ・パフォーマンスで現代ブラック・ミュージック界の頂点に立つアイコンである。
幼少期から教会でドラムを叩きながら育ち、当初はBreezy Lovejoy名義で音楽活動を開始した。2012年に同名義で『O.B.E. Vol. 1』を発表後、現在のAnderson .Paakに改名し、2014年にアルバム『Venice』をリリースした。
大きな転機となったのは2015年、西海岸ヒップホップ界の重鎮ドクター・ドレーの16年ぶりのアルバム『Compton』に抜擢され、6曲で圧倒的な存在感を示したことである。これを機にドレー主宰の名門レーベルAftermath Entertainmentと電撃契約を結び、世界的な注目を集める存在となった。
2016年に発表したインディペンデント作『Malibu』は、批評家から絶賛を浴び、第59回グラミー賞で最優秀新人賞および最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム賞にノミネートされた。続く2018年の『Oxnard』では、ドクター・ドレーのエグゼクティブ・プロデュースのもと故郷の名を冠したウェストコースト・ヒップホップ色を打ち出し、収録曲「Bubblin」で自身初のグラミー賞(最優秀ラップ・パフォーマンス賞)を獲得した。
翌2019年の『Ventura』では、一転してスウィート・ソウルやメロウ・ファンクへの回帰を果たし、グラミー賞最優秀R&Bアルバム賞を受賞。さらにアンドレ3000を迎えた「Come Home」で最優秀R&Bパフォーマンス賞を受賞し、確固たる名声を確立した。
Anderson .Paakの最大の魅力は、自らドラムキットに座って躍動感あふれるビートを叩き出しながら、ハスキーでソウルフルなボーカルとシャープなラップを縦横無尽に操るプレイスタイルにある。
長年苦楽を共にしてきた腕利きのバックバンド「The Free Nationals(ザ・フリー・ナショナルズ)」を率いたステージングは定評があり、エレキギター、ベース、キーボード、ドラムスによる生演奏のダイナミズムを前面に押し出したタイトなアンサンブルを展開している。
ソロ活動と並行して多彩なコラボレーションでも輝きを放っている。盟友ビートメイカーのKnxwledge(ノーレッジ)とのユニット「NxWorries(ノーウォーリーズ)」では、『Yes Lawd!』(2016年)や『Why Lawd?』(2024年)といったビート・シーン直結の傑作を世に送り出した。
さらに2021年には、世界的ポップスターであるブルーノ・マーズとスーパー・デュオ「Silk Sonic(シルク・ソニック)」を結成。70年代フィリー・ソウルへのオマージュに満ちたシングル「Leave the Door Open」は世界的大ヒットを記録し、グラミー賞で年間最優秀レコード賞と年間最優秀楽曲賞を含む主要4部門を総なめにした。クラシックなブラック・ミュージックの伝統を現代のポップ・カルチャーの最前線へと華麗に蘇らせたマスターピースである。